八角関係 の商品レビュー
同じ家に住む4組の夫婦(そのうち三兄弟と三姉妹)。自分のパートナー以外に関心がいった挙げ句に起きた連続殺人事件の真相は…? 70年以上前の「愛慾変態推理小説」(笑)らしいけど、結構面白く読めた。ツッコミどころ満載なので、ミステリというよりかは小説として。
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カストリ雑誌『オール・ロマンス』にかつて1951年に連載されていた幻の「愛慾変態推理小説」(p312 解説より、実際の誌面に載っていた角書)が令和の世にリバイバル単行本化。いいですか、「愛慾変態推理小説」ですよ。文字の圧がすごい。 そんな事は露知らず、狼(作中にも登場するしシェ...
カストリ雑誌『オール・ロマンス』にかつて1951年に連載されていた幻の「愛慾変態推理小説」(p312 解説より、実際の誌面に載っていた角書)が令和の世にリバイバル単行本化。いいですか、「愛慾変態推理小説」ですよ。文字の圧がすごい。 そんな事は露知らず、狼(作中にも登場するしシェパードかも?)の目元アップがシンプルかつ印象的な装丁に惹かれて購入した純情無垢な僕ちゃんはいざ読み始めてビックリしてしまう訳であります。 なんじゃこら! 四組の夫婦が同じ館に同居していて、妻達は基本的に夫を愛しているのだが夫らはよその組の奥さんを好きになってしまい、まるでポケモンみたいな気軽さで「妻を交換しようぜ」みたいなやり取りを日常繰り広げている狂気。 金利で生きている資産家のひとたちなので労働の様子は皆無、それどころか出掛けたりスポーツしたりとかそういう描写もほとんどなくて、食欲と性欲にのみ従って日々を過ごすゾンビのような登場人物達に寒気を禁じ得ない。 とりわけ何がすごいって、館にあとから住むことになった〈野上丈助〉は「市の警察署に職を奉ずる捜査課の警部補」(p11)なので、てっきり彼がこの異質な館に渦巻く乱痴気騒ぎを鎮め秩序をもたらす役割だと思っていたら彼も彼の妻〈貞子〉もあっという間に取り込まれていき、なんなら率先してやりたい放題おっ始める始末。 そうこうしているうちに次々と館の住人に不審な死が相次ぎ、丈助たちは肉欲に溺れながらも一応真相へとのろのろ迫っていく訳であります。 …と、これだけ読んでると一体何なんだいこれは、という感じだが本作は終盤にアッと驚く為五郎、大仕掛けが施されている訳であります。人によっては「最終的な落とし所は噴飯物」(p321 解説より)かもしれないし、理解不能な程の不貞と非常識な展開と供給過剰なエロシーンに目が眩まされてしまう訳ですが、そこに至るまでのあらすじは確かに本格ミステリの様相を呈しているのです。 丈助と貞子の不可思議な行動も、最後まで読んで振り返ると、ああ、と納得。ちゃんとラスト一文まで気が抜けない。 途中というか割と序盤で大仕掛けのタネが漏れてしまっているのはご愛嬌だが、ひょっとしたらそれも狙ったメタ的演出かも?と考えるとまた違った捉え方が出来る、噛めば噛む程味わいが出るスルメ作品なのかもな、と思いました。 1刷 2024.6.24
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