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マーリ・アルメイダの七つの月(上) の商品レビュー

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5件のお客様レビュー

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2024/07/07

全く知らなかったスリランカの厳しい内情を知ることができた。 民族や思想による複雑な紛争が物語の背景だ。作者の意図も設定も素晴らしいのだが、なじみのない名称が多く、イメージを持ち続けて物語を進むのが私には難しかった。 下巻まであることを思うと、辛くなり上巻7割のところで本を閉じた。

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2024/05/19

主人公のマーリ・アルメイダは戦場カメラマンでギャンブラー、皮肉屋、同性愛者。気がつくと冥界のカウンターにいた。というような帯にある文言くらいで読み始めたので、なんとなく軽い感じの物語かなと勝手に思い込んでいたのだが、かなりずっしりと重い物語だった(上巻のみなので結末はまだ知らない...

主人公のマーリ・アルメイダは戦場カメラマンでギャンブラー、皮肉屋、同性愛者。気がつくと冥界のカウンターにいた。というような帯にある文言くらいで読み始めたので、なんとなく軽い感じの物語かなと勝手に思い込んでいたのだが、かなりずっしりと重い物語だった(上巻のみなので結末はまだ知らない)。 〈はざま〉では皆に7つの月(七夜)が与えられ、過去の心の傷や罪を明るみにする〈耳の検査〉を受けて、最後の月が昇る前に〈光〉へ着いていなければならないという。しかし、〈光〉は忘却であり、民衆を愚かなままにして抑圧する現実世界と同じだと解くものがマーリの前に現れる。マーリはどこでなぜ死んだのか何も覚えていないが、現世でやり残したことを思い出してくる。 死後の世界〈はざま〉での出来事ややり取りは軽く楽しいことが多い。しかし、実際の1990年のスリランカの国内事情や出来事はずっしりと重い。スリランカの歴史を全然知らないので、少し調べながら読み進める。軽いやり取りの間に挿入される虐殺や内戦の描写が、非現実ではなく日常であることを痛感する。 〈はざま〉と現世が入り乱れて描かれる上巻では第三の月の途中まで。どんな結末が待っているのだろう?

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2024/03/16

日経書評 2024年3月2日 鴻巣友季子 マーリ・アルメイダの七つの月(上・下) シェハン・カルナティラカ著:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78893080R00C24A3MY5000/

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2024/03/09

内戦下のスリランカで、戦場カメラマンのマーリ・アルメイダに起きた奇想天外な物語。 冒頭、彼は冥界の受付にいる。そこで告げられたのは「7つの月が与えられる」だった。死者に残された時間は月が7回上るまで、つまり7日間。その間にマーリは自分の死の真相を突き止め、やり残した使命を完了させ...

内戦下のスリランカで、戦場カメラマンのマーリ・アルメイダに起きた奇想天外な物語。 冒頭、彼は冥界の受付にいる。そこで告げられたのは「7つの月が与えられる」だった。死者に残された時間は月が7回上るまで、つまり7日間。その間にマーリは自分の死の真相を突き止め、やり残した使命を完了させることを決意する。 第1章はマーリ及び読者に死後の世界のルールやら時代背景やらを説明するため長く読みにくい。スリランカなんてまったく未知の国で、なんの知識もないから尚更だ。 第2章からいよいよ物語が動き出し面白くなってくる。

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2024/02/17

マーリ・アルメイダ。 戦場カメラマンにして、ギャンブラー、そしてヤリチン。 物語の舞台は、1990年のスリランカ、内戦真っ只中のコロンボだが、その様子は全て死者であるマーリの目線から語られる。 マーリは、気づくと冥界のカウンターにいた。周りは死者で渋滞。戦争の被害者である彼らは、...

マーリ・アルメイダ。 戦場カメラマンにして、ギャンブラー、そしてヤリチン。 物語の舞台は、1990年のスリランカ、内戦真っ只中のコロンボだが、その様子は全て死者であるマーリの目線から語られる。 マーリは、気づくと冥界のカウンターにいた。周りは死者で渋滞。戦争の被害者である彼らは、死者になってもくだらない手続きのために列に並んでいた。そして42階で〈耳の検査〉を受けて〈光〉に行くよう案内される、、、 しかし、途中不思議な雰囲気の若者の霊と会い、生者の世界に干渉するための力があることを告げられる。残された時間は月が7回昇るまで。腐敗した政府の闇を暴き内戦を終わらせようと、スクープ写真を残してきた友や恋人に託すことにする。マーリの地獄めぐりがはじまる。 平和で、夢があって、未来のことを楽しく想像できるような世界にいる人間からはとても生まれようのない言葉が次々に出てくる。戦争はきっと情報過多なのだろう。一人の人間に処理できる以上の情報が際限なく脳に押し込まれる。殺人、拷問、死体の処理。そういうものが生活に染み込んでいる人たちの、突き刺すような言葉が、痛み以上に不思議な魅力をもって紡がれる。作品の中の好きな文章を何度も声に出して読んだ。 逼迫した状況でも、どこか自分を客観視したような一人称の語り口は独特で、物語全体にブラックミュージックのような抗いがたい原始的なリズムを刻んでいる。 そしてストーリーは、死者の移動手段である"風"のように、ユーモアをたっぷり含んでどんどん進んでいく。どこをとってもとにかく面白い。こんなに厳しい時代を、完璧に物語にしたことは、いまだに続くスリランカの混迷に何かしらの一石を投じてくれることと思う。 2022年、満場一致でブッカー賞受賞を果たしたという本作、下巻もとても楽しみ。

Posted byブクログ