嘘の木 の商品レビュー
噓を糧に成長し真実を見せる実をつける「噓の木」に翻弄される家族の話。ジメジメしたイギリスらしさを前面にしつつ、SFとミステリーを融合させた面白さがあった。少しずつ少しずつ真実に近づいていくので、気になって続きを読み続けた。
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ミステリーというより、ミステリーの形を借りた、古き良き欧州の時代劇みたいな感じだったな。 元々は児童向けらしいから、複雑な設定は何もない、は言い過ぎだけど、それもこちらが日本人だから舞台設定が馴染みがないだけで、分かりやすい小説だった。
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舞台は19世紀の英国。翼のある人類の化石を見つけた博物学者で牧師のサンダリーだが化石は捏造だとの噂が流れ、一家はヴェイン島へ移住する。しかし噂は島にまで届き、ある夜サンダリーは不審死を遂げる。その死は自殺と疑われ牧師でもあったサンダリーの埋葬許可も下りない。一家は島民たちから村八...
舞台は19世紀の英国。翼のある人類の化石を見つけた博物学者で牧師のサンダリーだが化石は捏造だとの噂が流れ、一家はヴェイン島へ移住する。しかし噂は島にまで届き、ある夜サンダリーは不審死を遂げる。その死は自殺と疑われ牧師でもあったサンダリーの埋葬許可も下りない。一家は島民たちから村八分され居場所を失う。そんな中、殺人を疑った娘のフェイスは父の死の真相を調べ始める。遺された父の日記から、嘘を養分に育ち真実を見せる実をつける「嘘の木」のことを知る…。 前半は退屈だ。サンダリー家の環境や登場人物の人となりの説明なのだろうが、淡々と話は進む。特に事件は動かないし、不思議なことも起こらない。しかし後半から話が動き出す! 実在した嘘の木が見せるヴィジョンとは何なのか。この木は何ものなのか。島民の中に殺人犯人がいるのか。それとも自殺なのか事故なのか。 娘のフェイスの視点で話は進むのだが、まだまだ女性が古い観念に縛られていた時代に、フェイスは強い意志と行動力で真実を突き止めていく。いや、時代に反発するのはフェイスだけではない。登場するそれぞれの女性たちが抗い、逞しく自分らしさを追い求めている。フェイスのラストの活躍はアクションたっぷりの活劇だ。 帯に宮部みゆきの推薦の弁で「終盤の母娘の会話に涙した」というのは、全てが終わった後、それまでお互いを理解できなかった母と娘が心を開いて話すシーン。父親と息子が理解し合う話はよくあるが、母娘はそうそうない。同様にフェイスは他の登場人物とも腹を割った話をしてその壁をなくす。気持ちの良い爽やかなところだ。
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少女の利発さと行動力にドキドキはらはら あっという間に読み進め 最後に彼女が母親をみる目がかわっていくところに真の成長を感じた 確かに、よくできた冒険ファンタジーだと思う
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19世紀末のイギリス。「種の起源」が出版されて間もない時期。女性が個人としての存在を認められることはない時代。14歳のフェイスは、家族と共にヴェイン島に移住する。牧師であり、博物学者でもある父は、翼のある人類の化石を発見したことで捏造者の汚名を抱えていた。父に認められるような博物...
19世紀末のイギリス。「種の起源」が出版されて間もない時期。女性が個人としての存在を認められることはない時代。14歳のフェイスは、家族と共にヴェイン島に移住する。牧師であり、博物学者でもある父は、翼のある人類の化石を発見したことで捏造者の汚名を抱えていた。父に認められるような博物学者になりたいと密かに思っているフェイス。そんな父は、フェイスに手伝わせて島の洞窟に1本の木を隠し、翌朝死体で発見される。父の死は自殺ではないことを証明しようとするフェイス。謎を握るのが父と共に隠した木である事に気づくが…。 離島という閉じられた空間で起こった殺人事件の犯人探しミステリーであり、『嘘の木』という架空の植物を巡るファンタジーでもある。たいへん読みごたえのある作品です。 "私的な殺人捜査"が物語の主軸となるため、主人公はもちろん、登場人物の性格や行動原理は結構エグいです。19世紀末を題材にとった"女性の自我の覚醒と自立を促す物語"という捉え方もできるのかもしれません。 【余談】 それよりも気になったのは、この作家が、私が以前から考えていた『イギリス女性作家の系譜の一員なのではないか』という疑問です。ブロンテ姉妹からJkローリングに繋がる、強い自我を持った若くて強靭な女性を、現在の視点で描ける人のような気がします。他の作品も読んでみたいという気にさせてくれる作品でした。
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フランシス・ハーディングの作品はカッコーの歌、影を呑んだ少女 ときて3番目に読んだのがこれ。中盤まで嫌〜な大人たちの描写が続き、それに比例するかのようにジワジワと主人公も陰湿な内面が出てくるあたりはいつも通り。周りの陰湿さで言うと上述の2つよりこの本のほうが陰湿で読んでいてゲンナ...
フランシス・ハーディングの作品はカッコーの歌、影を呑んだ少女 ときて3番目に読んだのがこれ。中盤まで嫌〜な大人たちの描写が続き、それに比例するかのようにジワジワと主人公も陰湿な内面が出てくるあたりはいつも通り。周りの陰湿さで言うと上述の2つよりこの本のほうが陰湿で読んでいてゲンナリしてくる。ただ、中盤以降で話が大きく動いていくのは流石で作品のテーマもわかりやすく、『嘘』という事柄が最初から最後まで一貫していたしエンドも投げっぱなしではないところが良かった。残りのハーディング作品も早く読みたい。
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もっと盛り上がるかと期待したのだが、カタルシスは弱かった。彼女が女であるだけで否定されて自信を叩き潰される様を見続けて、だからこそ大きなカタルシスを求めてしまうのだ。周りの女たちにもそれぞれの言い分があるような薄い描写もあったが、児童文学でこの雑な片付け方は、イギリスならではの皮...
もっと盛り上がるかと期待したのだが、カタルシスは弱かった。彼女が女であるだけで否定されて自信を叩き潰される様を見続けて、だからこそ大きなカタルシスを求めてしまうのだ。周りの女たちにもそれぞれの言い分があるような薄い描写もあったが、児童文学でこの雑な片付け方は、イギリスならではの皮肉なのか?これでいいのか?大きな賞を獲っているようだが、あまり納得はできなかった。
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うん。予想外におもしろかった。 読み始めるまでは文学文学してるような難解な話なのかな~とか、思わせぶりな隠喩だらけの抹香臭いような話なのかな~とか、あんまり期待せずに読んだのがよかったのかな。 単純におもしろかった。 冒険ヒロイックミステリー。 封建的で男尊女卑な19世紀の...
うん。予想外におもしろかった。 読み始めるまでは文学文学してるような難解な話なのかな~とか、思わせぶりな隠喩だらけの抹香臭いような話なのかな~とか、あんまり期待せずに読んだのがよかったのかな。 単純におもしろかった。 冒険ヒロイックミステリー。 封建的で男尊女卑な19世紀のイギリスが舞台で、「種の起源」が発表された九年後という設定もうまい。 化石の捏造を指摘された高名な博物学者である父親の死の真相を調べます。 主人公の14歳の少女フェイスが小気味いい。 知恵も度胸も行動力もある。 最初のうちは 【十四年間かけて植えつけられてきた恐怖が頭の中を駆け巡る。見知らぬ男。わたしはもうすぐ大人の女になろうとしている娘。保護者やお目付けなしで、見知らぬ男の近くにいてはならない。そんなことをしたら、恐ろしいことが数かぎりなく起きる谷に落ちるだけだ。】 な~んてことを言ってたのに後半では 【人は動物で、動物はただの歯だ。先にかみつき、食らいつけ。それが生き残る道なのだ。】 と勇ましくなっていく。 ジブリとかがアニメ化してくれないかなー。 似合うと思うんだが。 お仕着せのレディーの格好をさせられたフェイスが駆け回る姿を見てみたい。 そういえば久し振りの★4評価です。 去年の「百瀬、こっちを向いて。」以来。 一年二か月振りでした。 ちょっと点数甘いかなとも思いましたが、読み終わった後に拍手してしまいましたからね。 ★4でいいです。 惜しむらくは「嘘の木」ですね。 これがなんだかわからない。 京極夏彦さんの「塗仏の宴」に出てきた不死の生命体「くんほう様」みたいに、なんらかの解釈を与えて欲しかったな。
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・あらすじ 19世紀英国舞台のフーダニットミステリーでもありファンタジーでもあり、ジュブナイルもの。 19世紀英国、フェイスは高名な考古学者である父親の仕事の都合でとある島に移住。 大人しく目立たない存在であろうとするフェイスは、尊敬する父親の秘密と嘘と罪が暴かれるごとにその殻を破って、父親を殺した犯人を突き止めていく。また父親が隠し殺される原因となった嘘を食べて育つ木の正体は…? ・感想 殺人事件が起こるまでは19世紀の厳格な家父長制描写とか主人公が父親を神の如く盲信してたりちょっとイライラもどかしく思いながら読んでたけど、父親が死んでから父親の呪縛と呪いから開放され殻を脱ぎ捨てたフェイスと母親の描写がすごく良かった…。 ①フーダニットミステリー②嘘の木をめぐるファンタジー③時代故の価値観に苦しめられるフェイスの成長譚という3つの属性がきれいに一つの作品を織り上げていて読み応え抜群 。 とても面白かった 。
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19世紀英国。女性の立場は低く、学問を志すことも自立した生き方も許されず、ただ貞淑で家庭にいることを強いられていた時代。まさに子供から女になろうとする14歳のフェイスが、知恵と勇気をふるい多くの束縛や困難を乗り越えて真実を追い求めるミステリー。 高名な学者であり畏れつつも敬愛していた父が殺され、その汚名をすすぎ犯人を見つけるために奮闘するのだが、高潔と信じていた父が実はそうではなかったという皮肉。 それに対し、美しく着飾り男に媚を売ってばかりの母を軽蔑していたのに、それが家庭を守るための母なりの闘いだったのだと知り、終盤で母娘がお互いを認め合うシーンが良かった。 自分の信念(faith)を持って闘う少女は、女が自由に生きられる新しい時代を切り拓いてゆくに違いない。
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