サクラサク、サクラチル の商品レビュー

辻堂ゆめ(著者)

2024/09/17

「僕らはふたりとも自分がない。将来を自分の意志で描いたことも、自分のなりたい自分になろうとしたこともない。それが僕らの、一番大きな共通点なのではないか。」

教育虐待を受ける主人公・染野と、貧困家庭でヤングケアラーの同級生・星さん。心を通わせた二人は、自分たちを虐げた親への復讐計画を始動させる。
ネグレクトや殴る蹴るの虐待と違い、教育虐待は、「子の将来のため」が免罪符となり、知らず知らず虐待の領域に踏み込んでいる事に、親も子も気付けない怖さがある。そんな中での染野の、星さんとの出会いはまさに僥倖。もちろん、星さんにとってもまた同様に。改めて自分自身で考えるということの大切さ、そのための読書、勉強の大切さを思った。とても良い読後感。

「勉強することはこの不平等な社会で持つことを許された数少ない武器。対等に与えられるものではないけれど、環境を呪わず、勉強することを自ら放棄せず這い出す努力をし、力をつけた人間が活躍できるフェアネスがギリギリこの国にはある／早見和真『八月の母』」

2024/09/04

母親の世話をするために生まれてきた星さんと、両親の虚栄心を満たすために生まれてきた僕の復讐計画が始動する。
幼いころから普通だと思っていた家庭環境が普通から逸脱してることに気づいた二人。世間では教育虐待とかネグレストというらしい。保健室や体育館裏の定番スポットでお互いの身上を語り合ううちに共感しあう。
終盤ミステリーの展開は怒涛の答え合わせのようで自己採点してみると高得点でしたw
「すべて、あなたのためだ」とかゆう呪いの言葉から解放され、自分のなりたい未来に向かってロックオンできたことがよかったかな。

2024/09/05

染野くんが受けてる「教育虐待」がこんなに酷いものとは予想しなかった。過剰な期待というより、父親も母親も鬱憤を晴らすために子どもたちをサンドバッグにしてるだけ。一章二章と読むのが辛くてなかなか進めませんでした。

どういう理由であれ星さんの方から声をかけてくれて良かった！
犯人はなんとなく見当が付きましたが、犯人の起こした事件と2人の復讐計画とが相まって良い結果に転んだのかな。
染野くんと星さんとの会話がどんどん活き活きしてくるのが嬉しかった。

2024/08/18

東大出身の父親を持ち、東大に合格する為にあらゆる制限を課せられ、成績が落ちた時には罵倒され、それでも気が済まない時には延々と続く暴力を虐待とは思っていなかった染野高志。貧困家庭の母子家庭に生まれ育児放棄された星愛璃嘉。

自分の親が普通でないという事実はなかなか気づけないのだろうか?洗脳と親からの愛情を切望する子供の気持ちを利用する親にゾッとする。

長々と続く虐待の場面は早く終って欲しくて読んでいて気分が悪くなった。しかし高志に対する陰湿な嫌がらせの犯人が誰なのか気になり読み進める事が出来た。

そして２人が計画していた復讐がどんなものなのか、ラストでその素晴らしい計画を実行した２人に胸がスカッとした。

親に搾取されてきたこれまでの人生を捨て、新たに自分の為の人生をスタートさせた２人の姿に安堵したけれど、辻堂さん、あのセリフは彼女が彼にかけた言葉だと思ったら逆だったのですね～。まんまと騙されました。

2024/08/15

正直読んでいてずっとしんどくって読むのをやめようかと思ったけど、最後まで読んで良かった。良い話だった。

2024/08/10

虐待って今までは暴力、暴言などでこどもを傷つけることだと思っていましたが勉強でこんなにも追い込むような傷つけ方もあるなんて本当にゾッとしました…。こんな話を読むと自分がどれだけ恵まれた環境で過ごしているのかがよく分かるので両親に感謝の気持ちを伝えたいです!!

2024/08/05

教育虐待を受けている男子高生とネグレクトの末に共依存になったクラスメイトの女子高生が、一緒にそれぞれの親に復讐をする。
なかなか描写がツラかった。

2024/08/04

自分の置かれている境遇が虐待だと気付かないし、それ以上に思いたくない。未成年は親に頼らなければ生きていけないからだ。
それが保護なのか支配なのか、見極めることさえ出来ないのに。

主人公達の復讐はどこへ向かうのか。
最後まで目が離せなかった。

2024/07/28

染野高志は父が東大卒のエリート
高校3年で受験をひかえる
東大を目指して家族から様々な管理をされ
自由を奪われ
少しでも約束を破ると罰を与えられる
ある日、同じ高校の星さんと出会い
2人はある復讐をする

素敵なタイトルと装丁から裏切られるほど
ブラックな世界
だけれど心に残る作品

高志、星さん、高志の姉に心から幸せになって欲しい

2024/07/22

始終惹きつけられた。
端的に言えば虐待を受けている高校生2人の高志と星さんが親に復讐をする物語。

温かい家庭で育った人には虐待の描写が酷く感じるかもしれない。だが家庭機能不全だった私には、虐待をされても自分を責めてしまう感情やそれに疑問を抱けない気持ちが痛いほど感じ、また虐待を自認した時の悲しみ、怒り、切なさ、無力感、否定感、苦しみに共感した。次第に周りを信じられるようになっていく過程にも感情移入した。

毒親は連鎖すると言われていて、実際本の中でも幾つか描かれている。そういった中で、2人が親と自分と闘いながら正しい方向に復讐をして自分を見つけていっているのが素晴らしい。

小説でここまで惹かれたのは初めてだと思う。話の展開や伏線が素敵なだけでなく、個人的な経験が絡んでいることもあると思うが、それほどよく内面が描かれている。学ぶこと、自分で決めていくことの大切さを感じられる。他の人にもおすすめしたい。