OSO18を追え “怪物ヒグマ"との闘い560日 の商品レビュー
. 近年、野生のクマによる被害の報道を、よく見聞きするようになりました。 特に、北海道で発生したヒグマによる被害は、"OSO18"と呼ばれる特定の個体が繰り返し起こしていると、センセーショナルに報道されていました。 野生動物と人間との関わりについて、以前から...
. 近年、野生のクマによる被害の報道を、よく見聞きするようになりました。 特に、北海道で発生したヒグマによる被害は、"OSO18"と呼ばれる特定の個体が繰り返し起こしていると、センセーショナルに報道されていました。 野生動物と人間との関わりについて、以前から興味を持っていたので、この事件について詳しく知りたいと思っていました。 報道がひと段落した後に書店巡りをしていたところ、題名に"OSO18"とあるこの本が置かれていたので、読むことにしました。 著者は、事件が起きた北海道東部で、ヒグマに関するNPO法人の理事長をされているとのこと(執筆当時)。 OSO18による被害は当初、担当外の近隣の町で起こっていましたが、協力の依頼を受けて関わるようになったそうです。 被害が続いたため、著者達は地域のハンターらを集め、特別対策班を編成します。 OSOを捕獲すべく、捜索を開始した対策班。 しかしその対象は、東京23区の3倍という広大な範囲に及びます。 過去にOSOが事件を起こした場所を中心に捜索しますが、少ないと言われていたこの地域に数多くのヒグマがいることもわかって・・・という始まり。 本書は、最初の被害から四年がかりとなった、著者と対策班の活動の日々が、時系列でまとめられています。 複数の牛を襲って怪我を負わせていながら、その中でも一部の牛のみを食べるOSO。 「普通のクマ」という想定で捜索を始めた著者たちですが、上記をはじめとする複数の謎が浮かび上がります。 その謎解きも、本書の読みどころの一つです。 そしてOSOの特徴として、繰り返し書かれているのが、並外れて「用心深い」ということ。 最初は半信半疑だったのですが、読み進めるにつれて、OSOが自らに迫る人間の動きを察知して行動しているということを、驚きをもって理解しました。 自分自身、不思議に思っていたのが、哺乳類の肉を食べることが少ない野生のヒグマがなぜ、自らの意思で牛を襲うようになったのかということ。 この点は本書のメインテーマの一つでもあるのですが、自分なりに以下のように理解しました。 (1) ヒグマがエゾシカの肉に容易にありつける環境が、人為的な理由により増えてきた (2) エゾシカの個体数そのものが増え、牛がいる牧場の周囲にも出没するようになった(⇒牧場の近くに、ヒグマが来る場所が出来てしまう) そして、マスコミの報道ではわからない部分が多かった、OSOの最期について。 著者の推測で補われた部分もありますが、おおよそこういうことだったのだろうと、納得しました。 今回の経験を踏まえて著者は、OSOのようなクマは再び、出現してしまうだろうと書いています。 エゾシカをめぐる問題については、改善に向けた取り組みも始められているようですが、地方の過疎化が進む今後は、危険性がさらに増すのではないかと、自分も心配になりました。 野生動物が減りすぎたり絶滅してしまうのはかわいそう、でも、自分たちに危害や被害が及ぶのは困る。 多くなりすぎた動物は間引きが必要、でも、その処理能力が足りない。 経験やノウハウを持った人が減っていく中で、野生動物とどう向き合っていくのか? 地方行政の一つの課題として全国で取り組み、良い事例を広めていくなど、工夫していく必要があるように思えました。 本書を読んで、この問題への理解が深まった部分がある反面、知らないことがまだたくさんあることも認識しました。 今後も関連書籍を読んで、自分なりに考えを整理していきたいと思います。 .
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出版社の宣伝文句が「究極のクマ本 緊迫の実録ノンフィクション! 羆(ヤツ)は、必ず戻ってくる。」というゴシップ誌みたいな煽り文になっているが手に取ってみると「驚愕の手記」というよりは560日間、対策チームが地道にOSO18という羆(ヒグマ)を追うことになった経緯、事の顛末が連ねて...
出版社の宣伝文句が「究極のクマ本 緊迫の実録ノンフィクション! 羆(ヤツ)は、必ず戻ってくる。」というゴシップ誌みたいな煽り文になっているが手に取ってみると「驚愕の手記」というよりは560日間、対策チームが地道にOSO18という羆(ヒグマ)を追うことになった経緯、事の顛末が連ねてある至極真面目なノンフィクションだった。 著者の藤本靖氏は対策チームのリーダーなのだが、書いてある内容如何だけではなく、文体から、「この人は様々な事に気を配っている人で、いつも皆から頼られる人なのだろうなぁ」と人物像が自然と想像できた。 例えば、対策チームは藤本靖氏が普段一緒に狩りをしているハンターたちで構成されるのだが、彼ら一人一人の強みや人となりについ書いてある部分はとても詳細に書かれていて、「なんて頼りになるメンバーたちを集めたんだろう」と読んでいる方は深く感心してしまった。 過熱するマスコミに対しての苦労話、OSO18というたった一頭の熊を北海道という広大な土地で探すという気の遠くなるような仕事について、そして熊の習性など少し固く専門的な話が書かれる中、著者は折に触れて対策チームが食事を楽しむ場面などを挟んでくれる。内容に緩急をつけて専門外の読者の事を気遣ってくれる。北海道中を車で探索する中、メンバーはセイコーマートという北海道にしかないコンビニでしょっちゅう食べ物を補給するのだが、「ホットシェフ」という店内調理による大きなおにぎりが特に美味しそうで、読んでいてぜひ食べてみたいと思った。 常に現場に出ている人が書くので、OSO18という熊が現れてしまった説明は「理論」じゃなくて「この場所が」という具体的な場所の描写で現れる。一冊の本として実に実直で、本当に面白い本だと思った。 ちょっと過激な宣伝文句で売り出そうとするのもある意味納得。広く読まれると良いのになぁ。
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なぜOSO18と名付けられたヒグマは牛やエゾシカを襲い食べるようになったのか 自然界での突然変異!なんてことはない 結局のところ動物が絶滅したり行き場を失ってしまったり、、何かしらで人間が関わっているのだと思うとやるせない もちろん直接は関係ないんだけど、今後クマのニュースを...
なぜOSO18と名付けられたヒグマは牛やエゾシカを襲い食べるようになったのか 自然界での突然変異!なんてことはない 結局のところ動物が絶滅したり行き場を失ってしまったり、、何かしらで人間が関わっているのだと思うとやるせない もちろん直接は関係ないんだけど、今後クマのニュースを見たときにOSO18が頭をよぎる気がする
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巷では「怪物ヒグマ」と呼ばれたOSO18だが、本書を読んでみると全くもって「怪物」なんかじゃなかった。改めて、ヒグマと人間との共生の在り方というものを考えさせられるものだった。道民ならば一度は読むべき本だと思う。
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最前線からの手記。少しずつ少しずつ、でも確実に。追う者の執念、報じる側の執念 ワクワク5 展開5 読後6 再読3 構成5 学び8 文表現5 人物6 深み7 余韻7 計:57/100
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4月に都心から少し離れた場所に引っ越してきたのですが、先日、近くでクマの出没情報があり、興味を持ってこの本を読んでみました。 クマを狩ること、そしてクマと共存することの難しさがよく分かる一冊でした。 「OSO18」という名前が、ある意味で誤解を生み、またOSO18自身が人間の存...
4月に都心から少し離れた場所に引っ越してきたのですが、先日、近くでクマの出没情報があり、興味を持ってこの本を読んでみました。 クマを狩ること、そしてクマと共存することの難しさがよく分かる一冊でした。 「OSO18」という名前が、ある意味で誤解を生み、またOSO18自身が人間の存在を少し理解してしまっていたことが、事件を大きくしていったのだと思います。最期はあっけないものでしたが、決してハッピーエンドとは言えないと感じました。 あとがきに書かれていた「共存とは、あくまで人間を優先とした考え方である」という言葉が印象に残っています。 OSO18の出現は人間が引き起こしたものでしたが、一度肉の味を覚えてしまったクマは駆除するしかなかったという現実も描かれています。 自分にできることはせいぜい、クマと鉢合わせしてしまった時の対処法を学ぶことくらいだと感じました。
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熊を猟師さん達の大変さが読める。ニュースなんかで熊が悪すると、行政は何やってるんだとか言う人いるが、実際に熊を追うことの大変さというのはあまり報道されていない気がする。また、熊を殺すなとか言う人いるが、共存の難しさは考えた方がいい。OSO18を追跡するのに、どれだけの人が現場で苦...
熊を猟師さん達の大変さが読める。ニュースなんかで熊が悪すると、行政は何やってるんだとか言う人いるが、実際に熊を追うことの大変さというのはあまり報道されていない気がする。また、熊を殺すなとか言う人いるが、共存の難しさは考えた方がいい。OSO18を追跡するのに、どれだけの人が現場で苦労しているのか、昨今の街中での熊の出没ニュースを見るが、猟師さんの大変さを知れる本だった。
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人間が捨てた鹿を食べた熊が人間の家畜を襲い、人間と敵対し人間に殺される。 全ては人間が蒔いた種。全て人間主軸の業。胸が苦しくなった。
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熊殺しについて肯定する理由が1つでも見つかるかと思ったけどまじで1つもなかったわ 個々のハンターのことはまったく悪く思わないけど、家畜襲ったってだけで当たり前のように殺すのが胸くそすぎる だってどうせ人間に食べられる家畜ならなんで熊が食べちゃいけないの? せめて人間を殺した個体...
熊殺しについて肯定する理由が1つでも見つかるかと思ったけどまじで1つもなかったわ 個々のハンターのことはまったく悪く思わないけど、家畜襲ったってだけで当たり前のように殺すのが胸くそすぎる だってどうせ人間に食べられる家畜ならなんで熊が食べちゃいけないの? せめて人間を殺した個体だけにしろや シカ捨て場とかふざけんなよ 結局全部人間のせいじゃねーか それでなんで熊殺しが正当化されるのか意味不明すぎ 自然の摂理に反しすぎ じゃあ熊だって責任能力なしで無罪放免だろーが なんで人間だけ特別だと思ってんのか頭沸きすぎ しかもOSOに関しては人間は1回も襲ってないどころかプロがビビりって言うぐらい人間のこと自分からちゃんと避けてたのに しかも非合法な括り罠で痛めつけるとかまじで被害者でしかない可哀想 思想は別として、著者はじめOSO18特別対策班のみなさんのことは本当に尊敬する
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※このレビューにはネタバレを含みます
本書に書かれていることは概ね真実だろうと思う。 →人間が栄養価の高い牧草を創り出した。 →エゾシカがそれを食べ、容易に冬を越せるようになって、数が爆発的に増えた。 →農作物被害が深刻化、その為、ハンターによるシカの駆除数が増えた。 →駆除したシカの処理が大変で、それを不法投棄する輩が増えた。 →不法投棄された新鮮なシカ肉にクマが容易にありつけるようになり、本来草木類を食べるクマを、肉ばかり食べるクマに変えてしまった。 「OSO18を怪物に仕立て上げたのは最初から最後まで人間、すべては人間のせいである。」 予想外に読み手が考えさせられる一冊であった。 牧草の品質改良がまさかこういった悲劇に結びつくなんて誰も想像だにしなかったろうと思うと共に、このような事態に波及する可能性があることをしっかり認識しておかねばと思った次第である。
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