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雨滴は続く の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2023/12/01

前半は、主人公の身勝手さや女性蔑視のひどさに呆れつつも、そんな主人公を客観的にみている語り手や古書店主の視点がときどき挟まれるおかげで読み進められた。己の身勝手さを自嘲する芸なんだろうとも思えた。でも、後半二人の女性が主人公に振り回され、女たちに惚れているはずの主人公がちょっとで...

前半は、主人公の身勝手さや女性蔑視のひどさに呆れつつも、そんな主人公を客観的にみている語り手や古書店主の視点がときどき挟まれるおかげで読み進められた。己の身勝手さを自嘲する芸なんだろうとも思えた。でも、後半二人の女性が主人公に振り回され、女たちに惚れているはずの主人公がちょっとでも都合が悪くなると淫売だの口臭さだの罵倒しまくる描写に、もうほんとうに結構です、とページを閉じてしまった。こういう男、時々いるんだけれど、ほんと怖いんですよね。二人とも無事貫多から逃げられてよかったね、と思いました。

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2023/09/18

ブルドーザーのような馬力のある小説。 小説家に興味がないといいながら、小説家に対する憧れ、そして女にもてないという悩み。強烈な肉欲。最大のサポーター新川との関係。 アップダウンを繰り返しながらぐりぐりと進んでいく。身勝手な欲望や耳をふさぎたくなるような罵詈雑言にはやはりリアリティ...

ブルドーザーのような馬力のある小説。 小説家に興味がないといいながら、小説家に対する憧れ、そして女にもてないという悩み。強烈な肉欲。最大のサポーター新川との関係。 アップダウンを繰り返しながらぐりぐりと進んでいく。身勝手な欲望や耳をふさぎたくなるような罵詈雑言にはやはりリアリティがある。普通は自分にも隠してしまうだろう身勝手な醜い欲望を暴きたてる。それがやはり人を驚かせるし、共感を呼び起こすのだと思う。めちゃくちゃ心無いけれど、確かにこういう感情を自分も持ったことがあるなと。 性についても考えさせられる。貫多の支配欲、暴力性、フェティシズムを孕んだ性欲はきつい。相手の心を無視していると思う。そして卑しく欲情する自己へ嫌悪もある。一方で承認されたいという願望の切なさはやはりリアルでなんともいえない気持ちになる。 ただ昔、賢太の作品を読んだ時には破滅的自己のすごい暴露に驚いたが、本作を読むとかなり盛っていたのだなとも思う。本作中でも針小棒大に書いたと言っている。ちょっとそこだけは鼻についた。罵詈雑言には作り物感を感じなくもなかった。 でも、「どうで死ぬ身のひと踊り」を彼がどんな気持ちで書いていたかを知ると、もう一度読まないとなと思う。

Posted byブクログ

2023/01/22

年末年始の読書課題やっとこさ読了。終わらない話を読んだ。読んでいて、貫多や、もうこの話自体を不快に感じる人も正直多いだろう。特に最後の最後、なんだかんだと貫多を見捨てず貫多の最終的なお金の頼み処でもあった落日堂の新川への罵声はもう最低中の最低である。しかしその新川がなぜか謝ってき...

年末年始の読書課題やっとこさ読了。終わらない話を読んだ。読んでいて、貫多や、もうこの話自体を不快に感じる人も正直多いだろう。特に最後の最後、なんだかんだと貫多を見捨てず貫多の最終的なお金の頼み処でもあった落日堂の新川への罵声はもう最低中の最低である。しかしその新川がなぜか謝ってきて(なぜなんだ~⁈)今後の貫多を前に進める発見を告げるのであるから、この展開に読者も度々覚えてきた不快感をまたしても飲み込んでいっしょに進んで「きた」のである。「さすが」の貫多の続きが読めないのはやはり残念というよりすこしさみしいのである。

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2024/09/07

遺作の本作。 こういう男女の話をユーモアたっぷりにかける作家もなかなかいないだろう。 あまりに身勝手な内容ではあったが、不思議と不快にも思えず、独特の感性を持つ作家さんでした。 最後まで笑わせてもらいました。 ★4.0

Posted byブクログ

2022/12/31

西村賢太のいつもの私小説であり、そんないつもの私小説を残して氏は逝ってしまった。 今回は商業作家人生の始まりから芥川賞受賞までが描かれている。これまでの作品と比べて明確に作家北町貫太が描かれており、貫太が小説論を打つ様は西村賢太のメタ的な語りであり、またサービス満点の手の内明かし...

西村賢太のいつもの私小説であり、そんないつもの私小説を残して氏は逝ってしまった。 今回は商業作家人生の始まりから芥川賞受賞までが描かれている。これまでの作品と比べて明確に作家北町貫太が描かれており、貫太が小説論を打つ様は西村賢太のメタ的な語りであり、またサービス満点の手の内明かしでもある。 ここまで作家としてきたからこそ、この作が書けるということだろうか。 相変わらず誇大に誇大を重ねた貫太の尊大さや妄執が滑稽であり、それでありながらそのエモーションにジンと来させる時もある。これこそが西村賢太の魅力だろう。 もうこの物語が進むことがないのが残念でならない。

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2022/12/19

「あぁまたいつもの展開だなぁ」 と思うのに読むのをやめられない中毒性。 未完の遺作となった本作、これが最後かと思うと寂しい。さらば、北町貫多! でもまだ読んでない作品は結構あるので、 ちょっとずつ舐めるように楽しんでいこう。

Posted byブクログ

2022/09/07

この本を読み一層この続きを読んでみたくてたまらなくなった。それは永久に叶わないことが寂しいの一言だ。 長年見守ってきた北町貫多が遂に芥川賞受賞となる日を待ちわびていたし、ようやくその時分の話となり、苦役列車を書いている時の状況や、今まで鬱屈していた感情が受賞により変化したのか、受...

この本を読み一層この続きを読んでみたくてたまらなくなった。それは永久に叶わないことが寂しいの一言だ。 長年見守ってきた北町貫多が遂に芥川賞受賞となる日を待ちわびていたし、ようやくその時分の話となり、苦役列車を書いている時の状況や、今まで鬱屈していた感情が受賞により変化したのか、受賞セレモニーや審査員の石原等著名作家達も登場し、例の北町節で描かれるのか等々興味は大きく膨らんでいたのだが、その一歩手前で著者が亡くなってしまい未完となった。全く残念でならない。 デビュー前後の様子においてもこの本でその心持ちを詳細に書いてあるのであれば、尚更読んでみたかったのである。この本の連載は最終回途中での訃報ということで、最初に候補となる(小説はここまで)も落選してしまう迄の話であったか。落選となったとき、貫多がどう感じたかなども実に興味があったのだがなぁ。受賞したのは更に5年後だから、まだまだ小説のネタは沢山有ったのだろう。 貫多には特にその女性に対する言動に嫌悪を感じつつ、更には彼が好きになった女性への執着と愛憎の激しさに驚愕とある種の羨望を覚えつつ、彼女達のことが念頭から消失するほど小説に打ち込む姿勢や、彼の生き様に人間臭さというか、人間の本質を見て共感も湧いてくる。地方紙若手インテリ文学好き記者の”クチクサ”葛山や”淫売”おゆうに対する好意と、その後の悪態の表現は本当に著者独特でまさに真骨頂だと感心する。こういうもので著者の右に出るものは居ない。その後葛山やおゆうとの関係がどうなったかも結句判らずじまいだ。 貫多の事は彼の転々とされる住居やラッキーストライクや、根は到って・・・というところも我が事に思えるようで、どうにも気になって仕方ない。 しかし貫多が住んでいたような街の雰囲気も、令和となっては絶滅危惧種であり、かつてのそういう街を妙に上辺だけ小奇麗にし、過去を無かった場所にしてしまう風潮にはどうにも気味が悪い。人間もまた上辺だけ真っ当に見せ、その実腐っている輩が上にも多数存在するように感じる。 女性がこの本を読むことはまぁ無いであろうが、男というもの全般に対する免疫を付けたい人は読んでみるもの良いかもしれない。

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2022/05/30

未完の遺作。日乗を読むと、休載の記述が何度も出てくるのだが、著者がそこまで悪戦苦闘した理由が、よく分からなかった。

Posted byブクログ

2022/04/20

【さらば、北町貫多!】時は2004年、貫多は小説「けがれなき酒のへど」でついに文壇にデビューする。奮戦する新進作家の日々を描く遺作長篇1000枚。

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