1,800円以上の注文で送料無料

遠巷説百物語 の商品レビュー

4.1

17件のお客様レビュー

  1. 5つ

    5

  2. 4つ

    7

  3. 3つ

    3

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/05/21

1話ごと完結なので、読んでいる間は何となく毎回スッキリしながら読むけど、残り僅かになるに連れて寂しくなってくる。いつの間にか自分も仲間のような気持ちになっていて、みんなと離れてしまうのが寂しい。そんな気持ち。

Posted byブクログ

2023/05/17

・京極夏彦「遠巷説百物語」(角川文庫)を読んだ。「巷説百物語」シリーズの文庫本最新刊であるらしい。6冊目である。あちこちで百物語をやつてきたやうだが、これは遠野である。ただし、書名は「遠野」ではなく「遠」一字である。柳田の「遠野物語」とも関係あるらしいが、私は確認して ゐない。京...

・京極夏彦「遠巷説百物語」(角川文庫)を読んだ。「巷説百物語」シリーズの文庫本最新刊であるらしい。6冊目である。あちこちで百物語をやつてきたやうだが、これは遠野である。ただし、書名は「遠野」ではなく「遠」一字である。柳田の「遠野物語」とも関係あるらしいが、私は確認して ゐない。京極に「遠野物語」訳があるのだから、それくらゐはおてのものであらう。本書は 「お歯黒べったり」に始まり「出世螺」に終はる全6編である。全体が緩やかにつながつてゐる。個々の物語は独立してゐても、言はば悪役以外の登場人物は共通する。しかも、その構成は「まず冒頭に口承される『譚』ーーいうなれば昔話が据えられ、その元となった巷の噂、その生まれた要因と種明かしが提示され、最後に『話』が『譚』へと昇華する瞬間を予感させて終わる。」(澤田瞳子「解説」594頁)となつてゐる。これを今少し分かり易く言 へば、「譚」の後に「咄」があり、ここで情報提供者(?)の乙蔵が出てきて何が起きてゐるのかを話す。次の「噺」で事件が起き、最後の「話」で謎解きが行はれて解決する。いづれも見事なワンパターンである。京極の短編にかうも見事なパター ンがあつたのかどうか。ただ最後の「出世螺」だけは全体の締めといふ感じで終はつてゐる。ここだけは「『話』が『譚』へと昇華する瞬間を予感させ」ることはなく、極めて現実的に終はる。ただし、それ以前の部分がそれに当たる。そんなわけで、この物語、私には京極の偉大なるワンパターンを確認させてもらへた。と同時に、それがいかに心地よいものであるかも確認できたのであつた。 ・本書は例の如きの京極の文章である。改行多し、会話文多 し。会話文はむしろ長めであるのかもしれない。ところが地の文はさうではない。1文1行も 多く、短めの文章がいくつかの改行もある。たぶんこれで段落なのだらう。「それは違っていた。(改行)違うのなら、識っておく必要はあると祥五郎は考えた。」(194頁)違ふといふ事実に続いて主人公が考へる。普通の人はここで切らうとは考へないと思ふ。極端な話、「それでも。」「しかし。」といふのが次のページに見える。これがこの人のスタイルだと言へばそれまでだが、個人的にはかういふのは好きではない。空きが多いから見易いとは言へる。見易ければ良いといふものではなからう。大江健三郎とは逆の行き方をした文章である。大江のは段落も文章も長すぎる。どこまでも続いていつまでも終はらない。こちらはどうだ。すぐに終はる。一段が短い。その方が読み易い。これが心地よさの一因かもしれないとは思ふ。実際、大江のは徐々に苦行に近くなつていつた。それ は絶対に心地よさにはつながら ない。文章のリズムもある。この人の文章とその思考もまたワンパターンである。それが慣れ てくると心地よいのかもしれない。登場人物もまた同じ人物が 出てきたりする。又市とはどこ かで聞いた名前ではないか。こ れが最後に出てくる。もしかするとこの部分だけでまた別の作品が構想されてゐるのかもしれないが、とりあへず最後は又市だけが遠野に残ることになるらしい。他は皆消える。この終はり、といふのは6番目の「話」 の後のことだが、も何かさはやかである。といふやうに、個人的な感想を書いてきたのだが、 要するにこれは京極の見事な作品だと言へる。更に個人的には、悪い意味では改行が多いのは原稿料を稼ぐためではないのかと思つたりする。私は改行は少ないほうが良いと思ふ。しかし、逆にそれがリズムを作ることにつながる。この後に今ひとつ「巷説百物語」があるらしい。気がつけばそれを読みたいものだと思ふのみ。

Posted byブクログ

2023/04/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

これまでとは全く異なる土地を舞台にしているのだけどシリーズに登場している人物はこちらにも登場(とはいえメインの二人を私はちょっとうろ覚えです……)最後にはあの人も。 というか『出世螺』のあの仕掛けは、シリーズではおなじみのあの人の技ですしね。 冒頭の語り、乙蔵、お前だったのか……となりました。 遠野物語には触れたことがないのだけど、読んでみたくなりました。

Posted byブクログ

2023/04/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

待ってました大好きなシリーズ 読む前から読み終わってしまうのが惜しくて 自分を焦らしていたのですが、我慢ができなくなりついに読んでしまいました。 このシリーズは、身分の外の人たちが どうにもならない困ったことを怪異に見せかけて丸くおさめてしまうお話です。 殺さずに悪を成敗する、必殺仕事人のような 情に厚く優しいお話。 最初のお話から遠野の迷家というパワーワード登場に、そうそうこんな世界観だった。と懐かしい気持ちになりました。 今回のキーマンの祥五郎さんが また百介さんとは違った人の良さが滲み出てました。 娶ったのではなく、添うたのである。 という一文が祥五郎さんの人柄を表していてとても好きでした。 でもやっぱり最後のお話は あの人登場に胸熱で、、、、 今は亡き小右衛門流のやり方で、しっかり締めくくることで、弔いとしての意味もあるのかなと思いました。 タネ明かしをしている軽快なやり取りが懐かしすぎてホント読み終わりたくなかったです。 おぎんさんが元気でいることも会話の中で伺え、次作は全員集合期待しています。 あぁ、読み終わってしまった。 また、又市さん達に会えるのを楽しみにしています。

Posted byブクログ

2023/03/21

遠野で巷に流れる噂話を集めることを命じられた宇夫方祥五郎。その中から、藩の存亡に関わる出来事が露見する。 遠野に昔譚があり、噂咄から噺(物語)へ、そして真偽を見定める話に。そして、宇夫方が筆頭家老に語る譚に。「はなし」がつながり、遠野に新たな譚ができる。 「はなし」に引き込まれる...

遠野で巷に流れる噂話を集めることを命じられた宇夫方祥五郎。その中から、藩の存亡に関わる出来事が露見する。 遠野に昔譚があり、噂咄から噺(物語)へ、そして真偽を見定める話に。そして、宇夫方が筆頭家老に語る譚に。「はなし」がつながり、遠野に新たな譚ができる。 「はなし」に引き込まれる。

Posted byブクログ

2023/03/12

とても考えられている構成だと思った。 人々は説明のつかない諸々をまとめて妖怪の仕業とし、噺(はなし)を創り上げてきた。 奇怪な出来事が起きる咄から始まる。 それを解決する話を出し、噺が出来たであろうストーリーを作る。 おもしろかった。

Posted byブクログ

2023/03/06

【短評】 多分10年振り位に着手する「巷説百物語シリーズ」の最新刊である。 どうにもならぬ人の世のしがらみを妖怪怪異に仮託することで解消する本シリーズ。 正直、事前知識はさっぱり抜け落ちていたが、思いの外すんなりと世界観に浸ることが出来た。そうそう、こんな感じだった的な安心感。 ...

【短評】 多分10年振り位に着手する「巷説百物語シリーズ」の最新刊である。 どうにもならぬ人の世のしがらみを妖怪怪異に仮託することで解消する本シリーズ。 正直、事前知識はさっぱり抜け落ちていたが、思いの外すんなりと世界観に浸ることが出来た。そうそう、こんな感じだった的な安心感。 全6話が収録されているが、基本的には同じ構造。起承転結よろしく「譚」「咄」「噺」「話」という4つの「はなし」で構成される本作の「型」をシリーズの様式美と捉えるか、紋切り型と捉えるかで評価は分かれるかもしれない。私は前者である。ただ、やや胡乱な表現になるが、このシリーズ、もう一歩グッと来る物語集だった記憶が強烈に残っている。全体的に落語的な面白さはあったが、涙が滲むような、心が震えるような、そんなお話に出会えなかったのが少々残念ではあった。 ①歯黒べったり ★★★☆☆ 巷説百物語ってこういう感じだったな、というのを思い出した。久しぶりの再読ということもだったが、期待していたものに出会えた嬉しさよ。「目鼻がなくなる」部分をかなりの力業で解決していてちょっと笑った。 ②磯撫 ★★★☆☆ 米取引を巡る一連の騒動。黒幕の目的が読めず、なかなかに引き込まれた。成程”完璧”だけが良質な謎ではないと。しかし凄い大仕掛だな。 ③波山 ★★☆☆☆ 全体的に無理があるような気がした。 ④鬼熊 ★★★☆☆ ハリボテの*で医者の目を掻い潜るのは不可能ではないのか、思った。しがらみからの解放という意味では綺麗な展開だったのでちょっと加点。 ⑤恙虫 ★★★★☆ 個人的には一番面白かった。仕掛けがシンプルであるのが気に入った。鮮やかなのが好み。疫病の蔓延という割と緊迫した展開が、良い感じの変化になっていたと思う。志津さんと大久保氏が己の状況の異常さに思い至る辺りが好み。 ⑥出世螺 ★★★☆☆ やっぱりあの人が出ると物語が締まるなぁというのは、この手のシリーズ特有の感想である。良いものは良い。ようやく主役のご登場といった具合。個人的には最終話はもう少し入り組んだ事情(と、そこからの解放)を期待したが、思ったより小粒の話に落ち着いてしまったかな。悪くは無いが、期待が少々高すぎたかしらといった印象。 次作「了巷説百物語」で完結とのこと。 今作はやや消化不良だったゆえ、嘗て味わった感動を期待して待つとしよう。

Posted byブクログ