十三夜の焔 の商品レビュー
先手弓組の幣原喬十郎が十三夜に出くわした殺害現場。そこにはただ涙を流す盗人の千吉がいた。事件の真相を知るために千吉を追う喬十郎、しかしその手を掻い潜り姿を眩ませる千吉。やがて時は流れ、両替商の銀字屋となった千吉は喬十郎に再会することになる。読み応えのある時代ミステリです。 まるで...
先手弓組の幣原喬十郎が十三夜に出くわした殺害現場。そこにはただ涙を流す盗人の千吉がいた。事件の真相を知るために千吉を追う喬十郎、しかしその手を掻い潜り姿を眩ませる千吉。やがて時は流れ、両替商の銀字屋となった千吉は喬十郎に再会することになる。読み応えのある時代ミステリです。 まるで違う出自と境遇でありながら、同じ年頃で家族構成も同じ二人が対立し、ひたすらにお互いを敵視しながら物語は進むのですが。結局のところ立ち向かうべき強大な敵は同じなのではないのかな、と思えるし、ある意味バディものとしても読めそうな作品。自らの甘さを自覚しながらも涙を見せることを厭う喬十郎と、厳しい現実を強かに生き抜きつつも涙もろい千吉との対比も面白いです。とっとと手を組んでしまえばいいのに、と何度思ったか(笑)。 時代劇でおなじみのあんな人やこんな人が登場したり、読みどころはたくさん。しかし何といっても女性陣の賢さ強さが素敵すぎます。そして彼女たちをけっして軽視しない二人の姿もまた素敵でした。
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人生は恐ろしい。ふとした行き違いで真逆の生き方に。しかも「御公儀の御政道に対し、もの言うことなど許されぬ。それが天下の定めである限り、我らはその流れに乗って生き続けるしかないのじゃ」つまらぬことに囚われ続ける人が与る御政道なのに…今の時代は、まだ制度的には“否”の声挙げる事ができ...
人生は恐ろしい。ふとした行き違いで真逆の生き方に。しかも「御公儀の御政道に対し、もの言うことなど許されぬ。それが天下の定めである限り、我らはその流れに乗って生き続けるしかないのじゃ」つまらぬことに囚われ続ける人が与る御政道なのに…今の時代は、まだ制度的には“否”の声挙げる事ができる喜び。行使しないと。弁えている場合じゃない。「貴公とわし、どちらが御上を尽くしておるか」重たいことば…。月村さん、舞台が代わっても、熱い思いが流れ込んでくる。
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主人公の30年いや40年になるか、生涯の物語だ。対立する2人のそれぞれの家庭の親娘の心温まる会話等々に感動した。そして最終章では涙が滲み出、自分にも生涯の友がいることの幸せを思った感動の一冊だった。
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月村氏は時代小説も半端ない。山本周五郎や藤沢周平、池波正太郎、最近でいうと葉室麟や砂原浩太朗等々の名手と比べるのは可哀想だが、それでも素晴らしい力作で心が熱くなり響く作品。ストーリテリングの上手さは時代小説でも遺憾なく発揮されている。
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