鯨オーケストラ の商品レビュー
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『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』に続く大好きなシリーズもいよいよこれで完結。 少しずつゆっくり読もうと思っていたのに、一気に読んでしまった。 キッチンあおい、ミユキさん、ロールキャベツ、サユリさん、土曜日のハンバーガー、鯨オーケストラ、チョコレート工場、太郎君、ゴー君、流星新聞、カナさん、そしてアキヤマ君。 お馴染みの人や場所、食べ物などが徐々に繋がって、穏やかな優しい世界が楽器の音が重なるように果てしなく広がっていく。 「人生はね、『なんて短いの』と思ったり、『なんて長いの』って思ったりするものなのよ。人によって違うし、そこまで生きてきた時間によって、短いと思ったり長いと思ったりするの。でも、わたしは、そのどっちでもあると思っています」 「あとまわしにしては駄目なんです。人生は思いのほか長いものだけれど、長いって思うと、ついあとまわしにしてしまうから、やっぱり人生は短いって思ったほうがいいの。でもね、そうなると今度は、『こんなことしてる場合じゃない』って余裕がなくなってしまうでしょう?それは、もっと駄目です。急いで生きてしまったら、何もいいことがありません」 「ちょうどよく歩いて行くんです。のんびりとでもなく、急いでもなく」 「時間は過ぎていくのではないのです。どこかへ消えてしまうわけでもありません。すべての時間は自分の中にあり、それが少しずつ積み重なっているんです」 「何かが強引に行われるとき、そこにはきっと、意味があるのです」 「人と別れるのは自分で決められるけれど、誰かと出会うのは自分で決められないのよ。つくづく、そう思う。だから、人生は面白いんだって」 相変わらず心に響くセリフの多いこと。自分の現状と合わさって何度も泣きそうになった。 物語の展開に喜ぶ反面、これでみんなと会えなくなると思うととても寂しい。 けれどこれは終わりではなく、新たな始まり。 大好きな懐かしい人たちが、そっと静かに始める物語を噛みしめつつ、心地よい余韻にこのままいつまでも浸っていたい。 ユーチューブで『G戦上のアリア』を聴きながら、これを鯨オーケストラのみんなとソガ君が一緒に演奏したんだな、と厳かな気持ちに酔いしれながらしみじみ。 やっぱりこの世界観が好き。後日談でもいいのでみんなのその後の物語もぜひ描いてほしい。
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初めての作家さん。 読みやすい。 鯨の絵、観てみたいです。 土曜日のハンバーガーもぜひ食してみたい。
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吉田篤弘作品、読んだつもりになっていたけど、実はこれが初めてだった。 「流星シネマ」「屋根裏のチェリー」に連なる物語だと読んだ後に知り、順番に読めば良かったとちょっと後悔。 でも、もちろんこの作品だけを読んでも十分に楽しめる。 読みやすくサラサラと入っていく感じの文章は心地よく...
吉田篤弘作品、読んだつもりになっていたけど、実はこれが初めてだった。 「流星シネマ」「屋根裏のチェリー」に連なる物語だと読んだ後に知り、順番に読めば良かったとちょっと後悔。 でも、もちろんこの作品だけを読んでも十分に楽しめる。 読みやすくサラサラと入っていく感じの文章は心地よく、何のストレスもなく読み進められる。 「涙腺崩壊」とか、「大どんでん返し」といった仰々しい宣伝文句とは無縁の気を衒うことのない、静かで淡々とした物語の運び方が心地よく、一枚の絵が導く小さな奇跡のような出会いが胸を温かいもので満たしてくれる。 「時間は過ぎていくのでは無いのです。どこかへ消えてしまうわけでもありません。すべての時間は自分の中にあり、それが少しずつ積み重なっているんです」‥‥歳をとるのも悪くないなって思わせてくれるいい言葉。
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どう表現したら良いのか分からないけれど、篤弘先生の世界はひとつの(一枚でもなく、一冊でもなく、もちろん一団体とかでもない)大きな枠のない四次元に広がっている宇宙のようなモノで(尚かついまだに広がり続けている)その中のほんのひとつまみを一冊の本にして表現しているに過ぎないのではないか… いつまでも終わらなければイイと願いながら手に取る本たちだけど、最終のページは自ずとやってくる。 ならば、広がり続ける宇宙のような、そのほんの一部分を目にしているだけと自分に思い込ませないと。 これまで出会ってきた人たち、街並みや食堂とか、ラジオから聞こえる声や街なかに流れる川。いろんなモノが愛おしく優しく思える。広がり続ける世界、宇宙の私もまたひとつになりたい。 読み続けるといつかは本という二次元の世界に入れるのかもしれない。 いえ、これらの本は四次元でしょうね。
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初めて読む作家さんだったが、面白かった。 小さなきっかけで始まり、それは川のように音のように、過去から未来に繋がっていく。 爽やかな小品の連なりは、連続テレビ小説のよう(笑)
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本作は、『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』に続く物語ですが、単独でも吉田篤弘さんの世界観を楽しめます。順に読むと、確かにより広く深く堪能できると思います。 読み始めてすぐに、「あ〜吉田篤弘さんだなぁ」と、静かな世界に没入できます。本の静寂の中に、筆者のつぶやきにも似たいくつ...
本作は、『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』に続く物語ですが、単独でも吉田篤弘さんの世界観を楽しめます。順に読むと、確かにより広く深く堪能できると思います。 読み始めてすぐに、「あ〜吉田篤弘さんだなぁ」と、静かな世界に没入できます。本の静寂の中に、筆者のつぶやきにも似たいくつもの声が、紙の上から伝わってくる感覚です。不思議な安心感に包まれ、穏やかな気持ちで読み進められます。 大きな事件や出来事も、感動的な結末もありませんが、何気ない日常生活の機微を焦点化し、淡い希望の物語を紡いでいきます。 廃墟や古いものも登場しますが、寂寥感もなく、むしろアンティーク、スタイリッシュなイメージで、光沢のないマットな質感と言えばよいか、そんな落ち着いた夜の雰囲気を与えてくれます。 本作の主人公・曽我哲生さん、『流星シネマ』の太郎さん、『屋根裏のチェリー』のサユリさん始め、多くの人がリンクしつながっていきます。でもよくよく考えると、人にはそれぞれ(他人にとっては取るに足らない)人生があり、パラレルに進行しています。吉田篤弘さんは、その交錯する見えない部分にこだわって、ささやかな物語を滋味あふれる形にしてくれているようです。 全14話は比較的短く、一気読みするよりは、就寝前に少しずつ、がピッタリだと思います。
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鯨でここまでお話が繋がるとは。 モカシンの作品を見てみたいと、おもわず検索してしまいました(笑) もちろん、想像の中でも十分にこの作品の世界が広がりました。 いろいろな偶然が人や歴史を繋げている、不思議なようで人生ってそんなものなんだろうって前向きな気持ちになりました。
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ちびちび読んでたのに、終わってしまった 「生きている間に触れ合わなかったものは、その人の天国に存在しない」 なるほど、「詩」を書けと言うわけで 彼の行方を祈り、言葉と、繋がりを信じる
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