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爆発物処理班の遭遇したスピン の商品レビュー

4

97件のお客様レビュー

  1. 5つ

    25

  2. 4つ

    41

  3. 3つ

    20

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

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2024/01/23

本物の匂いしかしない。題材は多岐に渡り、着眼が新鮮で、何よりも小説の展開力がもの凄い。僕自身は書いたこともないが、おそらく小説というのは、その後の成り行きから逆算して導入部を発案するものではないかと思うのだが、ここからの展開の振り幅がとても大きく感じ、だからこんなにも面白く感じる...

本物の匂いしかしない。題材は多岐に渡り、着眼が新鮮で、何よりも小説の展開力がもの凄い。僕自身は書いたこともないが、おそらく小説というのは、その後の成り行きから逆算して導入部を発案するものではないかと思うのだが、ここからの展開の振り幅がとても大きく感じ、だからこんなにも面白く感じるのではないかな?それはとりもなおさず、佐藤究が本物の小説家であることの証のようにも思えるのだ。ストーリーを追いかけるタイプの小説ではなく、徐々に深界部へと潜行していくタイプのこのスタイルがたまらなく好きだ。これこそが「小説」だとすら感じる。どの短編もハードだ。暗黒だ。 たぶん頭や取材だけではこれは書けない。どんな体験をしてきたらこんな小説が書けるのか、そんな興味までを掻き立てられた。

Posted byブクログ

2024/01/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

表題作を含む短編集。本当にあった話が混ざっているようなゾワゾワした恐怖を感じたり、爆弾と量子力学に殴られ正しさについて考えたり、濃密な話が盛り込まれていた。臨場感が凄くてどの話にものめり込む、その分だけしんどいけど面白い。 「爆発物処理班の遭遇したスピン」 爆弾処理班が遭遇したのは日本の官僚かアメリカの兵士どちらかが爆死してしまう爆弾だった、という話。爆弾に量子力学、そして問われる選択。なかなか面白いと思ってた矢先に突きつけられる選択、どちらを生かすという単純なものではなく戦争に発展する選択になり得る恐怖に正しさとは、と考える。 「ジェリーウォーカー」 架空生物クリーチャーを考えるスタニック、実は動物キメラを作りそこからヒントを得て考えてた。そのキメラが脱走し殺されてしまう話。 「シヴィル・ライツ」 貧乏ヤクザの若頭の舟伏が自分で指を落とすかワニガメに噛まれるかの選択を強いてくる話。ヤクザと貧乏という意外な組み合わせからくるヤクザパワハラの温度差、そして得体が知れない白滝の存在にゾッとした。痛い。 「猿人マグラ」 猿人マグラにされる、と子供達の間で言われている言葉、それは実は大人も言っておりどういう意味があるのか調べる話。 ドグラマグラの作者夢野久作は福岡出身、と本筋には関係ない豆知識。 「スマイルヘッズ」 シリアルキラーのアートコレクターをしている男の元へ取引が持ち込まれる話。駄目だからこそ引き寄せられるそれは良い餌となり新たなシリアルキラーのアートとなる。 「ボイルド・オクトパス」 引退した元刑事を取材する記者がロサンゼルスの元刑事へも取材する話。この元刑事が白人至上主義者で黒人殺人の犯人で、トラウマの話が本人の話だとは思いもしなかった。死体を頭に棲みつく、幽霊を飼う、それが元刑事を犯罪者にしたのだろうか。 「九三式」 敗戦後、家族との思い出の本を手に入れたいと米軍の野犬狩りの仕事を受けた男の話。野犬は日本の子供で、それを野犬として殺すのも日本人、その地獄がこちらまで伝わりしんどい。本を手に入れたいから受けた仕事だったのに、そのせいで自爆する男が辛すぎる。 「くぎ」 傷害罪で捕まった男がペンキ屋に就職し、客の家の釘が気になりその客の家で誘拐された子供を見つける話。

Posted byブクログ

2023/12/01

予想以上に面白かった! 著者の作品はどれも長編だからこその読み応えがあると先入観があったが、短編でも読み応えがあり、気持ちの良いテンポでストーリーが展開していく。物語としてまとまっているにも関わらず、続きが気になる展開も多い。

Posted byブクログ

2023/11/28

お初の佐藤究さん 何から読もうかな?と図書館へ。 こちらと「Ank」を借りてきました。 究さん大好きな1Q84O1さんの助言通り 短編集から読んでみることに(人’▽'。)アリガト 面白かったー! どれも長編に出来そうな話。読み応え抜群の短編集だった。 【爆発物処...

お初の佐藤究さん 何から読もうかな?と図書館へ。 こちらと「Ank」を借りてきました。 究さん大好きな1Q84O1さんの助言通り 短編集から読んでみることに(人’▽'。)アリガト 面白かったー! どれも長編に出来そうな話。読み応え抜群の短編集だった。 【爆発物処理班の遭遇したスピン】 爆発物処理班vs謎の起爆装置 まず爆発物処理班の男達が最初から最後までとにかくかっこいい。 そして、爆発物を起爆させるシステムがまた何ともおそろしくかっこいい。 -神はサイコロを振らない- 解除する方法などあるのか、という状況にゾクゾク。量子力学とはなんぞやってことは最後までサッパリわからなかったけれど笑 【ジェリーウォーカー】 クリーチャーとか 男の人好きそうじゃない?笑 ヒーロー物でもやたらカッコイイ怪物出てくるときあるよね。 【シヴィル・ライツ】 つまらぬ失敗をして指を詰めることになるヤクザの話。いや、そんな指の詰め方ある?それを見て楽しむ若頭も狂ってるけど、その若頭にそんな反撃の仕方ある?!笑 ラスト一行までみんな狂ってる。 【猿人マグラ】 『そっちに行くと猿人マグラにされるぜ』 子供の頃から気になっていた『猿人マグラにされる』という言葉。地方の怪談話や都市伝説のような謎を大人になってから解明しようとする話、かと思いきや めちゃくちゃゾッとする終わり方だった…。『猿人マグラ』の意味、、恐ろしい! 『スマイル・ヘッズ』 これが1番好きだった! シリアルキラーのアートのコレクターの話。「シリアルキラーの絵は良識に照らすならば、本来取り引きされてはならない。しかし禁断の果実はコレクターを力強く引き寄せる」 。その絵がいかに素晴らしいか、ではなくその絵を”シリアルキラーが描いた”ことに惹き付けられたコレクターたちの狂気じみた話。後半ゾワゾワしっぱなしでたまらんかった。 【ボイルド・オクトパス】 引退した元刑事の その後の生活を記事にする雑誌記者の話。しばらく蛸は食べたくないなという話。笑 【九三式】 途中で無理かもと思った。 「猿人マグラ」を先に読んでいたから 野犬狩りの予想は出来ていたのに辛すぎた。戦後 食べることすらままならない生活を送る元軍人の青年。ただ大好きな江戸川乱歩の小説を読みたかっただけなのに…。 【くぎ】 少年鑑別所から出てきた十六歳の安樹。 「しっかり反省してまともな人生にすすむ。どくりつしたいです」 。塗装工の職に就いた安樹は、依頼人の家の廊下に落ちている一本の”くぎ”を見つけて……。そこに繋がるの?って驚きと最後の一行がめちゃかっこよくて好き。 SF、バイオレンス、ホラーと盛りだくさんの一冊に満足満足でした٩(ˊロˋ*)و あれも読みたいのよ。究さんのナントカポリスみたいな名前の本。いつもタイトル覚えられない!

Posted byブクログ

2023/11/27

佐藤究さんの才能と、引き出しの多さ、多彩さに衝撃を受けた一冊。 あらすじを書けば数行で足りる話をここまで広げてリアリティのある作品に仕上げられるなんて、なんて凄いんだ。 特に表題作は、今まで読んだことのない設定に衝撃を受けた。 そしてどの話もアンダーグラウンドなエグさが佐藤究さん...

佐藤究さんの才能と、引き出しの多さ、多彩さに衝撃を受けた一冊。 あらすじを書けば数行で足りる話をここまで広げてリアリティのある作品に仕上げられるなんて、なんて凄いんだ。 特に表題作は、今まで読んだことのない設定に衝撃を受けた。 そしてどの話もアンダーグラウンドなエグさが佐藤究さんの世界観を感じられて面白かった。 本の装丁もスタイリッシュでかっこいい。

Posted byブクログ

2023/11/12

ジャンル分けするとしたらホラー小説でしょうか。どの話も導入部分では一体全体何の話なのか、何を書きたいのか、どこに帰着するのか、が予想つかず、ただ仮にそういう興味がなくても純粋に文章として読み進ませるのはさすがでした。

Posted byブクログ

2023/10/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

今まで読んだ短編集の中で、群を抜いて面白かった。 『爆発物処理班の遭遇したスピン』 オチがとても好き。 量子力学への追究を深めれば、長編にもできそうなくらい内容の濃い短編だった。 『猿人マグラ』 ドグラ・マグラから、この短編を書こうと思う発想の飛躍が凄い。結局夢野久作の出身地という情報は何も関係なくて逆にゾッとした。 『九三式』や『スマイルヘッズ』でも思ったが、この人は実在の事件から着想を得てオリジナリティのある作品を作るのがとても上手い。インスピレーションの元が神話になったことで、『テスカトリポカ』という壮大かつスリリングな作品が生まれたんだなと思った。 『九三式』のあまりのリアリティに、上野秀晃という人間が実際にいるのでは?と思って検索したところ、KADOKAWAの編集者だったので笑ってしまった。

Posted byブクログ

2023/10/14

独特の世界観がある短編集でした。自分にはあまり合わなかったかな…。ただ、科学からSF、シリアルキラーの話など、著者の懐の深さを垣間見ることができました。

Posted byブクログ

2023/10/04

佐藤究さんの作品に触れるのは3作目ですが、やっぱり私の感性にぶっ刺ささってくれます。 本当に面白い、私の好みなんですが、剥き出しの欲望がひとまず好きで、自分の中に譲れない何かがあって、それがとてつもないマイノリティーであったとしても、本人の信念や価値観で、それの為に命を捧げられ...

佐藤究さんの作品に触れるのは3作目ですが、やっぱり私の感性にぶっ刺ささってくれます。 本当に面白い、私の好みなんですが、剥き出しの欲望がひとまず好きで、自分の中に譲れない何かがあって、それがとてつもないマイノリティーであったとしても、本人の信念や価値観で、それの為に命を捧げられる人間ってまず好きで、佐藤究さんの作品で描かれているそういう人間はとてもリアルかつ魅力的に描かれているので、まず好きポイント。 それプラス、どの作品も世界観が好き。 やっぱり暗いけど、乾いてて、何か吹き抜けてる。 陰鬱な感じというか、ジメジメした気配を感じないのにしっかり地獄なのが、大分好みの地獄で好き……。 やっぱり海外の雰囲気を感じます、なんでなんだろ。 文体……?分からないけど、どっか荒涼としてる中に血が通ってる感じがするのも好き……。 兎にも角にも好きです。 激推し作家さん、次は最新作幽玄Fです。 単行本は10月20日に買うんです、決定なんですけど、それはそれとして文藝2023年夏季号を買っちゃったので、2度美味しい訳ですが、楽しみに読みます。

Posted byブクログ

2023/09/01

「爆発物処理班の遭遇したスピン」(佐藤 究)
佐藤 究さんの作品は「Ank : a mirroring ape」に次いで二冊目です。
短篇集です。
ダークな色調の作品が詰まっている。
表題作の意表をつくストーリーが出色ですが、「シヴィル・ライツ」、「くぎ」もなかなか良い。
作品中...

「爆発物処理班の遭遇したスピン」(佐藤 究)
佐藤 究さんの作品は「Ank : a mirroring ape」に次いで二冊目です。
短篇集です。
ダークな色調の作品が詰まっている。
表題作の意表をつくストーリーが出色ですが、「シヴィル・ライツ」、「くぎ」もなかなか良い。
作品中の気になった文章を抜き出す。
『ウォーホールとゲイシーが同じと言うつもりはない。私が言いたいのは、芸術家としての両者の近さではなく、作品が与える問いかけの類似性である。奇妙な磁力のなかで、見る者に投げかけられる絶望と欲望のことだ。』(スマイルヘッズ本文より)

Posted byブクログ