狼の幸せ の商品レビュー
初めてのイタリア文学 まさか葛飾北斎の画集がイタリア文学に出てくるとは思っていなかったので驚いたと同時に日本の富士山ってかっこいいと思った 富士山とモンテローザの山並が重なる 山の麓では生活を営み山はただそこにあるだけ 葛飾北斎の富獄三十六景そのものである
Posted by
面白くて1日で読み終えた。本を読みながら、トーマチーズ、マリオ・リゴーニ・ステルンの小説に出てくる「マリオ風ジャガイモ」などを食べたくなった。 シルヴィアがファウストにプレゼントする「富嶽三六景」。この小説ではモンテローザ山麓の移り変わる四季と登場人物の日々の暮らしが「富嶽三六景...
面白くて1日で読み終えた。本を読みながら、トーマチーズ、マリオ・リゴーニ・ステルンの小説に出てくる「マリオ風ジャガイモ」などを食べたくなった。 シルヴィアがファウストにプレゼントする「富嶽三六景」。この小説ではモンテローザ山麓の移り変わる四季と登場人物の日々の暮らしが「富嶽三六景」のように描かれている。
Posted by
静かな雰囲気がとっても良かった。 富嶽三十六景が出てきて驚いたが、その後たびたび物語の中に登場してきてなんだか嬉しい気持ち。海外の作品だけど、富士山と葛飾北斎のおかげで登場人物や情景に親しみが湧いた。
Posted by
神々しく険しい山陵と様々な思惑が交わる麓の人々の生活、あとがきにもあるように富嶽三十六景のような美しい対比だった
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ミラノ生まれの作家、パオロ・コニェッティは子どもの頃から夏になると一九〇〇メートル級の山地にあるホテルを拠点にして登山や山歩きを楽しんできた。三十歳を過ぎた今も、モンテ・ローザ山麓にあるフォンターネという村に小屋を借り、その土地で目にした自然と生き物の様子やそこに生きる人々の飾らない暮らしぶりをノートに書き留めては創作の糧にしてきた。デビュー作『帰れない山』以来、作家本人を思わせる一人の男の目を通して、山で生きる厳しさと愉しさを描いてきたが、今回は四人の男女の視点を借り、山で生きる男と女の関係に迫っている。 小説はフォンターナ・フレッダのほぼ一年を扱っている。四季の移ろいとそこに暮らす人々の暮らしぶり、狼をはじめ、鳥や動物の生きるための工夫にも事欠かない。 ミラノに住む作家ファウストは四十歳。結婚まで考えていた十年来のパートナーと別れ、人生をやり直すため、フォンターナ・フレッダに戻ってきた。部屋を借り、山道を歩き薪を拾い、九月、十月、十一月と自由の喜びと孤独の悲しみをかみしめながら暮らしてきたが、切り詰めた暮らしにも限度があった。ミラノに帰れば仕事の伝手はあったが、別れた女性との間に残された種々の問題解決に時間を取られることは確実だった。 彼は村でたった一つの社交場である『バベットの晩餐会』というレストランの経営者バベットに自分が苦境にあることを打ち明けた。彼女は料理ができるならコックとして店で働けばいいと言う。こうしてクリスマスの季節も、フライパンを振ることになったファウストはその店で住み込みで働くシルヴィアという若い娘と出会う。彼女もまたよそ者で、何かから逃げるようにここに来ていた。二人が愛し合うようになるのはある意味で必然的だった。 フォンターナ・フレッダにはスキー・ゲレンデもあった。一年の三か月間、山男たちはリフトの切符売り、圧雪車の運転手や救助隊員に姿を変える。サントルソもその一人だ。仕事終わりにはバベットの晩餐会に集まってはグラッパを飲んで皆でわいわいやるのが常だった。話好きの山男と、自分の知らないことを聞くのが好きな新米コックはすぐに仲良くなる。 中篇小説といっていい本作は三十六プラス一章で構成されている。小説のなかにも出てくる北斎の『富岳三十六景』になぞらえてのことだ。ファウストの視点が中心だが、シルヴィア、バベット、サントルソの視点で語られる章も多い。視点が変わることで山に対する思いも人に対する思いも人それぞれであることがよく分かる。それぞれの人物にはそれぞれの人生があって、それが今の自分につながっている。一篇の小説を読みながら、四人の人物を主人公にした四篇の短篇小説を読んでいるような気になった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
モンテ・ローザの麓フォンターナ・ブレッダを舞台にミラノから離婚してやってきた作家ファウストと彼を雇ってくれたバベット、元森林警備隊員のサントルソとウェイトレスのシルヴィア。この4人が関係を築き影響を与えあいながら変化していく。自然描写の息を呑むような美しさと綺麗事だけではないトイレ事情などの生活面での厳しさ。一年を山や森林の変化と狼の見え隠れする存在感で満たした文章の美しさ、ディネーセンに捧げられたよう気がしました。また北斎を意識した36章仕立て、富士山ならぬモンテ・ローザを背景に人間たちの営みが描かれユーモアにも優れています。
Posted by
前2作(帰れない山、フォンターネ)よりも薄い感じ。 山や山での暮らしの描写は変わらず生き生きとしていたが、薄いと感じたのはなぜだろう。 時間をおいて、もう一度読み返してみたい。
Posted by
日本でいうところの"黄昏(誰そ彼)時"、あるいは"彼は誰時"に該当する言葉として、イタリアでなくフランス語ではあるが、"犬と狼のあいだ"という表現が当地にはあると知り、いかにもアルプスの山々を身近に仰ぐ民の言葉らしいな、...
日本でいうところの"黄昏(誰そ彼)時"、あるいは"彼は誰時"に該当する言葉として、イタリアでなくフランス語ではあるが、"犬と狼のあいだ"という表現が当地にはあると知り、いかにもアルプスの山々を身近に仰ぐ民の言葉らしいな、と妙に感服した。 また、標高が100m上がれば気温は0.6℃下がる、と言われるが、なるほど主人公が考えるように垂直移動による気候の変化もそれ自体を旅と捉えれば、私たちの人生をもう少し豊かにすることもできるのかもしれない。 モンテ・ローザを富士山になぞらえ、作品全体を富嶽三十六景に見立てて構成している様が、日本人にとっては嬉しいサプライズのようでもあり、まさしく日めくりの絵画を鑑賞するが如く味わうことができる。 …が、個人的には細かく章立てせず、一つの大きな物語として悠々と紡いでくれる方が好みだったかな…。 俗世間でこなさねばならぬタスクの合間の慌ただしい時や、何某かの悩み事等に脳内の大半を占められている時ではなく、心身ともに余裕がある時に、じっくりどっぷり浸かることこそがふさわしい作品だと感じた。 「凶暴なまでに違和感のある、不快な眺めだった。ロープウェーの設備も、落下防止用のネットも、整地の跡も、むきだしのコンクリートも、何もかもが醜悪だった。」
Posted by
山に登りたくなる、山の麓に住んで暮らしてみたくなる作品。淡々とした文章だけど、その文章や表現の中に作者の山に対する気持ちや山に関わる人のことが描かれていた。 心を穏やかにさせてくれる作品だった。再読したい。
Posted by
街の暮らしに疲れた中年男が標高2000メートル近い山村に逃れた。男の職業は作家。 絵にかいたようだ・・・。 山村のバルでコックの職を得た彼は、彼同様街暮らしから逃れた若い女性と付き合うことになった。 中年男のファンタジーだ・・・。 四季を通じた自然の描写、山に暮らす...
街の暮らしに疲れた中年男が標高2000メートル近い山村に逃れた。男の職業は作家。 絵にかいたようだ・・・。 山村のバルでコックの職を得た彼は、彼同様街暮らしから逃れた若い女性と付き合うことになった。 中年男のファンタジーだ・・・。 四季を通じた自然の描写、山に暮らす人々の生業と生活の描写、美しく描かれている。絶滅の危機に瀕している狼の控えめな描写がタイトルのもとになっているが、結局中年男のファンタジーだな。
Posted by
- 1
- 2