月桃夜 新装版 の商品レビュー
好きな作家、遠田潤子のデビュー作。現代の海のはなしと江戸時代の奄美の鳥のはなしで構成されたファンタジー。「これがデビュー作か⁈」というくらい、素晴らしい秀作だ。 奄美の暗く、希望のない生活。囲碁という希望。禁断の愛に山の神、悪神。不思議な空気感と蜃気楼のように進む話。絶望で終わる...
好きな作家、遠田潤子のデビュー作。現代の海のはなしと江戸時代の奄美の鳥のはなしで構成されたファンタジー。「これがデビュー作か⁈」というくらい、素晴らしい秀作だ。 奄美の暗く、希望のない生活。囲碁という希望。禁断の愛に山の神、悪神。不思議な空気感と蜃気楼のように進む話。絶望で終わることなく、最後に前に進む道標を示す。 「この世の終わりで、また」
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個人的にとても好きだった。 ——濃く、そして哀切だ。 解説にそうある通りの印象。 結構狂気的な部分も感じるけれど、そこがよかった。 久しぶりに、ずるりと引きずりこまれたな、という感覚。
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こんなにも甘さのない愛の物語があろうとは・・・。 フィエクサとサネンの間にあるのは、愛とか恋とかいうより野性的な"ほしい、渡したくない"という原初の欲に思える。きびしい、絶望的な境遇の中では豊かな感情をともなう愛など、育みようがないのではないか。 そう思ってし...
こんなにも甘さのない愛の物語があろうとは・・・。 フィエクサとサネンの間にあるのは、愛とか恋とかいうより野性的な"ほしい、渡したくない"という原初の欲に思える。きびしい、絶望的な境遇の中では豊かな感情をともなう愛など、育みようがないのではないか。 そう思ってしまうと、この世の終わりが来るのを"希望"として待っているフィエクサの姿には、こわれてしまった哀しさしかみえない・・・。 と、まあ2人の関係性については今ひとつしっくり来なかったけれど。 砂糖を作らされ続けるヤンチュ、ヒザという身分の境遇、針突や碁への想い、山の恵みときびしさなど、隔絶された島でのことがゆたかに描き出されていて、夢中になって読んだ。 全く知らない歴史の一部分だったということも興味をひいたし、短く挟まれる現代パートにおいて、鷲が語るお話――という形になっているので、箱を除くような感覚だった。制度など史実を含むことを考えれば、きっとフィエクサとサネン、ミヤソたちのような少年少女もたくさんいたのだろう。苦しくやるせない気持ちが湧いてくる一方で、物語としての面白さもあるという、絶妙なバランスだった。
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本書は2009年の第21回日本ファンタジーノベル大賞受賞作にして、遠田さんのデビュー作でもある。単行本→新潮文庫nexに収められたのち、今回の再文庫化に伴い加筆修正されたそうだ。初読なのでどのように変わったのかは不明だ。 遠田さんの原点がファンタジーだったのは意外だが、結構が違う...
本書は2009年の第21回日本ファンタジーノベル大賞受賞作にして、遠田さんのデビュー作でもある。単行本→新潮文庫nexに収められたのち、今回の再文庫化に伴い加筆修正されたそうだ。初読なのでどのように変わったのかは不明だ。 遠田さんの原点がファンタジーだったのは意外だが、結構が違うだけで本質は紛れもない“遠田ワールド”だった。奄美大島を舞台に、債務奴隷として人間以下の扱いを受ける兄妹の過酷な生を描く。同じような兄妹の絆に悩む現代女性のパートと交互に展開する重層的な物語だった。
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ファンタジーノベル賞を受賞したデビュー作。 山の神のシーンなど、「ドライブインまほろば」にどこか似通った雰囲気もありながら、さらにファンタジックだ。 薩摩藩の支配下で砂糖を精製する奄美の島で、ヤンチュと呼ばれる奴隷の兄妹が成長していく物語。将来を悲観せずにいられないヤンチュの運命...
ファンタジーノベル賞を受賞したデビュー作。 山の神のシーンなど、「ドライブインまほろば」にどこか似通った雰囲気もありながら、さらにファンタジックだ。 薩摩藩の支配下で砂糖を精製する奄美の島で、ヤンチュと呼ばれる奴隷の兄妹が成長していく物語。将来を悲観せずにいられないヤンチュの運命に鬱屈した思いを抱えながら、血のつながらない兄と妹がお互いの存在だけに幸福を見出していく。 やっぱりファンタジーは物語に没頭するまでに時間がかかる。奄美の歴史や風土は興味深かったが、ほかの手法で読みたかった。
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