丸の内魔法少女ミラクリーナ の商品レビュー

村田沙耶香(著者)

2024/02/21

村田沙耶香の作品をこれまでいくつか読んできて思ったことは、女性特有の生々しさを描くのが上手だなということ。
今回も非常に生々しい…というか生臭い？作品でした。

４作ある中で一番好みだったのはタイトル作品でもある「魔法少女ミラクリーナ」でした。
同じ事はやってなくても、ぬいぐるみの相棒がいたり、キラキラしたコンパクトを変身アイテムとして持ち歩く気持ちはちょっとわかります。
私も実は魔法少女⭐︎という気持ちで過ごしたらちょっとは嫌なこともやり過ごせるかも…と思いました。

他の話はあまりに生臭く感じてしまい、ちょっと苦手です。性別が無くなったり、感情が平坦になったり、ちょっと宗教めいた団体が出てくるあたりも村田沙耶香らしいなと思いました。

2024/01/29

図書館本

なんということでしょう。36歳、魔法少女ミラクリーナ。幼き日の魔法少女ごっこを心の中で楽しく続けている大人の女性。

日常を面白おかしく料理して生きていくことで、平凡な光景はスリリングになって、退屈しない。

秘密の花園　は初恋相手を監禁。見切りつける？

無性教室　性別のない世。
変容　怒りのない若者たちと、怒りを原動力にしてきた古い世代。

どの短編も、村上沙耶香ワールドで、マジ、いい。すき。

2024/01/24

村田ワールド全開の四篇。
すごく読みやすいのだけれど、確実に、私の受け入れている常識というものをぐらぐらと揺さぶってくる。信用していたものが実は確かなものでは無かったというような、拠り所がなくなったような気持ちになる。それが癖になるのだ。
時代の空気や流れに迎合して人間は形作られているのかもしれない。皮肉たっぷりに過去と未来を書いていて、そこに登場する人間たちは滑稽で愛らしい。
表題作が特に好みだった。つまらない大人の日常をなんとか生きていくために、それくらいの妄想はあってもいいのかもしれないとすぐに思った。それで周りに迷惑をかけずに自分が楽しいのなら、魔法少女でもなんでも変身すればいいのだ。イノセントな部分はいつだって持ち続けていい。
「中二病も、80歳まで貫けば真実になるんだよ」というセリフが好き。
『変容』の「まみまぬんでら」も、違う意味で良かった。何も分からない。

2024/01/22

文庫化を心待ちにしていた作品。

特に「変容」がお気に入り。
性格って生まれ持った部分というより
社会の中で関わる人や自身で本から得た知識など
後天的なものだと思うのでこんな世界もあり得るなあ、
と思ったりしました。

著者の作品は考えさせられることが多く、
そんなことある？！みたいな面白さもあって大好きです。

2024/01/14

私たちが常識と思っていることは時代の流れや情勢で簡単に変わる儚いものなのに、それを当たり前のように妄信してる自分がいるな、と気付く。

特定の感情の禁止や属性の禁止とか、「村田沙耶香ワールド全開だぜw」って笑いながらスイスイ読めるけど、本当はみなどこかで抱いている不安を静かに提示してくる。
ひとしきり楽しんで笑ったあと、しばし真顔になるしかない。

2024/01/04

絶妙に不思議な世界だけど、しっかりパンチ効いてる。面白かった。

・丸の内魔法少女ミラクリーナー
魔法少女に変身して社会人を頑張ってる主人公には好感がもてた。友人のクソ彼氏はネット警察に通ずるものがある。

・秘密の花園
初恋の男の子を監禁する話。幻想は独り歩きして綺麗なものになっていくから、ぶち壊すにはその人の汚い所を見るのが1番、というのが面白かった。

・無性教室
高校生という思春期真っ只中で、性がない環境というのは斬新だった。変だけど清らかな恋愛に感じた。

・変容
「怒り」がなくなって、「なもい」が流行る。その時代の性格は服の流行と同じように誰かに決められている。
「エモい」とか「さとり世代」「z世代」など、これ本当のことなのでは？とドキドキした。

2023/12/31

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』
小学生の頃流行った返信アニメに憧れた主人公が、大人になった今でもコンパクトで変身し世界を救う妄想を密かに続けているお話。

もっと変身ごっこにのめり込んでいるのかと思っていたら主人公はとても冷静に自分を俯瞰していました。その上で、残業が発生した時こっそりトイレで変身コンパクトを開き変身(する妄想を)してにこにこ仕事を乗り切っているのです。
日常をかわいく装飾してご機嫌に生きている主人公に妄想の素敵な使い方を習ったようでした。

『秘密の花園』
初恋の人に憧れて恋愛ができずにいる主人公が、初恋を葬るために初恋の相手を監禁するお話。

初恋の相手を主人公は、
「早川くんは私の少女漫画であり、私のエロ本でもあった。ときめきへの憧れと、清潔な性欲が(中略)膨らんでいった。」
これなんか、、生身を知らない初恋の相手にももちろん、アイドルに対しても似たとこある気がしました‥。あくまでも清潔で想像上のもの。
大事にしたいような、大人になりたいような絶妙な気持ちを思い出しました。

『無性教室』
学校内で性別を見せない校則があるなか、主人公は性別不明の友人に恋します。相手の性別がどちらなのか気になって‥というお話。

性別でなく相手を好きで、何をしているかではなく通じ合って体温に触れられた時がセックスだと知る主人公たちが清らかでした。

『変容』
介護が終わり社会復帰した主人公は、自分が知らないうちに知らない言葉や思想、性格が流行っていることを知り置いてけぼりな状況に戸惑うお話。

ひとつ言葉が流行って仕舞えば、一度その言葉の感覚を掴んで仕舞えば、ずっと昔からその感覚を知っていたようにしっくりと馴染み以降よく使うまでが短くすごくわかりやすかったです。そんな感じで流行語を使っているんだろうなあ。
自分が将来五十川さんになるのか、気になります。

2023/12/28

何でこんな凄いこと考えられるんだろう。
これはいつも村田沙耶香さんの本を読んで思う事。

・丸の内魔法少女ミラクリーナ
一見普通の会社員が、変身すると歴27年ベテラン魔法少女！
仕事辛いなぁと思った時、私も魔法少女に変身したいって正直思ってしまった。しかもたまたまミラコレのコンパクトを持っていたわけで！(魔法少女変身グッズ)

・秘密の花園
好きな人を監禁する話。
誰かの事を考えすぎるとその人そのもの、ではなくわたしの中の想像のその人、が好きになっている。わかるわかる。

・無性教室
性別は無しとされている学校。私たちは無意識のうちにこんなに性別に左右されているかも！？と思った。見た目の性別、心の性別、体の性別、無性....

・変容
ファッションや言葉だけではなく性格の流行を決める社会。喜んで深夜まで残業する性格が提案された時は吹き出して笑ってしまった！！笑
社会にはさまざまな変容がある中でどれだけ自分の意思を持てるのか...

2023/12/03

表題作がシスターフッドやってて良い。松岡茉優に演じてもらって映像化してほしいかもしれない。「続けるわけねーだろ！！」って松岡茉優に絶叫してほしい。

2023/11/24

村田沙耶香さんっぽくて面白かった。
ほんとにちょっと違ったら実現してたかもしれない世界観に引き込まれる。

ファッションの流行を決めるように
性格の流行を決めるみたいなのは
ほんとにありそうだなと思った