怪獣殺人捜査 殲滅特区の静寂 の商品レビュー
本格怪獣小説(というジャンル自体珍しい)とミステリの融合。楽しんだ。 設定はこうだ。 1954年以来、日本は度重なる様々な怪獣の襲来に悩まされていた。怪獣攻撃の技術は着実に積んではいたが、1999年の京都災害で7千人が亡くなって、遂に2000年「怪獣庁」は「怪獣省」に改編される...
本格怪獣小説(というジャンル自体珍しい)とミステリの融合。楽しんだ。 設定はこうだ。 1954年以来、日本は度重なる様々な怪獣の襲来に悩まされていた。怪獣攻撃の技術は着実に積んではいたが、1999年の京都災害で7千人が亡くなって、遂に2000年「怪獣庁」は「怪獣省」に改編される。以降現在まで、人的被害ゼロ、対怪獣兵器の開発と輸出で、日本は世界第二の大国に返り咲く。 日本の怪獣対策は「索敵」「予報(誘導)」「殲滅」の3班に分かれて展開される。 主人公は殲滅班班長ではなく、「怪獣の特性に合わせて進路を予想、特殊作戦区域「殲滅特区」への誘導を行うと共に、予報円内の住人に避難指示を出す、さらに上陸地点、時間などを予測し、それらをまとめ、殲滅班に移行する」美人第一予報官、岩戸正美である。 ガキの番組とは違って、壊滅間際のギリギリになってヒーローが助けに来る作戦は取らないのである。殲滅班が動く時には、既に勝利は99%決まっている。リアルな設定で嬉しい。 因みに、1954年は映画「ゴジラ」第1作、1999年は「ガメラ3」で京都が破壊された年だ。 これに、何処かの小説から抜け出したかのような警察庁特別捜査官、風采が上がらない中年男、船村がバディを組んで、災害現場での謎解きに挑むのである。 こういうひとつの嘘をつくために、リアルを積み重ねる小説は好物で、それが怪獣ものだから尚更。 ストーリーは他のレビューに任せるとして、気になったのは 怪獣庁発足時に、エネルギー庁との論議に決着が付き、怪獣によって危険極まりない原発は「全廃」が決まったという設定になっていること。確かに全て海岸線にある原発は、怪獣対策上全廃が当然ではある。が、危険性から言えば、あれほど外国から侵略の危険性のために60兆円もの(更なる)防衛費増大を決める予算編成をする現代日本の優秀な方々の頭の中はどうなんだろう?と邪推してしまった。どうして同時に原発全廃を進めないのか。あゝそうか、彼らはつまり「危険性がある」とは思っていないから、原発の全廃は頭にも浮かばないんだ! 秋さんのレビューで本作を知りました。ありがとうございました♪ 今年のレビューはこれで終わり。みなさん、旧年中はお付き合いありがとうございました♪今日はこれから、新青春18きっぷの小さな旅に出ます♪
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三津田信三さんなど何人かの作家さんがミステリーと怪談や怪異を合わせて小説を書いているが、それの怪獣版だと解説で東雅夫氏が書いているが、三津田さんなどの作品と比べると、ちょっと違う気がする。 どちらかと言うと最近、流行のトンデモ設定+ミステリーみたいな感じがする。 ゾンビや天使など...
三津田信三さんなど何人かの作家さんがミステリーと怪談や怪異を合わせて小説を書いているが、それの怪獣版だと解説で東雅夫氏が書いているが、三津田さんなどの作品と比べると、ちょっと違う気がする。 どちらかと言うと最近、流行のトンデモ設定+ミステリーみたいな感じがする。 ゾンビや天使などが存在する世界での謎解きは、それも面白いが、この作品は、何故か無理矢理、怪獣が出てくる感じがして、無理にミステリーしていると思う。 そもそも、怪獣が出て来る以上、怪獣退治がメインなはずだし、読者もそれを期待する。 この怪獣退治の設定や退治の仕方など、あまりにも怪獣を舐めた設定に思う。 怪獣が、こんなに簡単に退治されてる世界は嫌だ。 民衆は怪獣出現に慣れ、驚きもしない。 無理にミステリーとくっつけるから、可笑しな話になる。 つまらなくは無いが、ミステリーも怪獣退治も中途半端な気がするのは僕だけだろうか。
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怪獣が存在する世界線で起こる怪獣退治に殺人事件が絡んだ前代未聞の怪獣×ミステリーで、『怪獣省』という怪獣対策の部門に勤める主人公と怪獣に関する事件専門の捜査官のコンビの活躍や出てくる怪獣の緻密な詳細、怪獣を利用した人間の悪意が引き起こす事件など今までに読んだことがない特殊設定ミ...
怪獣が存在する世界線で起こる怪獣退治に殺人事件が絡んだ前代未聞の怪獣×ミステリーで、『怪獣省』という怪獣対策の部門に勤める主人公と怪獣に関する事件専門の捜査官のコンビの活躍や出てくる怪獣の緻密な詳細、怪獣を利用した人間の悪意が引き起こす事件など今までに読んだことがない特殊設定ミステリーで最後まで楽しく読んだ。作中に出てくる「人間の方が怪獣よりもよっぽど怖い。」という台詞が印象的だった。ミステリー好きは勿論ウルトラマンを始めとした特撮ものが好きな人にもお勧めしたい作品だった。
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怪獣が出てくるミステリー。 不思議と、ミステリーの世界に怪獣が存在することの異物感はあんまり無く、読みやすかった。 繋がりのある話の3本立て構成で、個人的には1個目がお気に入りで、あとはちょっと尻すぼみ感。 小説のレビューとしてお門違いなのは承知の上だけど、やっぱり怪獣は映像...
怪獣が出てくるミステリー。 不思議と、ミステリーの世界に怪獣が存在することの異物感はあんまり無く、読みやすかった。 繋がりのある話の3本立て構成で、個人的には1個目がお気に入りで、あとはちょっと尻すぼみ感。 小説のレビューとしてお門違いなのは承知の上だけど、やっぱり怪獣は映像がないと…とは思ってしまう。 怪獣は勿論のこと、やたら腕っぷしの強い捜査官とか、特撮映えしそうだなぁとは思った。 けど映像化したらしたで、よっぽど上手く作らないと"怪獣"も"ミステリー"もどっちも中途半端になって駄作が出来あがっちゃうんだろうなぁ。
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怪獣襲来の混乱時に起こる殺人事件を、怪獣省の岩戸と警察庁の船村が解決する連作短編。怪獣の退治にハラハラした後の殺人事件の捜査のワクワク。怪獣がいるからこその殺人事件とか怪獣の特性と退治方法、怪獣が存在する世界の舞台設定から人物造形と何から何まで楽しめた。続編があるようで嬉しい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
怪獣が襲ってくる世界 その為の政府組織がある 内閣のすぐ下に怪獣省..局.. その下に壊滅班..予報班 怪獣が襲ってくるので 原発が危険ということで 全廃され 全て風力等のエネルギー に替わっている世界 一つ目 その風車にめがけて 怪獣が襲撃 一つの町が壊され死者が1人でる (その死者が風力エネルギー庁の元トップ) 怪獣に殺されたのではなく 殺人の疑いで捜査が始まる ・怪獣対策局予報班 岩戸正美 ・警察庁特別捜査室 船村秀治 (実は公安部の調査官) 船村から岩戸へ 殺人事件の捜査協力依頼 車で移動中運転していた 橋本(岩戸部下)が銃で撃たれて重症に.. 風力エネルギー絡みで 住民とのトラブルで 故意に怪獣を誘引した罪で 風力会社の幹部を逮捕 実は..殺人犯は橋本(岩戸部下) 二つ目 怪獣の細胞を採取する ハンターが怪獣襲来時に殺される グローバルな製薬会社が 薬開発の為 ハンターに細胞採取を依頼 怪獣の予想到達経路の情報漏洩か 製薬会社の幹部一人を 船村調査官が射殺(権限有り) 三つ目 青森の日本遺産指定の 山にあるホテルに 日本から殲滅されたはずの 地底怪獣の調査で 岩戸予報官が訪れる ・二階堂香葉 登 夫妻 → ホテルの人 ・中佐古 (警察関係の人)→ホテルの人 ・木下 ジャーナリスト →殺される (失踪中の怪獣研究者の博士を探していた) 犯人は二階堂夫妻 = 怪獣研究者の 緒方博士と妻の亜矢 人間を餌にしていた 絶対絶命のところ 船村刑事が助けに来て..再会 怪獣発見から...殲滅する 四つ目 襲来した怪獣の種類を 確認する為 怪獣チェイサーと共に 怪獣の近くまで行き 尻尾下の色を確認する岩戸予報官 殲滅方法が全く違う 外観の似ている怪獣 ザムザギラーと ザムザゲラー 尻尾下に光の斑点ありで 怪獣はザムザゲラー ..殲滅する ゴジラやウルトラマンの 実写怪獣の世界で.. 岩戸予報官が 怪獣8号の亜白ミナ隊長.. 船村刑事が 必殺仕事人の藤田まこと.. 一話完結で 最後に犯人が 捕まる刑事ドラマ..のような.. 頭の中で アニメと実写入り乱れる イメージで話が展開された 怪獣が出てくる話は あまり読まないジャンル だけれども 面白かった
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怪獣×ミステリーとは? と思っていたけど、取って付けたような怪獣でもなく、無理くりなミステリーでもなく、見事な融合性の怪獣×ミステリーでとっても面白かったです。 あの怪獣が動きを止めた時の緊張感が凄くて、そこが一番ドキドキしました。 楽しい読書時間を過ごせて幸せでした。
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★5 怪獣とミステリーが融合した超ドエンタメ小説、圧倒的リアルな世界観に咆える! #怪獣殺人捜査 ■あらすじ 怪獣が存在する世界。我が国日本は度重なる怪獣の襲撃に対抗すべく、怪獣省を設置していた。怪獣対策局予報課に仕えていた岩戸正美は、日々怪獣の襲撃から日本を守っていたのだ。 ...
★5 怪獣とミステリーが融合した超ドエンタメ小説、圧倒的リアルな世界観に咆える! #怪獣殺人捜査 ■あらすじ 怪獣が存在する世界。我が国日本は度重なる怪獣の襲撃に対抗すべく、怪獣省を設置していた。怪獣対策局予報課に仕えていた岩戸正美は、日々怪獣の襲撃から日本を守っていたのだ。 ある日、全長50メートルの怪獣が日本に向かっていることが予測される。正美は地域の住民を緊急避難させ、怪獣を刺激しないように風力発電所を止めるよう指示を出す。しかし、何故か止まらない風車があり… 怪獣とミステリーを融合させた連作短編集。 ■きっと読みたくなるレビュー ★5 何これ、すげー面白いんだけど。単行本が発売されたのが2023年1月でしたか、しっかり読み逃してました。文庫版で読ませていただきます。 まず驚いたのは圧倒的なリアルさですよね。怪獣が出てくるんでフィクションが大前提なんですが、こういった世界だったら国としてはどういう組織を作るのか、防衛措置を取るのか、法律があるのかといった設定が綿密すぎなのよ。さらにその国に対する市民の不振な感情や、企業とのきな臭い繋がりなんかも描いていて超現実的なんですけど。 大倉先生が怪獣や特撮ファンなのは存じ上げてましたが、ここまで妄想力があると素晴らしい変態ですね。 また登場人物が怪獣以上に躍動していて、むしろ人間が主役。主人公である岩戸正美はもちろんカッコイイんですが、あくまで怪獣と戦う殲滅班でなく予報班ってところがキモですね。知識がある切れ者は好みのタイプなんですよ… もう惚れちゃう。 そしてなんといってもイチ推しは警察庁特別捜査官の船村。頼りないし、何やら怪しいし、小汚なそうなおっさんだし… でも読み進めると、実は誰よりも光り輝いているです。映像化されたら配役は滝藤賢一さんとかどうでしょう。一見ぬぼっとしながらも、映える時はバッチシ決める芝居をやってくれそう。 お話のメインは連作三編で構成されてますが、どの作品も機知に富んでるんです。どの話も怪獣の襲撃がキーにはなってるんですが、背景にいる人間たちの謀略が読みどころ。この怪獣がいる世界だからこそ起こりうるお話で感心しました。 各話の謎解きもしっかり組み込まれていて、さすがはミステリー作家の先生です。想像をしてなかったサスペンスやアクションの展開もあって、すっかり惹きつけられました。一番真相が強烈だったのは、最終話『工神湖殺人事件』ですね。かなり挑戦的だし、猟奇的な力強さがあって大好きです。 いやー、怪獣モノとミステリーなんてうまく合わさるの? なんて思ってましたが、見事に融合していてビビった。作り込みがエグすぎで、エンタメとして満点ですね。冬にはシリーズ新作もでるようですし、もう東映とか円谷プロで映像化希望です! ■ぜっさん推しポイント 文庫版で追加されたエピソード『怪獣チェイサー』が、これまた推せるんです。主人公正美の人間性がよりフォーカスされて描けていて、超Cooolだし、パワフルだし、エモいし、やっぱり惚れる。脇役の星野も良い性格で、愛せるキャラでしたね。 しかし本作で一番強く描かれてるのは、本来人間が恐れる怪獣をベースにしつつも、それ以上に何が怖いってところですよ。現実世界においても、何かが変わればそれに合わせて世の中の正義も歪んでいくんすよねー、怖い怖い。
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