オープン・ウォーター の商品レビュー
ロンドンで暮らす「君」の「彼女」との出会い、黒人として暮らすことの苦しさを描いた小説。 社会背景や文脈を理解していない私には入り込みづらかった。 主人公を「君」と呼び、俯瞰して語るような文体のとおり、主人公と社会背景を共有している人が自分や周りの人と重ね合わせて読むというのが想定...
ロンドンで暮らす「君」の「彼女」との出会い、黒人として暮らすことの苦しさを描いた小説。 社会背景や文脈を理解していない私には入り込みづらかった。 主人公を「君」と呼び、俯瞰して語るような文体のとおり、主人公と社会背景を共有している人が自分や周りの人と重ね合わせて読むというのが想定された読み方なのかも。
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翻訳は良かったと思うが、おそらく原文だとより詩的な雰囲気が出ていて、これを日本語で表すのはそもそも難しいのかもしれない。あるいは10代の頃に読んでいれば感想も違っただろうと思う。
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アフリカ系のアイデンティティに誇りを持つのはおおいに結構なんだが、そういうのは地域の寄り合いでやるべきである。やっぱ、最初に「見せるべき芸術品」が前提で、そこにメッセージ込めるのはいいんだけど、またこの作家も、大した中身無くて、ねぶた祭りの山車みたいなことになってんだよなー。2時...
アフリカ系のアイデンティティに誇りを持つのはおおいに結構なんだが、そういうのは地域の寄り合いでやるべきである。やっぱ、最初に「見せるべき芸術品」が前提で、そこにメッセージ込めるのはいいんだけど、またこの作家も、大した中身無くて、ねぶた祭りの山車みたいなことになってんだよなー。2時間で読めました。
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二人称視点で“きみ”と“彼女”を描くこの小説は、その柔らかく語りかけてくるスタイルと、“きみ”の大好きな小説、映画、アートそして音楽が作中に散りばめられているのも相まって、読み手を親密でプライベートな空気で包んでくれる。 「YOU」を“きみ”と訳したところも素敵だ。 ロンドンに住...
二人称視点で“きみ”と“彼女”を描くこの小説は、その柔らかく語りかけてくるスタイルと、“きみ”の大好きな小説、映画、アートそして音楽が作中に散りばめられているのも相まって、読み手を親密でプライベートな空気で包んでくれる。 「YOU」を“きみ”と訳したところも素敵だ。 ロンドンに住む若き黒人アーティストの心情に同化して寄り添うのが難しい僕にとって、「あなたは」と語られるよりも、少しだけ距離があって軽やかな“きみ”が心地よい。 だが、同じ境遇で痛みを共有している人々にとっては「YOU」はもっと強く心に響くのだろう。これは俺達の物語だと。 「ハッピーエンドはすべての人に訪れるわけじゃない。いつだって誰かが取り残される。そして私のいるこのロンドンという街では、今のところ、その誰かというのは若い黒人男性であることが多いの」とは、きみが愛読するゼイディー・スミスの作品を借りて語られる言葉だ。 夜道を歩くと警官に職務質問をかけられて身体検査をされ、店に入ると警備員が後をついてくる日常に、うんざりしながら、不安と怯えで心がすり潰されていく。 “自由って、誰もがいつでも感じられるものなのか。それとも、きみたちは時おり訪れる短い瞬間にしか感じられないさだめなのか。”という諦めと憤りの混じった呟き。 ロンドンの街中で、“死”が満ちている。 この気持ちをどうすればいい? 恐怖と怒りの中で、いつしか自分が醜く愛されるに値しないと、この身に起こることは自分の責任だと思うようになる。自分がただ黒人の肉体をした空っぽの入れ物にように感じるこの気持ちを? 見られているけど、見てもらえない気持ちを? 彼女はきみの恐れを、刻みつけられた痛みを受け止めたいと願うのに、きみは剥き出しの心を差し出せない。それは弱さではないのに。恥じることなど、何もないのに。 本書には、愛を信じたいという願いと、己をさらけだすことの恐れとの間で葛藤する気持ちを伝える、繊細で美しいフレーズが溢れている。 “誰かを知るってどういうことだろう、完全に知ることなんてできるのかな。そうは思えない。でもきっと、知ることの原点は知らないことで、知ることは理屈じゃない信頼から生まれるんだ。” “愛することは泳ぎながら溺れること。愛することはすべてであること、一部であること。血を流し、癒すこと。” “大海原-オープンウォーター-で口を開けば溺れてしまうけれど、口を開けなければ窒息してしまう。だからきみはこうして溺れてる。” そう、きみは泳ぎ出すことを、溺れることをもはや恐れない。彼女をちゃんとみて、彼女の瞳に映る自分をみることがきっとできるだろう
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人種差別という海外特有な感情。私は日本人で日本で暮らしているので想像に絶する。でもなかなか言葉では難しい、とくに外国人の作家の場合。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
男性主人公の黒人としての苦悩が色濃く出ていた。 黒人に対する警官のひどい言動が、アメリカだけではないことを知らなかった。戦争が起きているわけでも、奴隷制度が続いているわけでもない比較的自由な21世紀のイギリスで、人種差別があるゆえに、不自由で解放されていない人がいることに社会の暗さを感じた。 黒人であることで周りは「自分」を見てくれていない。一個人ではなく、黒人として認識されることを主張するこの表現は、まさにその通りとハッとした。主人公が、レンズ越しに被写体を捉える写真家であることに、どんな意図があったのかなとも思った。 映画の脚本かのように、一文一文が短く、淡々と場面が描写されている印象を受けた。また、主人公たちの名前は出てこず、「きみ」や「彼女」という表現を使うことで、同じ思いをしている黒人たちが、自分のことのように読み進められるであろう書き方は、自分にとって新しい発見だった。
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