カッコーの歌 の商品レビュー
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こういうテーマは好き。ファンタジーも好き。だけど、こんな絶望的な展開は…と、暗い気持ちになり読むのが辛かった。ラストを読んで安心したので、もう一度最初から読み直そう。
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「嘘の木」の著者によるダーク•冒険ファンタジー。発表は「嘘の木」(2015)の一作前で「ガラスの顔」(2012)の次の作品が本書。(2014) 舞台は第一次大戦後のイギリス。11歳の少女トリスが意識を取り戻す。池に落ちた。記憶が混濁している。父と母と妹のペン。ペンはトリスを嫌っ...
「嘘の木」の著者によるダーク•冒険ファンタジー。発表は「嘘の木」(2015)の一作前で「ガラスの顔」(2012)の次の作品が本書。(2014) 舞台は第一次大戦後のイギリス。11歳の少女トリスが意識を取り戻す。池に落ちた。記憶が混濁している。父と母と妹のペン。ペンはトリスを嫌っている。耳元で声が囁く。「あと七日」だと。いったい何が起こっているのか分からない。母のもとには戦死した兄からの手紙が届き続けている。どういうことなのか…。 ティム•バートン(「ナイトメア•ビフォア•クリスマス」「シザー•ハンズ」などの作者)の描く世界と、通底するものを感じました。それは、両者とも"自分は何者なのか?"と悩む主人公の"自分探しの物語"だという点です。父•母•兄弟や姉妹の愛を求めて彷徨う主人公。しかし、そこには決して得られない断絶が横たわっています。 そして当然、登場人物たちの行動原理はエグい(笑)しかし、主人公トリスの、自我を取り戻す為に突き進む姿は爽快で読み応えがあります。トリスと行動を共にする二人の行動力もすごいし、アクションシーンも多いぶん、映画化したら面白そう。エンディングもけっこう衝撃的。「嘘の木」より、こっちの方が好きな人は多いんじゃないかな? …ダーク•ファンタジーは耐えられない人もいるだろうと思うので⭐︎は四つ。耐えられる人にはお薦めです!
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フランシス・ハーディングの邦訳2作目。前作「嘘の木」はファンタジーミステリだったが、今作は冒険ファンタジー。 池に落ちて記憶を失った少女トリス。その日を境に、毎朝耳元でカウントダウンが始まり、異常な食欲に悩ませられる。妹のペンは過剰なまでの憎しみを向けてくるし、死んだ兄の婚約者と両親の間にもトラブルがあるらしい。身の回りで一体何が起きているのか。。。 序盤は本当に何が起きてるのか分からないのだが、中盤にあることが判明してからようやく話の筋が掴めるようになる。そのことにより登場人物たちの見え方もガラリと変わってしまい、見事な転換。 終盤の父親に対する指摘が本当にもっともで。いわゆる無自覚な毒親に対する、これでもかと言う正論がスッキリするとともに、強く見えていた父親も人間なのだと気づく娘に胸が熱くなる。 ミステリ要素は薄めなため、前作の雰囲気を期待するとギャップがあるかもしれないが、純粋な冒険ファンタジーとしては一級品。良かった。
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序盤は妹に虐げられてばかりでなんだこの妹は!となり、トリスの視点からなる描写もところどころ何言ってるんだこいつ?となり読んでいてずっとこれが続くのか…とちょっとげんなりしたがなんてことはない。中盤から怒涛の展開で序盤の妹の態度と謎の描写の理由もわかり、後半はもうスピード全開。ジブ...
序盤は妹に虐げられてばかりでなんだこの妹は!となり、トリスの視点からなる描写もところどころ何言ってるんだこいつ?となり読んでいてずっとこれが続くのか…とちょっとげんなりしたがなんてことはない。中盤から怒涛の展開で序盤の妹の態度と謎の描写の理由もわかり、後半はもうスピード全開。ジブリ映画を一本観たような感覚になれるし、映画化も全然いけるレベル。文庫版もあるのでフランシス・ハーディングを初めて読むならこれがオススメかも。
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英国ファンタジーってどうしてこんなに魅力的なのでしょうか。ダレンシャンのようなダークファンタジー好きにおすすめ。人間ではない生き物や魔法、少々捻れている人々、ちょっと前に出たあれだ!という伏線回収、きっと大好きなはず。 子どもが読んでも楽しい。でもトリスの健気さやモズの職人っぷ...
英国ファンタジーってどうしてこんなに魅力的なのでしょうか。ダレンシャンのようなダークファンタジー好きにおすすめ。人間ではない生き物や魔法、少々捻れている人々、ちょっと前に出たあれだ!という伏線回収、きっと大好きなはず。 子どもが読んでも楽しい。でもトリスの健気さやモズの職人っぷりに心打たれたり、大人の気持ちがさらっと書いてあったりもするので、大人が子どものように夢中になって読む方がもっと楽しめるかも。
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・あらすじ 嘘の木が面白かったので同作者の最新邦訳作を読んでみた。 ファンタジー、サスペンスちょいホラー風味の冒険小説。 1920年代の英国が舞台。主人公トリスが事故から目覚めると記憶の欠如、異常なまでの空腹、喋りだす人形…違和感と謎だらけ状況のなか自分の正体を探っていく。 ・感想 カッコー、妖精でピンとくる人はいるかも・ 前作よりファンタジー色強めだからか苦手な比喩表現が多くてちょい苦労したけど主人公の正体が判明してからは一気読みした。 前作ともに抑圧された環境にいた主人公が事件を通じて本当の自分を開放させるという展開と曖昧な境界、善悪二元論で収まらないキレイに分けられるものなんてないというテーマを感じ取れる。 「きっぱりと分ける」アイテムとしてハサミを使うアイデア面白かった。 最後は結構斬新で予想外な終わり方で面白かった。
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大人のためのファンタジー、冷静でちょっと落ち着いたダイアナ・ウィン・ジョーンズみたいな感じ(笑)。 本来取り替えっ子ネタは、取り替えっ子から自分を取り戻すというのがわりと鉄板だと思うんだけど、その取り替えっ子が主人公。「あと七日」…謎の囁きに怯えながら、自分を探し、見つけ、そして受け入れる。そんな王道テーマがしっかり冒険ストーリーと共に面白かった。英国幻想文学大賞も納得です。
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子供の頃の児童文学を思い出しながらも、大人になったからこそワクワクだけで終わらないファンタジー。 事故から目覚めると記憶が曖昧で、何故か妹にひどく嫌われている。事故前のこと、家族のこと、自分のこと、少しずつ思い出すものの、妹は自分を「少しずつ違う」という。 初めはどこかのミス...
子供の頃の児童文学を思い出しながらも、大人になったからこそワクワクだけで終わらないファンタジー。 事故から目覚めると記憶が曖昧で、何故か妹にひどく嫌われている。事故前のこと、家族のこと、自分のこと、少しずつ思い出すものの、妹は自分を「少しずつ違う」という。 初めはどこかのミステリー小説で読んだことあるような設定で全体的に陰鬱だなぁという印象でしたが、起承転結の承から大きく物語が舵を切り、一気にファンタジー要素が広がるため全く未体験の感覚に。 手に汗握るバトルというよりは、魔法の世界にワクワクするタイプのファンタジーです。 しかしながら、翻訳書ならではの詩的な例えがなんとも印象的。解説でも言っていましたが、世の中には絶対的な悪というより、悪だということに気づいていない悪があるのだと、そしてそちらの方がタチの悪いこともあるのだと思いました。
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フランシス・ハーディング、一気読み。一番面白かった!次点で「嘘の木」かな。 本物でない偽トリスが主人公。自分が本物と思っていたのに、いきなりアイデンティティが壊された偽トリス(トリスタ)。記憶も自身の身体も借り物だと知ってもなお、それでも私は生きている!と、命ある限り本物のトリスを助けようとする。借り物であるがゆえに、いびつな家族関係を客観的に理解し、父親ピアスにはっきりと意見をいうところは良かった。 最後は偽トリスが儚く消えて終わりかと思いきや、しぶとく生き続けるラストも意外で良かった。第一次世界大戦後、信仰への揺らぎ、女性の社会進出など、今までの価値観がすべて覆され、自分たちも変わりつつ、逞しく生きようとする少女たちを応援したい。
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彼女のワードセンスによる独特な映像表現は面白い。 例えば あまり大きな音をたてないようにドアを閉めると、部屋の外の音がつぶされて細いリボンになっていった。 アニメで描くような風の線をこう表現していた。 歪んだ家族関係がファンタジーの中で絡み合う物語。 けして善良でない、健全で...
彼女のワードセンスによる独特な映像表現は面白い。 例えば あまり大きな音をたてないようにドアを閉めると、部屋の外の音がつぶされて細いリボンになっていった。 アニメで描くような風の線をこう表現していた。 歪んだ家族関係がファンタジーの中で絡み合う物語。 けして善良でない、健全でない親子関係。 善と悪の間でゆれるアイデンティティ、繋ぎ止めるものたち、新しい命。 ガラスの顔のほうが冒険活劇としてのストーリーや色彩は豊かで好きだったけれど、 こっちのほうが映像が想像しやすく、読みやすくはありました。
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