汝、星のごとく の商品レビュー
瀬戸内の島で暮らす高校生の2人が愛を育み、成長とともにすれ違い、やがて苦境を乗り越えた末に再び寄り添う切ないラブストーリーでした。 それだけに留まらず様々な社会や人生の側面を考えさせられました。島で暮らす閉塞感、周囲の目、呪縛のように縛られる親のこと。夢を追いかけ都会へ。成功と転...
瀬戸内の島で暮らす高校生の2人が愛を育み、成長とともにすれ違い、やがて苦境を乗り越えた末に再び寄り添う切ないラブストーリーでした。 それだけに留まらず様々な社会や人生の側面を考えさせられました。島で暮らす閉塞感、周囲の目、呪縛のように縛られる親のこと。夢を追いかけ都会へ。成功と転落。正論とは?それを超えた自由とは?生きるとは決して平坦な道ではない。巡ってくることともに自分自身に向き合い、もがき、乗り越え、自分の人生を生きる強さ、そして弱さも。 2人の人生を取り巻く人たちにも影響、存在もこのストーリーを支える。 与えられた境遇、出会い、巡り来る機会の中で自分はどう生きてきたか?どう生きたいか?をかんがえさせられました。 そして、切なくて、愛おしくて、苦しくて、優しくて… 瀬戸内の海、空に輝く星が今ここに生きる人々の人生を包みこみ、照らしてくれます。 一気読み。ぐっと入り込みました!
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本作の文章1つ1つが心にのしかかってくるような表現力は素晴らしく、作者の魂が込められていると感じました。 本作のテーマの1つに遠距離恋愛が挙げられますが、昨今のコロナ情勢で遠距離恋愛を行わざるを得なかった身の回りの人たちの話を聞いていると、物語の前半の話は現代の恋愛事情を切り取...
本作の文章1つ1つが心にのしかかってくるような表現力は素晴らしく、作者の魂が込められていると感じました。 本作のテーマの1つに遠距離恋愛が挙げられますが、昨今のコロナ情勢で遠距離恋愛を行わざるを得なかった身の回りの人たちの話を聞いていると、物語の前半の話は現代の恋愛事情を切り取ったような描写であると感じました。 また後半では、そんな2人の転機が描かれます。この転機により、2人の環境だけでなく愛情や考え方にも影響を及ぼし、物語のフィナーレへと向かっていくのですが、この後半部のメッセージ性は強く心に残りました。 若干ネタバレになるので、文章の引用等はしませんが、暁海の決意が書かれている箇所はこの物語の象徴であり、読者に大きな勇気を与えてくれるように思いました。
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時々、茫然と立ちすくむことがある。 今、私がいるここは、かつての私が望んだ未来なのか。あの頃の私に今の私は何を語れるのか。 自分で選んできた道なのに、いくつもあった分岐点を超え、自分で考え、自分の足で歩き続けてきたはずなのに、 それでも誰かに選ばされてきたと思いたくなることがある。そうしないと耐えられない今がある。 立ちすくんだ後、前を見る。私はどこに向かう。何を選ぶ。 海は世界とつながる。海を越えていけばどこか遠くの、ここではないどこかへ、どこへでも行ける。 でも、海は世界とここを隔てる壁でもある。越えられない壁でもあるのだ。 人と人は分かり合えない。言葉でしか伝えられない気持ちがある。でも言葉で伝えた気持ちは、自分の中の本当の何かとは別のものかもしれない。どこまで行っても平行線の、その二つの気持ちは、一瞬のすれ違いか、曲がることで重なって続くのか。 凪良ゆうが描いたのは、一つの恋の始まりと終わり。でも、ここにあるのは、単なる恋愛小説ではない。 地域格差やジェンダー問題やヤングケアラーなどの社会問題を内包しつつ、それでも人が人として誰かと生きる、その命の意味を問いかけている。 何が正しいのか。正しくあるために何を捨てるのか。 拾いすぎて両手いっぱいになって身動きの取れない誰かの、その荷物を降ろすきっかけ。 多分、これはそんな一冊。
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装丁というか表紙の写真?がとても美しくて好き。 流浪の月の時も思ったけれど、作為的なやりすぎ感が強いかな?もちろん流浪の月よりは薄まって説得力が増したけど。 それでも、執筆命賭けなの?と思うほどの筆致というかなんだろう?読んでいて鬼気迫るような印象には感動した。腹に響くみたいな。本当に何か削って書いているような。 恋愛小説は苦手だけど、前半は面白く読んだ。
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凪良さんの作品は、自分と、他人と、大切な人と、家族、それぞれの価値観関係性、そして幸不幸を描いているのかな、て感じることが多い。自分の幸せは他人の幸せではないし、かわいそうかそうでないかも、自分以外のことはわからない。たとえそうでも、それらは他人に消費されるようなものではない。(...
凪良さんの作品は、自分と、他人と、大切な人と、家族、それぞれの価値観関係性、そして幸不幸を描いているのかな、て感じることが多い。自分の幸せは他人の幸せではないし、かわいそうかそうでないかも、自分以外のことはわからない。たとえそうでも、それらは他人に消費されるようなものではない。(もちろんそれも私がそう感じるだけなので、それが正しいわけでもない) 自問自答して、足踏みして、呑み込んで、吐き出して、笑ってみたり怒ってみたり。 離れてからの二人の変化や葛藤、立場がとても印象に残った。そして、道を誤りたい、てすごくかっこいいな、と。 自分の足で立っていると、踏ん張れるし踏み出せる。そんな軸があって、そしてそれをそっと支えてくれる人がいると、それはもっと、強くなるんだな。 読み終わった直後より、読み終わって思い返していると、じっくりじわじわと心に重みを感じさせるような、胸に残るお話だった。
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一般文芸の第一線から恋愛小説が消えてもう何年経つ?? その間にもう自分も恋愛小説を読んで心を震わすことなんてないだろうと思っていた。 (自身の年齢的にもそうなのだろうと漠然とした思っていたともいえる) で、これか、と。 このエンタメが持て囃されるこのご時世に、恋愛小説を書いた...
一般文芸の第一線から恋愛小説が消えてもう何年経つ?? その間にもう自分も恋愛小説を読んで心を震わすことなんてないだろうと思っていた。 (自身の年齢的にもそうなのだろうと漠然とした思っていたともいえる) で、これか、と。 このエンタメが持て囃されるこのご時世に、恋愛小説を書いたんだなぁと。 しかもなんかすごいけど??と圧倒されました。 正直流浪の月は好きじゃなかったし、あの流れからの今作なのかなぁと、すこし捻じ曲がった角度から読み始めてしまったのだけれど、今回の凪良さんはきちんと引き算があった。 (流浪の月は足し算ばかりで逆にいいところを殺してたように感じていたので) 引くところは引いて、書きたいことがすっと入ってくる感じがしました。 (読んでる途中、頼むからここで先生がヤバイキャラになりませんようにと祈ってた笑 ある意味壊れてはいるけれど、引き算の壊れ方だったから安心した。彼の存在がとても良い味付けになってた) おそらく流浪の月も汝、星のごとくも『自分のために、自分の信じる愛のために、自ら間違える』という芯は同じなのだけど、今作の方がそれが無理なく入ってくる。 心が通うのも、離れるのも、捻れるのも、解けないほどに絡まってもう鋏を入れたほうがいいくらいなのに、そのまま力まかせに双方から引っ張り合うかのような繋がりの描き方が秀逸だな、と。 これぞ恋愛小説だ、と久々にハートというより肌がヒリヒリしました。 久々にこの感覚を味わったな、と。 櫂のクズ具合がリアリティあってすごくいい。女々しく通帳記入するとこも四万円要求する連絡もリアルクズで最高(ほめてる 母親の影響でどこか女をバカにしてる感じもすごく生々しくて、いっそ潔いなぁと。 そして、暁海が選んだ生き方がわたしはとてもかっこいいとおもう。 こういう作品って『ここではないどこかへ』にラストを持って行きがちだけども、暁海はどこかではなく『ここ』で生きていく。それがすごくかっこいいな、と。ある意味呪いから解放されて彼女の人生をようやく生きられるんだな、というか。 わたしも子どもがいないから親の気持ちはわからないけど、子どもとして必死に訴えるあのシーンにはグッときたな。 ここ最近、親が自分より強くて完璧な存在だと思えるうちは子どもなんだなと実感する作品が続いていて、これもそのひとつ。 親よりも先に大人にならざるを得なくて、荷物を背負って、そのうえで誰かを愛するために間違える。 そもそも間違ってるかなんてだれが決めるものでもないのだけど、その正論が罷り通らないから苦しいし、だからこそ文学があるのだともおもう。 恋愛って人間のいちばん素直な衝動で、生命活動だとも呼べるもので、だからこそやっぱり一般文芸の棚にあるべきものだよなと改めて思いました。 シンプルだけど答えがない。だからこそ、人は何百年も前からこのネタで物語を書き、読んで楽しむ人がいるんだよね。 物語の入り口にあらためて立ったような気がしてます。 わたしはまたここから、まだまだ物語を楽しんでいけるんだなと、プラチナチケットを受け取った気分です。 また書店の棚にこういう作品が増えていくといいな。 余談だけどもコレが凪良さんが受け継いだバトンなんだなぁと思うと勝手にしみじみしてます。
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とても、とてもよかったです。 凪良ゆうさんの本は、読む手を止めたくなる程の悲愴感漂うパートがとても長く感じます。 今作でも、プロローグから暗雲が立ち込めていました。 ですが、やはり期待してしまうのです。雨上がりの晴れ間を。 プロローグとエピローグ、ほとんど同じ内容で、これだけ違...
とても、とてもよかったです。 凪良ゆうさんの本は、読む手を止めたくなる程の悲愴感漂うパートがとても長く感じます。 今作でも、プロローグから暗雲が立ち込めていました。 ですが、やはり期待してしまうのです。雨上がりの晴れ間を。 プロローグとエピローグ、ほとんど同じ内容で、これだけ違う感じ方をさせることができるところが凪良ゆうさんの魅力だと思いました。 登場人物たちのままならなさ、強さ、全部愛しいです。 生きづらさを抱える全ての人へ届きますように。
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プルーフで読んだ。 どんどん物語に引き込まれる。 自分にずしんとくる言葉も多数あり、涙がでてくる。 うっかり電車で読んでしまったがために思いきり泣けなかった。 これから読まれる人はぜひ自宅で読んでもらって、思う存分ないてください。 装丁も美しい、ぜったい買う。
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プルーフにて。 なにかあるとすぐ噂が広まるような小さな島で暮らす、息苦しくも未来に希望を委ねる十代。社会に出てからすれちがいはじめる二人の、年を重ねていくごとの変化が、読んでいてヒリヒリと痛かった。なんでこんなこと言っちゃうんだろう、とか、わかってるのに口にしちゃうって、あるよな...
プルーフにて。 なにかあるとすぐ噂が広まるような小さな島で暮らす、息苦しくも未来に希望を委ねる十代。社会に出てからすれちがいはじめる二人の、年を重ねていくごとの変化が、読んでいてヒリヒリと痛かった。なんでこんなこと言っちゃうんだろう、とか、わかってるのに口にしちゃうって、あるよなぁ。逆もまたしかり。 グサリとくる台詞や、こいつ…まじか…という展開もあったりで、すり減らされながらページをめくっていたけど、最後まで読んでよかった!というラストだと思う。 島の印象が最初と最後で変わったのもおもしろい。
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北原先生が暁美を東京に送り出すシーンで泣いちゃった。「永遠に辿り着けない場所を目指して疾走するものが恋ならば、ゆったりと知らないうちに決定的な場所へ流れ着くものが愛のような気もする」
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