ウスバカ談義 の商品レビュー
今年に入って急に梅崎春生の作品が各社から次々と復刊されているのは、なにか理由があるのだろうか。あるのかもしれないけれど、彼の作品を読みたい者からすれば、理由がどうあれ、手軽に新刊書店で買えるのは嬉しい。この『ウスバカ談義』は、梅崎自身と思われる主人公のところに、夜学で美術を教え...
今年に入って急に梅崎春生の作品が各社から次々と復刊されているのは、なにか理由があるのだろうか。あるのかもしれないけれど、彼の作品を読みたい者からすれば、理由がどうあれ、手軽に新刊書店で買えるのは嬉しい。この『ウスバカ談義』は、梅崎自身と思われる主人公のところに、夜学で美術を教えているということ以外はよくわからない謎の「山名君」が意味なく訪れてはおせっかいをやく、という作品が中心をしめている。帯にあるとおり「昭和のユーモア」がただよう。大笑いするのではなく、もちろん冷笑でもない。読み進めるうちに、なんだか胸のなかに静かに湧き上がってくるような面白さだ。『留守番綺談』と『Sの背中』が特に心にのこるのは、梅崎の、どこかとらえどころがない作品群の中心に、死があるのを意識させてくれるからなのかな。
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