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かたばみ の商品レビュー

4.7

67件のお客様レビュー

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2024/08/05

私の中では、“信頼の秀作メーカー”である木内昇さん。 本書も、“これぞ、木内クオリティ!”と唸りたくなる出来栄えでございました。 元槍投げ選手だった悌子は、引退をきっかけに国民学校の代用教員となります。 同郷の幼馴染・清一と、いずれ結婚するつもりでいた悌子ですが、ある日、清一に...

私の中では、“信頼の秀作メーカー”である木内昇さん。 本書も、“これぞ、木内クオリティ!”と唸りたくなる出来栄えでございました。 元槍投げ選手だった悌子は、引退をきっかけに国民学校の代用教員となります。 同郷の幼馴染・清一と、いずれ結婚するつもりでいた悌子ですが、ある日、清一に呼び出されて、思わぬことを告げられてしまい・・。 他の方のレビューでも書かれているように、まさに朝ドラを全話見終わったような、爽快感と満足感を味わえる作品でした。 戦中から戦後にかけてが舞台とあって、物資不足や思想統制などで抑制された厳しい時代を、力強く生き抜いていく人々の姿が活き活きと描かれていて、私も彼らと一緒に悩んだり笑ったりしながら、年月を共に過ごしたような気持ちで読ませて頂きましたし、何といっても登場人物達一人一人が皆いい味出していたのが良かったですね。 物語は、なりゆきで所帯を持った悌子と権蔵が、とある事情で悌子が想いを寄せていた清一の忘れ形見・清太を引き取ることになったことから、悌子・権蔵・清太という「家族」三人を中心に展開するのですが、いわゆる“生さぬ仲”とはいえ悌子と権蔵が本当に清太を大切に想っている様が伝わってきて、出生に関する真実を打ち明けるか悩むくだりで、(清太の実父・清一への想いがあっただけに)神経質になってしまう悌子に対して、権蔵が、“自分が清太のことを大好きだからこそ、実の親なのにその存在を清太に知られないで逝ってしまった「神代神」(清一)がかわいそうになっちゃって・・”という感じの台詞を語る場面には、思わずジーンときちゃいました。 権蔵さんって、飄々としているけど正直だしエエヤツですよね~。 この権蔵さんと何事も一所懸命(「生」ではなく「所」なのがポイント)だけど、ちょっと不器用な主人公・悌子との相性が結構よくて、この夫婦の距離感が好きでした。 あと、清太が本当に良い子でね~・・・この家族には、ずっと仲良しでいてほしい!と思っていただけに、幸せなラストに胸がいっぱいになりました。 そしてタイトルでもある「かたばみ」の三つのハート形の葉っぱが、まさに悌子・権蔵・清太の「家族」を象徴しているようで、まだ幼児だった清太が、この葉っぱを指して言った台詞に目頭が熱くなった私です~。 ↓ 「おかちゃんとおとちゃんとせいた」

Posted byブクログ

2024/07/19

いやーなんちゅう傑作や!!何が凄いって、戦中戦後の陰惨さ・悲痛さを伝えながら、常にユーモアっ気が共存しているのが凄い。何となく教師になった元槍投げ選手の悌子。生気がなくその日暮らしの権蔵。二人の男女を中心に家族の在り方を描いた物語。全キャラクターが生き生きとした素晴らしい人物造形...

いやーなんちゅう傑作や!!何が凄いって、戦中戦後の陰惨さ・悲痛さを伝えながら、常にユーモアっ気が共存しているのが凄い。何となく教師になった元槍投げ選手の悌子。生気がなくその日暮らしの権蔵。二人の男女を中心に家族の在り方を描いた物語。全キャラクターが生き生きとした素晴らしい人物造形。特に一見頼りない権蔵の懐の深さには脱帽。「ソフトカバーでこんなに分厚いの?」と怯むほどの長丁場なのに、最初から最後まで惹きつけられて面白い。フフッと笑ったりオウオウと号泣したり感情は大忙し。朝ドラ見終わったような感動を有難う。

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2024/06/17

読み終えて、タイトルの「かたばみ」が全てを物語っているなと、つくづく思う。 花言葉は”母の優しさ“ ”輝く心“。 戦時中、自分の思いを封じ込めて過ごしていた人々のことを思うと辛くなる。でも、そんな時代でも悌子や権蔵のように明るさ、自分らしさを失うことなく生きる姿に元気をもらった...

読み終えて、タイトルの「かたばみ」が全てを物語っているなと、つくづく思う。 花言葉は”母の優しさ“ ”輝く心“。 戦時中、自分の思いを封じ込めて過ごしていた人々のことを思うと辛くなる。でも、そんな時代でも悌子や権蔵のように明るさ、自分らしさを失うことなく生きる姿に元気をもらった。 戦後になってからの清太との暮らしも、子どもを思う気持ちが詰まっていて、血の繋がりや家族って何なんだろうと考えさせられた。 自分の好きなことが出来るって、ほんとに有り難くて幸せなこと。周りの人にも自然と感謝したくなるような優しい読後感だった。

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2024/06/15
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※このレビューにはネタバレを含みます

第二次世界大戦直前から始まる家族小説。 逞しく努力家で情に厚い悌子が、やり投げ選手への道と恋に破れ、なんだかよくわからないまま結婚し養子をもち、家庭を築く。 基本的にどの人々も根っからの悪人ではないし、根性なしでもないので「誰が家族に挫折するんだろ?ゴンゾウさんあたりが亡くなった清一さんに焼き餅焼いたり清太に気兼ねしたりして拗れるんだろな」と予想していたら違った。 ゴンゾウさん、底抜けに優しい父であった。悌子も真面目で優しい母であった。 清太もやっぱり優しい子なので、野球で活躍するとお父さんが自分を卑下する材料になるかもしれないのが嫌だったんだよね。 というわけで、挫折は多分誰もしていなかった。理想の家族小説であった。 木内昇さんの泥濘を一歩ずつ進むような作風を期待してたので、ちょっと肩透かしではあったけれどキャラ立ちした爽やかな作品。 新聞連載とのことでさもありなん。 かたばみって食べたことないけど美味しいのかなぁ。

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2024/06/04

かたばみの花言葉に、「母の優しさ」、「あなたとともに」というのがありました。この本をよく表しているタイトルだなと思いました。 戦争中に子供を引き取り、その子が大きくなって親との違和感を感じるようになり、打ち明け、よりいっそう親子の絆が強まるという、ざっくりというとこんな話ですが...

かたばみの花言葉に、「母の優しさ」、「あなたとともに」というのがありました。この本をよく表しているタイトルだなと思いました。 戦争中に子供を引き取り、その子が大きくなって親との違和感を感じるようになり、打ち明け、よりいっそう親子の絆が強まるという、ざっくりというとこんな話ですが、何だか夏の夕日の温度と砂埃の匂いがしてきました。 一生懸命にこの時代を生きている、そんな日本人に会える本だと思いました。

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2024/05/27

「教師も親も、子供の手本になろうとする。でもそれは間違いだと思うのです。ひとは、どこまでいっても未熟で不完全です。ですから、ただ一生懸命生きている正直な姿を、子供たちに見せるほかないように思うのです。」 木内昇作品はブクログ始める前に読んだ『茗荷谷の猫』以来2冊目。本書はタイト...

「教師も親も、子供の手本になろうとする。でもそれは間違いだと思うのです。ひとは、どこまでいっても未熟で不完全です。ですから、ただ一生懸命生きている正直な姿を、子供たちに見せるほかないように思うのです。」 木内昇作品はブクログ始める前に読んだ『茗荷谷の猫』以来2冊目。本書はタイトルに惹かれ事前情報のないまま読みはじめたのだが、世代的にはまさしく母からよく聞かされていた時代の話。雑草で嵩増しした雑炊だとか、PTAのこと、教室に飾る花を持って行った事もあるな‥なんて事を唐突に思い出したら、当時の母は今の私よりうんと若かったのか!と今更ながらに気が付いて、懐かしいやら申し訳ないやら‥。花言葉は「母の優しさ」「輝く心」。覚えました。

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2024/05/18

母の力強さと父の柔軟さと子の真っ直ぐさ それ故のジレンマと見守る親戚たち いいキャラばかりでほっこりしつつ涙 ありがちなようでいてなかなかない人生の交錯。

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2024/05/16

こういうお話、すごく好き。 戦争の頃の話でもあるから、もちろん辛い部分や涙するところもあるけれど、くすっと笑えるところも沢山あるし、何より登場人物が1人除けばみんな良い。 このお父さん、お母さん、息子だからこそのあったかい家族のお話だった。

Posted byブクログ

2024/05/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

凄い小説を読んでしまった。家族小説を真正面からバシンと描いた最高傑作。木内昇恐るべし。 槍投げでオリンピックを目指していた主人公悌子は自らの限界や戦時下という時勢もあって挫折し国民学校の代用教員となる…。大筋は悌子の戦中戦後の人生を描いていくことになる。 とにかくキャラの立たせ方と結びつき彼らの生き生きとした描写が良い。教え子を空襲でなくしたり、幼馴染の思い人が戦死したりと暗い出来事も多いのだが、必要以上に筆致に悲壮感を加えず、食糧難も姑のいじわるも思春期の反抗も、家族にとっては一大事と平等に描いていく。 それら一大事を家族愛や人間関係で緩やかにほぐしていく描写と、世の中の暗雲が少しずつ晴れていく戦後という時代背景が相まって温かく明るい小説になっている。 余談 NHK朝ドラの雰囲気がバチバチに出ている作風(おそらく意図してたものと思う)だが、人間ドラマを丁寧に描く上でNHKは大きな貢献をしているのではないかと思った。励みのある人間模様を観て「今日も頑張ろう」と思わせる貴重な朝の15分。朝ドラに全く興味のなかった俺だけど、そう考えると良いものなんだなぁということは理解できた。

Posted byブクログ

2024/05/08

戦争に翻弄され、辛い事を乗り越えようと頑張る様が読後を温かくしてくれました。現代はこんなに辛い事はないけど、前向きに過ごせたらいいかなと思わせてくれました。

Posted byブクログ