児童雑誌の誕生 の商品レビュー
たまたま図書館の新刊コーナーで手にした本です。書名に惹かれて読みましたが想像していた内容とはまったく違うものでした。その新しい世界が新鮮でした。取り上げられる雑誌や事象や人物は初めて知るものばかりで(なにしろトラクトという言葉さえ初見でした…)、それでも興味深く読めたのは著者の立...
たまたま図書館の新刊コーナーで手にした本です。書名に惹かれて読みましたが想像していた内容とはまったく違うものでした。その新しい世界が新鮮でした。取り上げられる雑誌や事象や人物は初めて知るものばかりで(なにしろトラクトという言葉さえ初見でした…)、それでも興味深く読めたのは著者の立てた論理のフレームそのものが面白く、そして実際の文献から一個一個エビデンスを積み上げていく過程が緻密だったから…なのかもしれません。児童雑誌って聞くと去年100周年を迎えた小学館とか想起してしまうけどそれ以前のキリスト教の布教対象としての子供、子供だけじゃなく識字能力の低いターゲットへのアプローチからを源流とするとか、なるほど…です。また、資料への向き合い方も文献第一主義を超えて実際の雑誌現物(「少年園」というこれまた未知の雑誌…)への読者の書き込みを元に考察する第五章も驚きました。図書館で見かけなければ読まなかった本ですが、読み終えて、こういう研究って面白いな…という向学心が芽生えてしまいました。第六章の二宮尊徳=「薪負読書」図というイメージの成立についての分析も鮮やかに感じました。自分もお楽しみ読書だけでなく、薪を背負って勉強読書しなくても、いいのかな気分です。たぶん、読後すぐの心待ちでしかないだろうと思いますが…
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