台湾漫遊鉄道のふたり の商品レビュー
一大事。全然小説を読めていない。本棚の偏りを防がなくては…! しかしフィクションとなると、いつもレビューの書き方に悩まされる。 面白かったはずなのに、読後脳内には感想のカケラも残っていない。(これは最大の謎!) 重大なシーンに触れたりしたら、ネタバレになりかねない。 そんなこん...
一大事。全然小説を読めていない。本棚の偏りを防がなくては…! しかしフィクションとなると、いつもレビューの書き方に悩まされる。 面白かったはずなのに、読後脳内には感想のカケラも残っていない。(これは最大の謎!) 重大なシーンに触れたりしたら、ネタバレになりかねない。 そんなこんなで、トライアンドエラーを繰り返しながらキーボードを叩いていました…。 時は昭和13年。 流行作家の青山千鶴子(以下、千鶴子さん)は、ベストセラー本の講演で台湾に招聘される。そこで本島人(台湾人のことを指す)通訳の千鶴(以下、千鶴ちゃん)と運命の出会いを果たし、講演旅行の傍らで千鶴ちゃんとの台湾食巡りを決行していく。 台湾グルメに加え、東西の言い回し(漢詩や西洋文学など)を交えた、教養高き2人の会話も見ものである。 「住み慣れた場所を離れて別の土地で暮らして、この世に生きる新鮮な感覚を取り戻すの」 千鶴子さんが台湾で過ごした1年を12章でまとめた構成。各章のタイトルはキーポイントとなる料理名になっている。 これは大食いの青山千鶴子女史じゃなくてもお腹空きますって。。画像はない分料理の解説・調理工程が詳細に記されているから、ガイドブックとセットで持っておきたい!(現代でも味わえる料理を取り扱っているのが嬉しい) 九州女児 千鶴子さんの、千鶴ちゃん自身に対する押しが強く、図々しいのでは?と思うことも正直あった。(千鶴子さんのモデルが林芙美子だと、あとがきで知って大いに納得。あの豪胆さは相通じすぎている笑) 「千鶴ちゃんと本当の友達になって、一緒に台湾を食べ尽くしたい」 千鶴子さんの不器用ながらもまっすぐな好奇心は、シンプルに大好きな台湾や千鶴ちゃんのことをもっと知りたいという想いの表れなのだろう。おかげで物語のキーが次々と明らかになったが、付かず離れず人間の自分はあそこまで踏み込む勇気はないなーと、どうしても思ってしまう^^; 千鶴子さんは2人の関係を「ワルツを踊っているよう」と例えていたが、それを大柄な千鶴子さんと華奢な千鶴ちゃんに当てはめると、まさに少女歌劇(当時の呼び方に合わせてみた笑)そのものである。 どんなに千鶴子さんがリードしても本心を明かしてくれず、するりとかわしてしまう千鶴ちゃん。微かなすれ違いを見せながらも、2人を繋いだのはやはり料理だった。 日本の占領下にあった植民地が舞台ではあるが、目に余るような悲惨な光景がなくて少し安堵していた。でもそれは、大切な内地人(日本人のこと)客として厚遇されている千鶴子さん目線だったから。 日本によって淘汰され、馴染みの風景が消えていくのは死ぬほど辛い出来事だろう。窮屈な思いも数えきれないくらいに味わったことだろう。 自分は大学の卒業旅行で一度訪台しているが、関わった老若男女が皆親日であったこと、そして美味しい料理に感動していた。 あの時の自分も本当のことはちゃんと見えていなかったのかもしれない。しかしあの時育んだ出会いと美味しい記憶は、千鶴子さん同様真っ先に信じていたい。
Posted by
物語の舞台は昭和13年、日本植民地下の台湾。講演旅行で台湾へ渡った日本人の若い流行作家の青山千鶴子は、博識で美しい台湾人通訳、王千鶴と出会います。妖怪並みの胃袋を自認し、食への並々ならぬ情熱をもつ千鶴子と、実は天才的な料理の腕前をもつ千鶴。そんな二人の女性が、台湾を鉄道で旅する物...
物語の舞台は昭和13年、日本植民地下の台湾。講演旅行で台湾へ渡った日本人の若い流行作家の青山千鶴子は、博識で美しい台湾人通訳、王千鶴と出会います。妖怪並みの胃袋を自認し、食への並々ならぬ情熱をもつ千鶴子と、実は天才的な料理の腕前をもつ千鶴。そんな二人の女性が、台湾を鉄道で旅する物語は、庶民の食卓から屋台飯、伝説の女性料理人がつくる、究極の宴席料理まで、豊かで奥深い台湾料理の世界へ読者を誘います。 もっとも、この小説は美食を味わうだけではありません。千鶴子は台湾の地で、日本の植民地政策の欺瞞、傲慢な日本人の意識、台湾人への様々な差別や偏見を目にすることに。そうした歴史を知る時、読者も一抹の苦さを覚えることになるはずです。
Posted by
台湾×鉄道×グルメ×百合! 日本作家と台湾人通訳という2人の“千鶴が台湾縦貫鉄道に乗り、食欲と感情と涙腺を爆発させる物語 "
Posted by