台湾漫遊鉄道のふたり の商品レビュー
エンタメとしてめちゃくちゃ楽しくて、でも考えさせられて唸らせられる、とっても面白い本だった! 読めてよかった〜! 台湾が日本の植民地だった時代に九州出身の女流作家・千鶴子が台湾に渡り、そこで出会った名前が一文字違いの台湾人・千鶴と旅をしていく物語。 2人の心が通うシーンにはと...
エンタメとしてめちゃくちゃ楽しくて、でも考えさせられて唸らせられる、とっても面白い本だった! 読めてよかった〜! 台湾が日本の植民地だった時代に九州出身の女流作家・千鶴子が台湾に渡り、そこで出会った名前が一文字違いの台湾人・千鶴と旅をしていく物語。 2人の心が通うシーンにはときめき、描かれる食べ物の数々にそそられて、読んでて楽しかったなあ。 主人公はいきいきとして豪胆な性格で、そんな主人公の口語混じりの地の文で語られるエンタメ小説でありながら、千鶴子の都合よく台湾の美食や風景を消費しがちな側面も示されて苦く思う部分もあった。歴史から目を逸らせないこと、そして無意識にどこかでこういう態度を自分はしているのではないかと自戒させられながら読んだので。 そして何より、これから読む方にはぜひあとがきまでしっかりと読むことをおすすめします!
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
6月に初めて台湾に行くのと、Twitterで面白いと話題になっていたのを見て興味を持ち、一気に読んだ。 シスターフッド的小説で、美味しいものを食べて台湾を満喫するお話かと思ったら、日本人として何回も頭を殴られるというか、全く意識せずに大切だと思いたい相手の気持ちを、大切な文化を、下に見てしまう、見ていることにも気付かない傲慢さというか、とにかくなんかものすごく、悲しいとは違うんだけど、切なさに近い感情で胸がいっぱいになった。 最後、後書きに現れた著者の名前に涙が溢れてしばらく止まらなかった。千鶴さん、夢が叶ったね。
Posted by
昭和初期、台湾を訪れた日本人作家と台湾人通訳のやりとりを通して台湾と日本の関係を考える。美味しそうな食べ物がたくさん。複雑な台湾の民族を反映して食文化も様々。
Posted by
昭和13年。台湾。 日本人作家と台湾人通訳。 台湾縦貫鉄道で旅しながらの次々と出てくる台湾料理に台湾へ行ってみたくなるのだけど、歴史的な台湾と日本の関係や、国の関係によっての内地人・本島人の関係性。 作家・千鶴子と通訳・千鶴の関係もまた当時の台湾と日本の関係性のように対等にはなれ...
昭和13年。台湾。 日本人作家と台湾人通訳。 台湾縦貫鉄道で旅しながらの次々と出てくる台湾料理に台湾へ行ってみたくなるのだけど、歴史的な台湾と日本の関係や、国の関係によっての内地人・本島人の関係性。 作家・千鶴子と通訳・千鶴の関係もまた当時の台湾と日本の関係性のように対等にはなれずもどかしい。 ただ台湾料理を食べ歩くストーリーではなく、様々な人間模様が見られ、植民地時代の台湾の情景がとてもよく描かれていたように思う。 そして……台湾料理、おいしそう(ㅅ´꒳` )
Posted by
祝!翻訳大賞ノミネート。すばらしかった。読めて良かった。本当に。 読んでいて感じたこと、思ったこと、悩んだこと、悲しかった、嬉しかったことはすべて、あとがきにかかれていた。盛大に頷きながら…答えの出せないことだということも。だからこそ、小説が書かれるのだということも。本当に素晴ら...
祝!翻訳大賞ノミネート。すばらしかった。読めて良かった。本当に。 読んでいて感じたこと、思ったこと、悩んだこと、悲しかった、嬉しかったことはすべて、あとがきにかかれていた。盛大に頷きながら…答えの出せないことだということも。だからこそ、小説が書かれるのだということも。本当に素晴らしい方々だ。"台灣漫遊錄"のあとがき、日本版あとがき、翻訳者あとがき…さいごまで、本当にすばらしかった。 ここからは自分語りで 大学時代、教授にくっついて観光学を学んだり、学会に出たりした時期がある。観光やら、万博やら、の歴史なんかを学んだりもして、なんて、なんて傲慢な、植民地主義的な行動なのだろう…!と、嫌悪感を感じたりもした。民俗学と、民族学、社会学なんか、いろいろ知ったかぶって、民俗学的に、知るんだ見るんだ…と。青い,青い…(照)そうして色々試行錯誤した、でも結果、"お客さん"でしかなかった自分。その後開き直って中央アジアや台湾へ旅行もしたが、やはり自分は"旅行者"でしかなくて。それにもどかしさや、さみしさや、言葉を覚えられない自分への苛立ちや…千鶴さんと、千鶴子さんと旅することで、あの時感じたような、自分の、理解っていなさ、のようなものと、あたらめて対峙した。そしてその自分をなんだか、ぎゅっと抱きしめたくなった。 でもなんで、たべものの名前がずらずら、並んでいるだけでお腹がすくのだろう?それもそのはず…池波正太郎大先生を参考にしたとか。なるほど、うまい。彼の食のエッセイが好きすぎて、学生時代、読み漁ったことも、思い出した。ぐうぐう。小説は一編しか読んだことがないのに…エッセイはほぼ、読んだ。なんでだろう? そうして、懲りずに、また旅に出たくなった。 絶対に、台湾へ行き、食べます。鹽酥雞を!
Posted by
2024年2月21日図書館から借り出し。2月24日に読了。久しぶりに残りページが少なくなって、もったいなくて読み残すということを味わった。 著者は台湾在住の双子の姉妹、残念ながら妹さんは2015年に30歳の若さで癌で亡くなったが、現在もなお楊双子という筆名を使っているようだ。 台...
2024年2月21日図書館から借り出し。2月24日に読了。久しぶりに残りページが少なくなって、もったいなくて読み残すということを味わった。 著者は台湾在住の双子の姉妹、残念ながら妹さんは2015年に30歳の若さで癌で亡くなったが、現在もなお楊双子という筆名を使っているようだ。 台湾というと、東日本大震災時の多大な支援で親日国と思われているようだが、日清戦争後の下関条約により1895年に日本の植民地とされ、1945年の敗戦まで約半世紀にわたって日本の占領を受け、言葉も宗教も押し付けられた歴史があるので、複雑な思いがあることを台湾人の同級生からずいぶん昔に聞かされたことがある。 この小説は、昭和13年に台湾を訪れた日本の女流作家と通訳として同行した女性の食べ歩きの旅行記の体裁を取っている。二人とも知的素養は高いので、二十代とは思えぬセンスのある会話を続けながら美食を楽しむ。 作家はリベラルな考えの持ち主で、帝国主義日本の植民地政策には反感を持ち、通訳の台湾人に対する差別的な扱いには憤慨し、二人は友達だと信じ切る。 しかし、それは占領者の傲慢に過ぎなかった。 日本の植民地経営により台湾は豊かになったという日本人も多くいるが、「善意からの援助であっても、基本的にはただの傲慢にすぎない」、「この世界で、独りよがりな善意ほど、はた迷惑なものはございません」。 もう一方で、作家と通訳の女性二人は深い友情でつながっていて、訳者あとがきでは一種の百合小説ともされている。戦前の女学生の間では女性同士の恋愛というか憧れみたいなものをエスと言っていたようだ。その言葉は、母親と女学生時代の同級生の家に連れられていったときに聞かされ、あなたのお母さんは、下級生からいっぱい付け文をもらっていたのよと言われたことを思い出した。現在のレスビアンといった過激なものではなかったとは思うが。 なお、この翻訳は三浦裕子さんと言う方の卓抜した日本語で、極めて読みやすいものとなっていることに触れておかなくてはいけない。日本語能力が極めて高い方と感心する。
Posted by
●=引用 ●「美鳥さんが言いたいのは、善意からの援助であっても、基本的にはただの傲慢いうこと?」美島は煙に包まれたまま、しばし黙ったのち、言った。「この世界で、独りよがりな善意ほど、はた迷惑なものはございません」 ● 私はいつも、植民地に対する帝国の偏見、女性に対する男性の偏...
●=引用 ●「美鳥さんが言いたいのは、善意からの援助であっても、基本的にはただの傲慢いうこと?」美島は煙に包まれたまま、しばし黙ったのち、言った。「この世界で、独りよがりな善意ほど、はた迷惑なものはございません」 ● 私はいつも、植民地に対する帝国の偏見、女性に対する男性の偏見、本島人に対する内地人の偏見 について批判してきた。こんな世間の馬鹿馬鹿しさを嘲笑し、抗議してもいた。だが実際には、私自身が世間の塵にまみれ、自分の心に潜む傲慢や偏見に気付いていない、凡俗な人間だったのだ。台湾についての原稿を何本も書き、台湾旅行の見聞をべらべらと語っていた私は、その実、この島を本当に理解したことも、本物の愛情を抱いたこともなかったのだ。それだけではない。「この島の、まだ失われていない本来の姿を記録したい」――そんなことまで豪語しながら、出来上がったものは、内地人旅行者のしぐさのまま、深く思索することなく徒然に書き散らした「台湾漫遊録」だ。こんなもの、私がただ本島の上っ面だけを俯瞰していた証拠にしかならない。 ●小説の中で描いたトンネル、鉄道、建築、自然の景観などの風景の多くは、時の流れと共に 失われ、今では当時の姿を見ることはできません。今日の読者に、文章を通じて過去の風景に思いを せてもらいたく、敢えて選んだのです。一方、食べ物についてはその逆で、小説に登場させたほぼすべての食べ物は、現代の台湾でも味わえるものを選んでいます。
Posted by
主人公の何かがイラッとするのを言語化できなかったけど、最後まで読んでやっと理解する 自分も気をつけよう 台湾の食文化を知っていたらもっと楽しく読める そして確かに、菜尾湯を食べたところで勝手に読み終えたら、この物語の肝心な部分をつかみ損ねる
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
作品の構造がお見事 あとがきの最後の最後まで読むべき作品 実際に旅をしているような気持ちで読み進めました 出てくる料理が馴染みのないものでどんなものかなと想像しながら読むのが楽しかったし、恵まれた立場の人間のダブルスターダードや無自覚の傲慢さに身に覚えがありキュッとなったりも 良い読書体験でした
Posted by
台湾×グルメ×百合!と来たら、ほっこりコメディだと思う人が多いかもしれない。 しかし、この小説はそんな幻想をハンマーでぶっ叩いてくる歴史物語だった。 結末はほろ苦いのだが、それがより強い読後感を残していると思う。 日本統治下の台湾で出会った、『内地人』の千鶴と『本島人』の千鶴。...
台湾×グルメ×百合!と来たら、ほっこりコメディだと思う人が多いかもしれない。 しかし、この小説はそんな幻想をハンマーでぶっ叩いてくる歴史物語だった。 結末はほろ苦いのだが、それがより強い読後感を残していると思う。 日本統治下の台湾で出会った、『内地人』の千鶴と『本島人』の千鶴。二人は作家と通訳として出会い、鉄道で旅をしながら台湾の美味しいグルメを味わっていく。日本人の青山千鶴は、台湾人の王千鶴と友だちになりたいのだが、彼女はいつも仮面を付けているようで壁がある。 支配者と被支配者である二人の身分は明確に違う。日本人の千鶴が「友だちになりたい」と言うとき、台湾人の千鶴は「わかりました」と答えるしかない。しかし、青山千鶴はその権力勾配に気づかない。 『弱い立場』である王千鶴を勝手に保護者のように守ろうとする、大日本帝国の統治に嫌悪感を示す一方で鉄道や建築物などが新しくなったのは日本のおかげ、作物の生産量が増え美味しくなったのは日本のおかげと無邪気に言う、台湾の景色信仰が奪われたことに気づきもしない、珍妙な動物を面白がるように台湾の習俗を上から品評する──青山千鶴の言動には、アイデンティティを奪われた被植民地の人々の苦しみに気づかない統治者の傲慢さが溢れていた。その残酷さは、王千鶴を傷つけ続け決定的な断絶を生んでしまう。 それでも、王千鶴も青山千鶴と旅をし、いっしょに台湾のグルメを食べることを楽しんでいたことも真実なのだ。許せない感情と愛情とは時に同居することもある。 役者あとがきで紹介された筆者の「私は、愛で乗り越えることが困難なものであればあるほど、逆に愛に近いものだと思っています」という言葉に胸がいっぱいになる。 台湾は親日国だと無邪気に言う人たちは、台湾が日本に統治された歴史を考えたことがあるのだろうか。日本人として加害の歴史を学び忘れずにいなければいけないと改めて強く思わされた作品だった。
Posted by