1,800円以上の注文で送料無料

逃亡者 の商品レビュー

4.1

22件のお客様レビュー

  1. 5つ

    6

  2. 4つ

    6

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2022/12/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

最も印象に残ったのは、鈴木が戦争で疲弊した仲間を見ながら思ったこと。(p496) 「私達はずっと間違い、今も間違い続けている。今後もだろう。」 彼の絶望でもあり、現在に生きている私達への問いのように感じた。 そう考えながら、教団Xでのセリフも思い出された。(p441) 「例えばカミカゼ、つまり特攻隊の人達の手記は涙なしではとても読めない。だか彼らの魂の純粋さを、あの戦争が正しかったような印象操作に利用するのは死者に対して失礼だろ?あの魂をそのように利用しかつ金儲けの手段にしてる奴までいる始末だ。」 まだ間違っている道にいるのでないか、強く感じた。

Posted byブクログ

2022/11/26

「世界との和解」 「銃」「遮光」など個人と社会の不和を描いていた中村文則は、「教団X」「R帝国」「その道の先に消える」など、「この世界は生きるに/愛するに値するのか」というテーマへと変質してきている。それはこの国の底が抜け始めていることに/とっくに抜けていることに気がついたから...

「世界との和解」 「銃」「遮光」など個人と社会の不和を描いていた中村文則は、「教団X」「R帝国」「その道の先に消える」など、「この世界は生きるに/愛するに値するのか」というテーマへと変質してきている。それはこの国の底が抜け始めていることに/とっくに抜けていることに気がついたから。それらの結実としての、まさしく中村文則の到達点にこの作品はあると思う。 キリシタン弾圧、第二次世界大戦、ヴェトナムの抵抗の歴史、国内外で繰り返されるヘイトスピーチ、増殖する無思考と無責任を体現した「言論人」、「悪」と呼ぶにはあまりに凡庸極まりない排外主義者たち。 それでもこの世界を肯定できるのか。 大きな物語による抑圧の歴史を小さな人間の抵抗の歴史と読み替えたとき、世界は鮮やかに反転する。 「共に生きましょう」といういつもの後書きが今回はさらに印象深く残った。

Posted byブクログ