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近畿地方のある場所について 文庫版 の商品レビュー

3.7

270件のお客様レビュー

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2025/11/02

カクヨム版・単行本版と比べて、文庫版は明らかに「物語」としての顔を濃くしてきた。モキュメンタリーホラーとしての立ち上がりから一歩抜け出し、同じ素材を使いながら「エモさ」を付加してまったく別の読後感に仕上げているのが面白い。 特に文庫版で追加された最終章はもはや純然たる「小説」で...

カクヨム版・単行本版と比べて、文庫版は明らかに「物語」としての顔を濃くしてきた。モキュメンタリーホラーとしての立ち上がりから一歩抜け出し、同じ素材を使いながら「エモさ」を付加してまったく別の読後感に仕上げているのが面白い。 特に文庫版で追加された最終章はもはや純然たる「小説」で、モキュメンタリーの枠を完全に離脱している。この辺りについては、先日行った「1999展」の特典書き下ろし短編でもそうだったが、この作者の本質は読者の共感やノスタルジーを喚起するエモーショナルな描写力にあるのではないか、という予感を強く裏付ける仕上がりだった。 ただ、それがプラスに振り切れているかといえば微妙なところだ。どうしても単行本版の「ダウンロードコンテンツ」として見えてしまい、モキュメンタリーホラーの切れ味を物語性とトレードオフしている「お楽しみ」要素の印象が強い。 むしろ潔く別作品として切り分けてしまった方が、両者の価値が際立ったのではないかと思えてしまう。設定が共通している以上、片方で語られたピースをもう片方に当てはめたくなるのは自然な連想で、その結果、完全に閉じたはずの単行本版に余計な補足が差し込まれてしまうような惜しさがある。 結局いちばん強烈だったのはやはりカクヨム版だ。幕間に置かれた「近畿地方のある場所について」という章が、まさに「いま語っている」感を担保する装置として機能し、読者をファウンドフッテージ的な地平に巻き込んでいた。現実/虚構のラインがもっとも現実寄りに維持されていたのもこの形だろう。単行本で語り手が作者として浮かび上がり、文庫版では物語性が増してさらに虚構側へ大きく傾いていく。 それにしても、毎度気になるのが「詳しいやつが唐突に現れて答えを開示してしまう」展開で、これがモキュメンタリー手法との相性をどうしても削いでしまう。説明が重なるたび、現実寄りの不穏さ・不気味さ・理不尽さがフィクション寄りに押しやられる。もちろん、これを許容すれば「モキュメンタリー×物語小説」のハイブリッドとして楽しめる。実際楽しめていないことはない。……のだけど、僕の好みとしては、付け足すなら元の良さと衝突しないものがいい。 カルピスがだんだん水で薄められて、文庫版ではさらに「美味い水」で割られている。確かにその水はそのままでも飲みたいほどに上質なのだけど、混ざったらその味がわかるほどに僕の舌は鋭敏ではない。

Posted byブクログ

2025/11/02

ホラー小説は普段読まないのですが(怖いから)、話題の本で旦那さんが読んでたので私も読んでみました。 途中までは怖くて、早く結末に辿り着きたい!と一気に読みました。最後は少し切なくて悲しい。 他の方も書いてましたが、怪奇現象と言われるものって、不幸な出来事が元になってることが多...

ホラー小説は普段読まないのですが(怖いから)、話題の本で旦那さんが読んでたので私も読んでみました。 途中までは怖くて、早く結末に辿り着きたい!と一気に読みました。最後は少し切なくて悲しい。 他の方も書いてましたが、怪奇現象と言われるものって、不幸な出来事が元になってることが多い。それをネタにして盛り上がるのって今更ながら失礼なことだなと。最後のブログの文章が、この小説の総括のような気がしました。 結局あの人はどうなったんだろ…と消化不良の部分もありますが、短編の話が繋がっていくのは読んでて気持ち良い部分がありました。映画化されてますが、怖くて私は無理だろうな…

Posted byブクログ

2025/10/30

怪談は面白可笑しく囃し立てる人がいたりして、それがエンタメとして消費されることへの警鐘ということだったらめちゃくちゃパンチが効いてる。 最後の「人の不幸で楽しむのやめろよ」に全てが集約されてるようで殴られた気分。 単行本は未読なので、読み比べしたい。

Posted byブクログ

2025/10/30

単行本もどちらも読んでみて、不気味さは文庫本、後味の悪さは文庫本だと思いました。 最後の最後で人物のことが分かるようになっていくところが個人的には面白いと感じました! どっち買うか迷っている方は最初は文庫本を買ってみて、面白いと思ったら単行本買ってみてもいいと思いました!

Posted byブクログ

2025/10/26

正直怖いかと言われたら自分的には...なのですが、いろいろな人や時間や場所やコンテンツなどから話しが組み立てられていて、今までに読んだ事の無いストーリー展開で面白かったです。 最後は怖い!より悲しみでした。 いつか成仏できますように。

Posted byブクログ

2025/10/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

単行本で買おうと思っていたら文庫版が発売されていたのでそちらを購入。 まさかの内容少し違うらしい。 ホラーだと思って読んでいて、しっかりホラーでしたが、最後はちょっと切ないですね。 こういう結末になるとは思っていなかったので意外でした。 純粋な悪意が元になった怪奇現象とかではなく、人的な要因が原因だとわかるとそこまで怖く感じなくなる。途中ずっとこわ…こわ…と思いながら読んでいたんですけどね笑 何本もショートストーリーが収録されているような形なので合間に読むのにちょうどよかったです。

Posted byブクログ

2025/10/22

不完全燃焼でした 最後の袋とじをどうすべきか? そこまで探求したいとまでは思えない内容でした 一気に読み進められなかった事もあるかも

Posted byブクログ

2025/10/22

もちろんホラーだと思って読み始めた。読み終わった今こんな気持ちになるなんて思ってもみなかった。 いわゆる「小説」とするには独特の構成になってるけれど、その細切れ感がかえって色々な想像をかき立ててくれた気がする。 単行本版はまた少し違うらしいので、そちらも読んでみたいな。

Posted byブクログ

2025/10/24

関西在住としてタイトルに惹かれて&メディアミックスで宣伝しまくっていたから購入しました。 放り出す事はしなかったが面白くなかった。

Posted byブクログ

2025/10/20

Amazonの紹介より "新しい"情報をお持ちの方はご連絡ください。 私、小澤雄也は本書の編集を手掛けた人間だ。収録されているテキストは、様々な媒体から抜粋したものであり、 その全てが「近畿地方のある場所」に関連している。 なぜこのようなものを発表するに至った...

Amazonの紹介より "新しい"情報をお持ちの方はご連絡ください。 私、小澤雄也は本書の編集を手掛けた人間だ。収録されているテキストは、様々な媒体から抜粋したものであり、 その全てが「近畿地方のある場所」に関連している。 なぜこのようなものを発表するに至ったのか。その背景には、私の極私的な事情が絡んでいる。それをどうかあなたに語らせてほしい。私はある人物を探している。 その人物についての情報をお持ちの方はご連絡をいただけないだろうか。 映画化されたということで読んでみました。単行本とは違った内容とのですが、単行本の方は読んでいないので、文庫版だけで感想を述べたいと思います。 内容としては、しっかりとした構成で、わかりやすかったですし、なぜ行方不明になったのか、その辺りはモヤモヤではあるものの、驚きの真相もあって楽しめました。 「近畿地方のある場所」に関連する資料を随所に紹介し、読者にも記者と同様に楽しめるのも魅力的ですし、様々な人の証言も、一見内容の筋とは関係ないかと思いきや、実は一部に含まれていることに意外性と驚きもあったので、面白かったです。 資料が大半で、主人公の小澤パートの物語が少なめなのですが、資料が無いと、なかなか恐怖感を味わえないかと思うので、こうしたスタイルは独特で面白いかと思います。 一番最後には瀬野が遺した取材資料と記載されていて、袋とじになっています。 この時点でも、なんとなく読んだ人も読んでいない人もなんとなくおおまかな予想はつくかもしれません。 袋とじを開けるかどうかは読んだ本人にたくしますが、内容としては写真とその写真に対するコメントが書かれています。真相をより具体的に示したもので、より恐怖がゾワゾワと増しますが、同時に切なさも感じました。 結局のところ、うすぼんやりとハッキリわからない情報が錯綜し、結果とした恐怖話へと発展する構図は面白いが、一方で、それに携わる関係者達にとっては、迷惑な話であり、真実が捻じ曲げられることになんだか複雑な気持ちにもなりました。

Posted byブクログ