爆発物処理班の遭遇したスピン の商品レビュー

佐藤究(著者)

2023/08/25

なんでこんな面白い本ずっと積ん読にしてたのだろう、もったいない！が一番最初の感想です。
全部面白くてすごくいいのですが、特に「ジェリーウォーカー」と「スマイルヘッズ」が好き。
どの短編もフィクションだと頭ではわかっていても、気づいたら「現実」として引きずり込まれるような、臨場感がたまらなくスリリングでよかったです。

2023/08/19

読書備忘録757号。
★★★★。

全く作品間に関連性のない短編集。
ただ、非日常であることと、江戸川乱歩(笑)的などろどろぐちゃぐちゃ的不気味さ満点であることは共通していました。

【爆発物処理班の遭遇したスピン】
鹿児島県警爆発物処理班が遭遇した防ぐことが100%無理な爆弾テロ。
トロピカル・ハウスなるテロ組織が爆破予告する。
ホテルに設置された酸素カプセルに爆弾を仕掛けたと。
起爆キーは、カプセル内気圧が1.3気圧以下になった時、更にカプセルの扉が解放された時。
そして、同じ仕掛けが在日米軍基地の酸素カプセルにも仕掛けられたと。
そして、2つの起爆装置は量子物理学に基づくエンタングルメントに基づくペアリングがされているという。
量子の回転(スピン)が上向きになるか下向きになるかは起爆スイッチが入るまでは不定であると。すなわち、どちらかが必ず爆発する仕掛け。
めちゃくちゃ面白い理論！
果たして対処方法はあるのか？
【ジェリーウォーカー】
VFXクリーチャーのデザイナー。
自分は平凡な才能しかない。それでも人々があっと驚くクリーチャーをデザインしてきた。なぜ平凡な才能なのに？驚くべき真実が明らかに！
【シヴィル・ライツ】
暴対法が施行されたことで絶滅の危機に瀕している暴力団の5次団体。
組の貴重な足である、ぼろぼろの原付が盗まれた。けじめを付けるために普通は指を詰める。しかしこの組はホセというけじめのつけ方があった。ホセとは？こわっ！
【猿人マグラ】
福岡のある場所に昔から言い伝わる言葉。「そっちば行くと猿人マグラにされるぜ」。マグラとは？戦時中に行われていた恐るべし研究、実験・・・。
【スマイルヘッズ】
シリアルキラーが刑務所などで創作した絵画などを収集するコレクターがいる。
主人公はミッチ・ジョーディソンという数十人を殺したシリアルキラーの作品群を集めていた。ドルフィンマンと呼ばれるイルカの頭をした不気味な絵画。そんな彼の作品に唯一の立体作品、ドルフィンヘッドがあった。
それを売ってくれるという電話をうける。訪れた先で主人公を待ち受けていたのは・・・。
【ボイルド・オクトパス】
退任した元刑事へのインタビューシリーズ連載がヒットした筆者。連載の最終回を飾る予定だったLAPD(ロス市警)の元刑事へのインタビュー原稿は陽の目を見なかった。その恐るべきインタビューは！
【九三式】
昭和21年。ニューギニアの激戦地から引き揚げてきた主人公は、食うに困っていたが、どうしても欲しい江戸川乱歩の本があった。手っ取り早くお金を稼ぐ方法は占領軍の仕事。雇われて向かった先で行われていた恐るべき仕事は？狂犬病に罹った野犬の捕獲？いやいや・・・。
【くぎ】
傷害事件で少年鑑別所に入っていた主人公は、4週間の収容を終えて出所する。こんな自分でも雇ってくれた塗装店。ペンキ塗りの仕事である。
とある古い日本家屋の天井補修工事。
そこに住む疲れ切った女。そしてその息子らしき危ない巨漢。現場に落ちていた5寸釘。そのぼろ屋の中で恐るべき犯罪が起きていた！

どれもこれもちょっと不気味。
まあ、作品タイトルになっている短編が飛び抜けて面白かったことだけは確か。
量子エンタングルメントは距離に一切左右されないので、極論銀河の端から端であってもぺリングが成立する。そうです！三体で登場した量子コンピューター智子(ソフォン)の理論と共通しています！
なので、三体文明と地球の間を距離に関わらず瞬時に通信できる性能を持っていたんですね。
ああ、楽しい。

2023/07/26

人間の愚かさ、脅威、遺伝子操作された不可思議な獣、連続殺害犯人の心境、元警官の私生活変化など現代、近未来に発生、出現しそうな不可思議に変化する人間と生き物の生態小説はなかなか興味をそそる内容だ。それは現実にも存在し身近な「人間の生態」であり、人間が作り出す「生き物・獣」だからだと思う。今後遺伝子操作でSF映画などで見る突然変異の獣が出現する、その時人間は防御・守りができるだろうか。

2023/07/08

直木賞作家の8作からなる短編集。それぞれ、SFだったり、ホラーだったり、戦後の街だったりとあっという間に読めるが、心には深い余韻が残る。前作の「テスカトリポカ」でも感じたが沢山の言葉の引き出しと構成で攻めて来る感が凄い。

2023/07/06

これは面白かった！図書館で目にして借りたんだけど、借りてきて良かった。
テスカポリトカの作者だから、つまらなくはないだろうくらいの期待値だったんだけど、思わぬ裏切りだったな。
最初の話が科学的、というかまぁいわゆるもうSFに近い話だったのでそういう感じの話が続くのかと思ったら、そんなことは全然なくて、かつて読んだことはあるようなテーマだけど、はじめて読むような描写が多く、まぁ通じて見れば、何人も人が死んでいるので、いわゆるバイオレンスではあるんだろうな。
にしても、細かい設定だったりが新鮮で面白かった。

2023/06/26

短編集
面白い作品が多いけど
ぜんぶ暗い....(￣▽￣;)
もちょっと楽しいのも読みたかったかな....

2023/06/25

23/06/25読了
このひとはテスカトリポカに続く2作目。短編向きのひとでは感。表題作、クリーチャー、マグラが印象的。

2023/06/25

切れ味鋭い短編集。どの話もおもしろい。量子力学、爆弾、異種キメラ、危険なペット、シリアルキラー、江戸川乱歩と夢野久作など、ワクワクと狂人がいっぱい。ダラダラとしないスパッとした話ばかりなのも良し。

■爆発物処理班の遭遇したスピン：量子力学を活用した爆弾なんて実用化可能なの？上か下か、確率と観測。量子エンタングルメントの怪。

■ジェリーウォーカー：クリエイターがクリーチャーを産み出せるワケ。異種キメラの魅惑と恐怖。

■シヴィル・ライフ：ワニガメを使った末端チンピラの指詰め。口いっぱいのアレ。ゾーッ、うわ～っ、と思いながら読んじゃう系。

■猿人マグラ：福岡では夢野久作が驚くほど無名らしい。「マグラにされるぞ」とはいったい。

■スマイルヘッズ：シリアルキラーと猟奇美術コレクター。出会うとどうなる。

■ボイルド・オクトパス：警官とインタビューと差別。

■九三式：九三式とは火炎放射器の型式。戦後の高額バイトと狂犬病。

■くぎ：15cmくぎの使いみち。見つかってよかったね。

2023/06/23

短編集と知らずに長編と思い込んで読んでました！(笑)
佐藤究さんの作品が好きで、こちらの作品が図書館にあったので貸し出しました。

収録作品がこちら:
1.爆発物処理班の遭遇したスピン
2.ジェリーウォーカー
3.シヴィル・ライツ
4.猿人マグラ
5.スマイルヘッズ
6.ボイルド・オクトパス
7.九三式
8.くぎ

全体的にドキドキ、ハラハラ、ゾクッとさせる作品ばかりでした。……でも読んじゃう！
ヤバイ人間しか登場しないのに。(*;´□`)ゞ
お気に入りは1、2、3、5、6、8です。1は量子力学のことに触れるので難しいお話だったけど、スリルがあって目が離せませんでした。7も難しかったな……。

危険な動物や爆発物処理班の防爆服のことには詳しくなりました。量子力学のことは、さっぱりわかりません(笑)

2023/05/10

たっぷりの絶望とたっぷりの動物たちを味わえる短編集。
この人のお話はどことなく哲学の香りがする。
ハッピーエンドともバッドエンドともいい辛いお話たち。