月とアマリリス の商品レビュー
大好きな町田そのこさんの新刊 女の小さな痛みから、いっきに焼け野原に展開していくストーリーは圧巻。 町田さんの文章はドラマチックなのに臭くならないという、天才的な塩梅でいつものめり込んでしまう 小倉が舞台なのも博多民としては親近感あって好き!
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サスペンスでありヒューマンドラマ。 人間模様、心情描写が深く丁寧な町田そのこさんの筆致に入り込み、人間ドラマとして読んでしまうから辛かった。自分自身を見失い、相手の自立も断たれてしまう共依存は恐ろしい。人が人を歪ませても抜け出せない苦しさ、読んでいてきつい。 救いがない物語だと思...
サスペンスでありヒューマンドラマ。 人間模様、心情描写が深く丁寧な町田そのこさんの筆致に入り込み、人間ドラマとして読んでしまうから辛かった。自分自身を見失い、相手の自立も断たれてしまう共依存は恐ろしい。人が人を歪ませても抜け出せない苦しさ、読んでいてきつい。 救いがない物語だと思いましたが、唯一、人はどんな状況においても、人との繋がりを求めるのだと感じとれたこと。生きるために自ら安泰な場所を求めるのだなと。 主人公の記者は、仕事でつまずき壁にぶつかり、傷から逃れようとした。ある出来事をきっかけに、自分の過去と向き合うことはあるので、その葛藤に共感し、再生していく姿は希望が見えた。 心と心のラリーは大切ということ。 皆、愛情を求めていたのですね。
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すごい本だった…。 泣いた。 心に残ったシーンがたくさんある。 宇部が茂美を見捨てたと告白するシーン。 井口の母が、みちるを息子の結婚相手だと思い込んでしまうシーン。 美散のお腹の根性焼きに対して祖父の大浦が命を燃やすように慟哭するシーン。 美散と茂美とスミの三人で子守唄を歌いあって泣くシーン。 みんな何かを得ようとして、傷ついて、失っていく。 誰でも、基本的には最悪の未来にしたいわけじゃない。物事がちょっとうまくいかないだけ。 でも、この「ちょっとうまくいかない」の積み重ねがこの事件を引き起こしたんだと思うし、事件の関係者にとって、この「ちょっとうまくいかない」を避けることは難しかったんだろうなとも思う。 ちょっとうまくいかないことから逃げずにいられるか。逃げずにいられるように心を支えてくれるもの、人がいるのか。 「ひとはひとで歪む」(p290)とあったけど、そう考えると、家庭環境の影響って大きいよね…。 そして、歪んだ人が他の人へ歪みを連鎖させる可能性もあって、だからこそ「歪みを拒める」「自分自身の力」(p290)が大事なんだと。 そして、この物語の中で、「視点」も1つのキーワードになっていた。 ともすると、人は視野狭窄に陥ってしまう生き物。一面的に判断してしまい、独りよがりになり、強いものにすべてを委ねて生きようとしてしまう。 みちるは吉永とのやり取りの中で一度それに気づけたけど、井口や美散との会話などで度々「また視野狭窄になってしまった」というのが見られたので、すぐには人は変われないよね、という部分も含めてリアルに描かれていたと思った。 若干テーマが盛り盛りだったのは気になった(というか触れ方が薄くて勿体無いと思ってしまった)が、全体のテーマは重めだけどとても良かったし、ミステリーとしても普通に面白かった。 なんか、ドラマ『アンナチュラル』好きな人なら好きな気がする。美散とじいちゃんのシーンとか、美散と茂美とスミのシーンとか、なんとなく似てる雰囲気があった。あの切なさ、物悲しさよ。 いやー、すごい本だった。
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自分の感情を押し殺しすぎて、思考回路がなくなってしまうのは怖いことだと思った。善悪の判断がつかなくなる。育った環境や親の影響は強い。しかもそのあと出会う人、特に恋愛の相手によって幸せになれるか不幸せになるかが決まるのも怖いと思った。最初に優しくされて、どんどんハマって離れられなくなっていく。離れないといけないと分かっていても、なかなか離れられない気持ちはよくわかる。恋愛以外でも、親・仕事などもそうで離れる勇気は必要だと思った。
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血生臭く異臭が漂ってきそうな凄惨な暴力や事件が描かれるのに、癖のない端正な文体と実録を見ているかのような迫真の起承転結に、嫌悪感を感じず、主人公や登場人物たち見守るような心持ちで読める1冊だった。「『人生の幕が下りるときに、こんな風に祝福の拍手があるといいな。そういう生き方がした...
血生臭く異臭が漂ってきそうな凄惨な暴力や事件が描かれるのに、癖のない端正な文体と実録を見ているかのような迫真の起承転結に、嫌悪感を感じず、主人公や登場人物たち見守るような心持ちで読める1冊だった。「『人生の幕が下りるときに、こんな風に祝福の拍手があるといいな。そういう生き方がしたいね』 ね、と笑いかけられて、頷いて応える。そうであればいい。誰かの踊りを見て、自分の踊りを踊り続け、その先の幕を豊かに迎えたい。そういう生き方が、したい」。
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心の弱さゆえ人に頼ってしまう危うさ 人に依存する事で我を見失い心も体も壊される怖い作品だった。 人との繋がりは結局は自分が呼び寄せるものなんだと思う。 そして人で歪む心もあれば、人でまっすぐになれる心もあるのだと 町田作品はいつも心がチクチクするし大事な事に気付かされる
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色んな角度から自分を見直すきっかけになったかもと思いました。 『さす九』 ということばがネットで話題になったけれど、それをすごく感じてしまった。 しかし女が低い、生きにくい、の前に本文にあった 自分の根っこに『強さ』に甘えて依存する心があった。信じるといううつくしい言葉の陰に、思考を委ねる弱さがあった。ひとを信じて生きるというのは、うつくしくも醜く、強くも頼りない。 この一節がとても刺さった。 男に騙されて搾取されていてもその『強さ』に従っていればある程度の未来は保障され安定する。人は安定が好きだし安心する、自分もそういうところ少なからずあったのかな。 あと主人公がいじめられていた吉永さんに大人になって言われたこと。 吉永さんの夢は『かわいいお嫁さんになる』ことだと言ったことに対して主人公は『ちっとも楽しいと思えない』と返していたこと。主人公の夢は『日本だけじゃなくて世界中を自由に見て回りたい』 環境の違い、教育方針の違いと言われたらそれまでだけれども 私も今、タイムリーに同じことを言ってしまったかもしれないと結構反省した。 無意識に誰かを傷つけて、でも傷つけられたことだけをしっかりと覚えて、自分だけはまっすぐ生きてきたような顔をしていた愚かな自分が怖い。主人公と同じ気持ちになった。 でも大事なのは姿勢を変えず続けていくこと、どこまでもフラットでいることだってすぐに答えを教えてもらえたから考えすぎも良くないなーって思えた。 さいごに 誰かの踊りを見て、自分の踊りを踊り続け、その先の幕を豊かに迎えたい。そういう生き方が、したい。 という一節がとても共感。
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しんどいなぁ… 初のサスペンスということでしたが、心理描写が流石で引き込まれました 別作品でも感じたけれど、九州・昔ながらの考え等にかなりネガティブイメージを持ってしまったのでどこかで払拭したい… 「人生の幕が下りるときに、こんな風に祝福の拍手があるといいな」ということばにわたしも頷きました
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北九州の高蔵山で見つかった死体 イジメ事件をレポートし 関連した子どもの自殺で傷ついて 東京から北九州に帰ってきていた飯塚 再び事件を追い始める 事件に関わっていたのは幼い頃に 憧れた人だった 美しい人だったけど生育歴は哀しい 事件に絡む三人ともに哀しい 協力してくれる井口も...
北九州の高蔵山で見つかった死体 イジメ事件をレポートし 関連した子どもの自殺で傷ついて 東京から北九州に帰ってきていた飯塚 再び事件を追い始める 事件に関わっていたのは幼い頃に 憧れた人だった 美しい人だったけど生育歴は哀しい 事件に絡む三人ともに哀しい 協力してくれる井口も女性の心を持つ 男性 事件解決後にコミュニケーションカフェを始める 圧倒的なのは逮捕された幼なじみとの 交流 時間をかけて自身の仕事について 考える 人はやはり関係しながら生活していく存在なんだ 事件に絡んで人間の心のあり方や依存など考えさせられる
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作者初のミステリと言うことで期待通り、どんどん引き込まれあっという間に読んだ。にもかかわらず評価が伸びなかったのは、なんとなくどつちつかずな感じだから。犯罪の背景をキチンと描くミステリは多々あるけどこの本は、事件解決後に「出版物」として振り返る形式のためあとから「答え合わせ」を読...
作者初のミステリと言うことで期待通り、どんどん引き込まれあっという間に読んだ。にもかかわらず評価が伸びなかったのは、なんとなくどつちつかずな感じだから。犯罪の背景をキチンと描くミステリは多々あるけどこの本は、事件解決後に「出版物」として振り返る形式のためあとから「答え合わせ」を読んでるよう。そこがじっくり描かれているのが逆効果な気がしてしまった。
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