カラフル の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『パラ・スター』で車いすスポーツのリアルを描いた阿部さんだからこその青春小説。 車いすユーザーの六花と、入学式の日に駅でのひったくり事件を機に知り合った伊澄のふたりの成長小説ではあるのだけど、単なる青春小説で終わらないところが阿部小説の魅力。 担任の態度やクラスメイトの態度や対応にイラっとしながら読んでいくのだけど、そのイラっとする気持ちがそのまま自分へと突き返されていることに気付いて深く内省。 障がい者への対応や、無意識の差別、そこに悪意がないところに難しさがある。その辺りをとてもしっかりと描いていてこの世界に生きる老若男女すべての必読書ではないかと思う。 将来の自分に夢見ていた少年少女が、その夢を失ったとき、その先の長い長い人生をどう生きていくか。 なぜ生まれてきたのか、どうして生きているのか、なんのために生きていくのか。 誰もが手探りで探しているその問いへの答えは多分ずっと見つからない。 それでも今日を生きる。今を生きる。その一秒を紡ぎながら生きていく。 知らないことが誰かを傷つける。良かれと思ってしたことが誰かの可能性を摘む。 だから、知ろう。いろんな人がいる。自分とは違う誰かを知ろう。そう世界はとてもカラフルなのだから。 全然関係ないけど、阿部さんはBUMP OF CHICKENのファンじゃないだろうか、とふと。
Posted by