熟柿 の商品レビュー
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伯母の葬式の時見た柿の木とラストの熟柿の呼応でのタイトルだったんだ。だか、元夫の保身に走った行動があまりにも理不尽で、主人公のひき逃げは許されないとしてもその後の人生の厳しさを思うと元夫への嫌悪感が拭えない。柿の熟すのを待つ土居さんの懐の深さに期待したい。
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人は犯した罪から一生逃れられないのか。若くして起こした事件により、日陰を生き続ける主人公。読後、しみじみとすると共に希望を感じさせられる作品。
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個人的に、好きな佐藤正午作品と、イマイチついていけない佐藤正午作品がある。 ついていけなかったのは、鳩の撃退法、冬に子どもが生まれる・・・ 好きなのは、身の上話。この「熟柿」はすごく好きな佐藤正午だった。 読み始めたらあっという間でした。 まず表紙のデザインが素敵。真っ白。潔く...
個人的に、好きな佐藤正午作品と、イマイチついていけない佐藤正午作品がある。 ついていけなかったのは、鳩の撃退法、冬に子どもが生まれる・・・ 好きなのは、身の上話。この「熟柿」はすごく好きな佐藤正午だった。 読み始めたらあっという間でした。 まず表紙のデザインが素敵。真っ白。潔くてセンスいい。 かおりは27歳で妊娠中。夫は警察官。 大伯母の葬儀からの帰り道、老婆を轢き、そのままひき逃げ。 服役中に男の子を出産するが、夫とは離婚、子どもとは会わせてもらえず。 その後のかおりの物語。 子ども会いたさに、幼稚園や小学校の入学式に突撃するも失敗。 そこで知り合うクジュウロ(久住呂)さんが魅力的。 面白かった。
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これまで読んだことがない作家の作品だったが、雑誌の書評を読んで、読んでみたいと思った。 主人公のかおりは轢き逃げの罪で服役し、刑務所の中で子どもを産む。 夫には子供のために死んだことにしてくれと言われ離婚を言い渡されて、1人で生きていこうとするのだが、様々な困難がかおりを襲う。 ...
これまで読んだことがない作家の作品だったが、雑誌の書評を読んで、読んでみたいと思った。 主人公のかおりは轢き逃げの罪で服役し、刑務所の中で子どもを産む。 夫には子供のために死んだことにしてくれと言われ離婚を言い渡されて、1人で生きていこうとするのだが、様々な困難がかおりを襲う。 しかし捨てる神あれば拾う神あり。前科者と言う負い目を背負いながらも、親身になってくれる人達との出会いがある。 会いたくても会えなかった息子と最後会うことができたのがよかった。 どのような結末を迎えるのかハラハラドキドキしていたが、幸せを掴めそうなラストにホッとした。
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香り。息子。交通事故。轢き逃げ。晴子伯母さん。鶴子。くじゅうろさん。咲ちゃん。田中拓。 産みの親。前科者。ずっと救われないし、不幸が続く。熟柿。待つこと。時が来るまで。父親の罪。
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こんな小説が読みたかったんだよね、と読み終わった後しみじみ思う。 そんなに長い小説では無いのに、多くの人間が登場する。悪意のある人、他人を放っておけない人間、おせっかいする人、嘘をつき続ける人、自分勝手な人、そういった人間たちがそれぞれの個性を際立たせて、この長さの小説の中に収...
こんな小説が読みたかったんだよね、と読み終わった後しみじみ思う。 そんなに長い小説では無いのに、多くの人間が登場する。悪意のある人、他人を放っておけない人間、おせっかいする人、嘘をつき続ける人、自分勝手な人、そういった人間たちがそれぞれの個性を際立たせて、この長さの小説の中に収まる。 その力量たるや! そして何より、個性が際立ったのはクジュウロさんだ。 この小説のキーパーソンとなるクジュウロ咲ちゃん。そしてそのお母さん。 咲ちゃん登場の時の、咲ちゃんの発する言葉の新鮮さ。この子だからこそ、なんだよね、と読者を納得もさせ、この少女の魅力も感じさせる。 この一風変わった子にこの苗字を与えるセンスの良さに脱帽。 これが他の名前では、その存在感との乖離があったのではないか。簡単な名前でもダメ。存在感がありすぎる名前でもダメ。一風変わった名前で、でもとんがった名前でない、存在感を放つ、そういう微妙な名前をよくぞ思いついたなと。 クジュウロさんは、クジュウロさんでなければならなかったし、この母子愛すべき親子は、揺るぎない前向きなおせっかい焼きでなければならなかった。そして、それが必然だと読者に自然に思わせる手腕。 さらに、この小説の終わり方が、私はものすごく好きだ。何も終わってないじゃん!でも確かに終わったね。 熟柿という言葉が身に沁みる。 読み終わってからじんわりと泣けてきた。 今年No.1です。
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内容はとても憂鬱になるけど、ページが止まらなかった。主人公の気持ちを考えるとやるせない。そして、金を持ち逃げした斎藤が許せなくて怒りで震えた。強いて言うなら、斎藤に金を持ち逃げされたときに警察に言うべきだった。あと、元警官の元夫については、普通妻が人身事故起こしたら離婚してくれとか言わずに一緒に罪を償いながら生きていくと思う。その時点で怪しかった。
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読んでいてとても悲しくなる話なのに、ページをめくる手を止められなかった。怒りや悲しみ、切なさ、ポジティブなものではないけれど、色々な激しい感情を抱かされた。色々な場所で、色々な人と巡り合いながら必死に生きている主人公の生き方からは、息子への信じられないほど強い想いが、常に、ひしひ...
読んでいてとても悲しくなる話なのに、ページをめくる手を止められなかった。怒りや悲しみ、切なさ、ポジティブなものではないけれど、色々な激しい感情を抱かされた。色々な場所で、色々な人と巡り合いながら必死に生きている主人公の生き方からは、息子への信じられないほど強い想いが、常に、ひしひしと感じられたし、自分には到底真似できるものではないと思った。最後、熟柿の意味を知った時、この本を読んできた中で一番心が和らいだ。この言葉に今出会えたことに感動するほど私自身にも刺さる言葉だった。
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妊娠中の女性が不運にも轢き逃げ事件を起こしてしまったが故に刑務師に入る事になり、生まれてすぐの我が子と離れる事になった。服役を終え、我が子に会おうとするも行き違いで会えず3回もパトカーに乗る事になる。劇的な展開はないけど、女性の苦悩や人間模様が丁寧で、最後は良かったねとなる作品。
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出れば必ず、とまではいかないんだけど、そもそも寡作だし、出れば何やかや話題になるし、ってことで、特に最近の作品についてはほぼ触れている著者。本作は、本の雑誌然り、フリスタ然り、やはりというか、その他各所でも推薦されているのを目にし、自分も読んでみたもの。最近新聞でも目にした、刑務...
出れば必ず、とまではいかないんだけど、そもそも寡作だし、出れば何やかや話題になるし、ってことで、特に最近の作品についてはほぼ触れている著者。本作は、本の雑誌然り、フリスタ然り、やはりというか、その他各所でも推薦されているのを目にし、自分も読んでみたもの。最近新聞でも目にした、刑務所出産も関わる物語。ただそれが主眼ではなく、飽くまで付きまとうレッテルについての問題提起。だいぶしんどい途中経過を経るんだけど、それなりの落着を見る。そこまでの重さを感じさせない筆致でリーダビリティは高いんだけど、読後感は結構ずっしり。でも、こういう読書体験って、素敵やん。
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