空にうかんだエレベーター の商品レビュー
安房直子さんと、えがしらみちこさん 以前もこのお二人の絵本を読んだのですが、その時の感想がまたよみがえる読書になりました 美しく愛らしい挿画に、独特の語り口の情の深い物語 そして語られる内容に込められた、隠せぬ不穏さ 読んでいる間中、じわじわと不吉な予感が迫る、登場する女の子と仲...
安房直子さんと、えがしらみちこさん 以前もこのお二人の絵本を読んだのですが、その時の感想がまたよみがえる読書になりました 美しく愛らしい挿画に、独特の語り口の情の深い物語 そして語られる内容に込められた、隠せぬ不穏さ 読んでいる間中、じわじわと不吉な予感が迫る、登場する女の子と仲良しのうさぎのぬいぐるみが辛いことやしんどい目に遭うのではないかと気が気でない読書になりました お話の筋書きは、おそらくあまり恵まれた環境にいない女の子が、子供服のショーウィンドーに飾られたうさぎのぬいぐるみと満月の夜におさんぽに出かけて、夢を語り合うという物語で、星空の中で月の光を縒って編んで空を翔べる月のマントを仕立てるという、ものつくりへの楽しさや憧れをかきたてる場面もあります しかしやはり不穏だった 女の子が親御さんに放置されている含みや、うさぎが飾られたお店の人からあからさまに邪険に扱われる場面など堪えるしんどさがある その後やってきた楽しい場面も、終わりにはうさぎがマントを無くして空から落ちてしまう 世の中には楽しいことよりも悲しいことや辛いことの方が多いのだと突き放されたような心地におちいる でも、女の子とうさぎのぬいぐるみは、これからも一緒にいられるようだから…きっと、大丈夫…多分… ところで、安房直子さんの作品に共通する印象として、登場人物の無力さやみじめさを描写するのがとても巧みだなと感じます 悲しいことや怖いこと、困った状況に対して対処が出来ない歯がゆさ、でもそれに悲観にくれたり捨て鉢になる性質の子はいない、そんな健気さや儚さから醸し出される雰囲気が、きっと独特で魅力なのではないだろうか
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