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「強い円」はどこへ行ったのか の商品レビュー

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17件のお客様レビュー

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2024/08/23

2012年ごろから、日本企業の旺盛な海外企業買収により基礎収支(経常収支+対外直接投資−対内直接投資額)がマイナス傾向にある。 名目GDPが生産の「金額」の概念であるのに対し、実質GDPは物価変動を除去した生産「量」の概念である。 なお名目GDIは分配「金額」もしくは「所得」金...

2012年ごろから、日本企業の旺盛な海外企業買収により基礎収支(経常収支+対外直接投資−対内直接投資額)がマイナス傾向にある。 名目GDPが生産の「金額」の概念であるのに対し、実質GDPは物価変動を除去した生産「量」の概念である。 なお名目GDIは分配「金額」もしくは「所得」金額の概念である。 よってGDPデフレーターとは「付加価値一単位を生産することによって得られる所得金額」の概念。 この上昇無くして、市井の人々が感じる「豊かさ」が改善するとは考えにくい。 GDPデフレーターが上昇するときは輸入材ではなく、あくまで国内財の価格主導でインフレ(ホームメイドインフレ)が起きていることを意味する。これがいわゆる「良いインフレ」

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2024/07/23

円安が続いている。この本は少し古い(2022年9月)がこれに記載された事の結果として現在の円安があると考えられる。 前書きにこうある。長年円高に悩んできた日本が、円安に悩むようになるのだとすれば、それは先進国から途上国へのステップダウンという意味合いを含む。 幼少期に高度経済成長...

円安が続いている。この本は少し古い(2022年9月)がこれに記載された事の結果として現在の円安があると考えられる。 前書きにこうある。長年円高に悩んできた日本が、円安に悩むようになるのだとすれば、それは先進国から途上国へのステップダウンという意味合いを含む。 幼少期に高度経済成長を過ごし、いま途上国への道へ戻っているとすれば妙な気持ちがするが、このままポルトガルのように低位安定するのか、イギリスのようにある程度復活できるの岐路に立っていると感じる。 経済成長や金利も為替変動の重要な論点であるが、最も根深い要因は需給だと著者は言う。 近年の円安が安い日本の始まりを示唆しているとすれば、これを考察するのが正攻法。 今後の日本がいくら経常黒字を維持できたとしても、その中身は外貨として再投資されるフォローが多い。国際収支統計の計数変化を踏まえると成熟した債権国としての夕暮れを目の当たりにしていると感じる。黒田日銀総裁は2022年3月の衆議院財政金融委員会で当時の円安状況について「円の信認が失われたと云うことではない」と答弁。しかし円の信認がテーマ視されること自体前代未聞であり、日本売りとしての円安が懸念されていることの裏返しと云える。 さらに本書執筆時点で家計からのキャピタルフライトの兆候らしきものが出ており、警鐘を鳴らす時期に来ているとし、日本ではいわゆる空気により事態が急転することがままあり、日本円を保有することがリスクとの認識が広まり、一気に円安が進む危険性が指摘されている。 「通貨高で滅びる国は無くとも、その逆は有り得る」

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2024/01/11

長期的な視点から足元の円安を評価する取り組み。 著者自身、書籍という陳腐化しやすい媒体であるものの腐りにくい議論に努めたとあるように主に2013年からの黒田日銀体制前後にフォーカスしつつ構造的な通貨の立ち位置を論じる。 総括すれば円安となれば外貨に依拠するほかない、と思えるがそれ...

長期的な視点から足元の円安を評価する取り組み。 著者自身、書籍という陳腐化しやすい媒体であるものの腐りにくい議論に努めたとあるように主に2013年からの黒田日銀体制前後にフォーカスしつつ構造的な通貨の立ち位置を論じる。 総括すれば円安となれば外貨に依拠するほかない、と思えるがそれもまた今後の流れで見るしかないのだろう。

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2024/01/01

テレビの経済ニュースでの唐鎌さんのデータに基づく分析を好意的に見ていましたので、本書を読んでみようと思いました。 基本的な日本の立ち位置に対する認識は同じであったが、インバウンド需要や貯蓄から投資への意味に関する考察は、今の状況理解を深めてくれました。 私自身は投資もする理系博士...

テレビの経済ニュースでの唐鎌さんのデータに基づく分析を好意的に見ていましたので、本書を読んでみようと思いました。 基本的な日本の立ち位置に対する認識は同じであったが、インバウンド需要や貯蓄から投資への意味に関する考察は、今の状況理解を深めてくれました。 私自身は投資もする理系博士研究者ですが、本書で指摘している政府のコロナ対応の不味さには同意するものの、執筆時でも懸念があり、結果的にアメリカで統計レベルで平均寿命が大きく減るような死者や、400万人にも及ぶとされる後遺症による労働困難者が経済に及ぼす影響に一切触れずに、日本のマイナス面だけを指摘するのは片手落ちだと思う。

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2023/12/14

現在の異常な円安の原因を、できるだけ賞味期限の長い要因を考えて分析した本、という位置付け。 円安の要因としては日米の金利差が重点的に議論されやすいけど、ここではそれに加え、成長率と需給も大きな要因としている。コロナ禍の政府の動きが成長率などの差に直結したことする説明もあり、読ん...

現在の異常な円安の原因を、できるだけ賞味期限の長い要因を考えて分析した本、という位置付け。 円安の要因としては日米の金利差が重点的に議論されやすいけど、ここではそれに加え、成長率と需給も大きな要因としている。コロナ禍の政府の動きが成長率などの差に直結したことする説明もあり、読んでみればなるほどと思った。 ただ、日本の政策が本当に失敗だったのか判断するのは、もう少し時間が必要ですね。

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2023/09/16

日本は貿易で稼げなくなったあたりから円買いが抑制されている可能性があるとの視点は新鮮だった。円安で喘ぐ中インバウンドの門前払いを行ったり、資源価格高に喘ぐ中原発の再稼働を行わなかったりすることによって、成長の芽を自ら摘んでしまい諸外国と対照的に低成長に悩む日本に投資する国がないと...

日本は貿易で稼げなくなったあたりから円買いが抑制されている可能性があるとの視点は新鮮だった。円安で喘ぐ中インバウンドの門前払いを行ったり、資源価格高に喘ぐ中原発の再稼働を行わなかったりすることによって、成長の芽を自ら摘んでしまい諸外国と対照的に低成長に悩む日本に投資する国がないというのも頷ける。原発についてはなかなか難しい問題だと思うが。幸い現在は訪日外国人の数も戻りつつあるので、今や安くなったサービス価格を全面に押し出して円買いの機運を高めていくことが重要だろう。

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2023/08/21

 現在の日本を金融の側から分析した本で、とても良かった。黒田総裁の遅すぎた円安誘導から植田総裁の遅すぎた引締で、誰も円を買わなくなってしまうリスクが増加した。

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2023/02/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

通貨高は先進国の悩み、通貨安は途上国の悩み。 為替の説明変数は多数ある。成長率、金利、需給の3つが基本的なところ。 成長率は、コロナの緊縮度で日本が出遅れている。 金利は日本だけ低い。スイスでもマイナス金利を終了。 需給は、対外純資産国だったため、安全資産として円が買われた。しかし、国際収支の悪化=貿易収支の赤字+所得収支の黒字へ転換。 成熟した債権国へ移行している=所得収支は現地で再投資されるため、需給に表れにくい。 対外純資産は日本がドイツに追いつかれつつある。 日銀は総合的には円安にはメリットが多いと考えているが、各論ではマイナスが多い。 過剰なコロナ対策が、円安の遠因。 REER=実質実効為替レートとNEER(名目実効為替レート)。2020年以降は名目よりも実質で円が下落している=名目レートはかわらなくても、世界では物価上昇+賃金上昇が起きた。=外国の所得から見ると日本は安くなった。 名目GDP成長率ーGDPデフレーター=実質GDPデフレーター。名目のほうが実質より大きいのが普通=GDPデフレーターはプラスが普通。 GDPデフレーター=名目/実質=名目所得(GDI)/実質GDP(三面等価の原則から) GDPデフレータの推移でみると、2020年ごろからマイナスで、大きな要因は輸入デフレーター=輸入額が増えた。 国内財の上昇でGDPデフレーターが上昇するのが良いインフレ。 交易条件=輸出デフレーター/輸入デフレーター。輸入が増えれば悪化する。輸入材の価格が上昇すると企業が吸収している間はCPIは上がらない。GDPデフレーターのほうが日本の実体を表している。 日本のデフレは、資源価格のインフレや円安による交易条件の悪化による。 対外直接投資は、円安要因。 国際分業の結果であり、黒字が善で赤字が悪、ではない。 怖いのは家計金融資産の数%が外貨へ動くこと。かなりの円安になる。円の価値低下が認識されると雪崩を打って外貨に代わる可能性がある。ギリシャやロシアで起こった。 成長を放棄すると、世界の多くに投資機会がある中、日本の株式を買う理由はなくなる。 貯蓄から投資へ、が本当に機能すると国際暴落住宅ローン金利上昇につながらないか。家計部門が貯蓄優先保守的運用だからこそ、低金利が成り立っていた。 黒田総裁の「家計が値上げを受け入れている」発言は、2022年4月に実施された渡辺務によるアンケートによるもの。受け入れているのではなく諦めているが実態。 リフレ政策は、未達だったからこそリフレ政策の支持が集まった。 悲惨指数=インフレ率(CPI上昇率)+失業率を足した数値。 日本では上がらない物価、海外では上がらない株価がデフレの定義。 中央銀行の財務健全性は、通貨の信任と同義ではない。日銀の評価損が膨らんでも、通貨が信任されなくなるわけではない。スイス国立銀行は、ユーロ安スイスフラン高をユーロ買い支えで抵抗したが、抵抗しきれずやめた。そのときユーロは下落して為替差損が生じて債務超過になったが、スイスフランの信任は揺るがなかった。ユーロ導入前の分ですバンクもマルク高になって外貨準備が減少し債務超過になった。 ベネズエラ、アルゼンチン、ジャマイカは、中央銀行が債務超過になり、高率のインフレになった。 通貨高を通貨安にすることは可能なので、通貨高による債務超過は心配されない。債務超過自体に決定的な意味があるわけではない。 しかし、債務超過がテーマ視されれば別。 日本とドイツの違い。 ドイツは安いユーロの恩恵を受けて大幅黒字。日本は円高との戦いだったが、海外直接投資によって円安基調になった。ドイツは安いユーロのため、工場が外に出ていかない。日本は、国際収支の発展段階でいえば普通の変遷を経て成熟国に変化した。ドイツは永遠の割安通貨を得た。貿易黒字は3~4倍。 ドイツと日本は似ていない。 IMFの外貨準備の構成通貨データ(COFER)カレンシーコンポジションオブオフィシャルふぉれいんエクスチェンジリザーブス)ではドルのプレゼンスが低下している。 ロシアはSWIFT抜きの世界を構築しつつある。 リーマンショック後の世界の協調路線は、2010年のg20での近隣窮乏化対策=通貨安競争を戒める内容だった。 2022年はアメリカもユーロ圏もインフレ抑制のための自国通貨高を歓迎している。 日本は、白川総裁のころまでは、世界の潮流に逆らって緩和を渋っている国だった。今は、世界の潮流に逆らって低金利を続けている国。 為替参加者の意識は「長期的に正しくても短期的に間違っていれば命運は尽きる」。そのため一方向に流れやすい。

Posted byブクログ

2023/02/07

アメリカと日本の金融政策の大幅な円安を招いた。日本もここに来て大幅なインフレ、物価高になって来た。金利の動きに注目したい?

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2023/02/02

現行の外国に比べて厳しすぎるコロナ対策に対しての、著者、そして市場の反感を強く感じた。コロナ対策の評価は置いておいて、市場と世間一般の意見の乖離は相当なものなのだろう。 円安について、日本の構造的な要因を分かりやすく解説している。コロナやそれ以前からの円売り、外貨保有が証券から...

現行の外国に比べて厳しすぎるコロナ対策に対しての、著者、そして市場の反感を強く感じた。コロナ対策の評価は置いておいて、市場と世間一般の意見の乖離は相当なものなのだろう。 円安について、日本の構造的な要因を分かりやすく解説している。コロナやそれ以前からの円売り、外貨保有が証券から直接投資に移ってきていること等。 国際収支の発展段階説における日本のステージが数年前に変わったことは、個人的にもそうなんだろうと思っていたので、納得できた。

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