古都 新版 の商品レビュー
京都の呉服問屋の娘千重子には、ある秘密が。 幼馴染の真一に、平安神宮へ花見に出かけた夕暮れ時、彼女は秘密を明かしますが、真一は本気にはしませんでした。 数か月後の祇園祭の夜、千重子は自分とそっくりな娘と出会います。 いったい誰なのか。 京都の伝統ある行事や街並み、移ろいゆく季節を...
京都の呉服問屋の娘千重子には、ある秘密が。 幼馴染の真一に、平安神宮へ花見に出かけた夕暮れ時、彼女は秘密を明かしますが、真一は本気にはしませんでした。 数か月後の祇園祭の夜、千重子は自分とそっくりな娘と出会います。 いったい誰なのか。 京都の伝統ある行事や街並み、移ろいゆく季節を背景に、日本の原風景が描かれます。 流麗にして繊細な文章が、古都京都を描き出していきます。
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※このレビューにはネタバレを含みます
四季折々の神社仏閣や伝統的なお祭り、西陣織や北山杉など古都の風情がたっぷりに描かれている。はんなりした京言葉も優しく響く。古き良き京都…なんとまぁ美しいのだろう。 複雑な生い立ちを抱えた千重子と苗子。祇園祭の夜に運命の出会いを果たし、双子であるお互いの存在を知る事となる。捨てられた子と捨てられなかった子。育ての親だが裕福に育てられた千重子と実の親だが早くに死に別れ、貧しく働くしかなかった苗子。 どちらが幸せだったのだろうか。 初めて枕を並べ一晩を過ごすが、姉妹一緒の時間はそう長くは無かった…。 千重子の幸せを願い、邪魔にならないように身を引く苗子が奥ゆかしい。その気持ちを理解し見送るしかなかった千重子もまた、純粋である。泣けた。 物語の中盤、北山で雷雨に会い、苗子が千重子に被さり守るシーンが劇的で印象深い。お互いの温もりを感じ、胎児の頃を想像させ、双子の姉妹である事を実感する大切な場面だ。千重子の可愛さ、苗子の強さが伺い知れる。 誰もが人を思いやる。相手の幸せを願い身を引く事ができる。昔の日本人はこうだったんだろうなぁ。現代の私達が無くしつつある古き良き日本を思い出させてくれる美しい物語。 川端康成の凄さを改めて体感できた。 川端康成の小説を読むのは、「伊豆の踊り子」「雪国」に続いて3作目。なかなか理解できなかったが、3作目にしてようやくその素晴らしさが少しでも実感できて良かった。 この本を持って京都に行きたくなった。
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川端康成の名前はもちろん知っていたけど、なんとなく難しそうだと勝手に思って読んだことが今までなかったが面白かった!異常な作品だと後書きに書いてあったけど他の本とは全然違う一冊なのかな。他のものもぜひ読んでみたいと思う。
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定期的に京都が恋しくなった時に何度も読み返す名作。情景描写から人物描写まで、日本の美を凝縮した作品です。
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なかなか時代的な感覚として難しかったけど、綿谷女史の解説が分かりやすかったおかげですとんと落ちた。 登場人物たちの心の動きと四季折々の京の様子、現代の京都と重なるところと違うところのギャップも味わえて、面白い作品だと思う。
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これぞ壺中天。 「読む京都」といった趣の作品。 優しく細やかに、そしてそれぞれに悩みながら生きる登場人物たちを縦糸に織り込んで、京都の行事や祭、名所名物を描いている。 いつか行った早朝の清水寺や桜の季節の南禅寺あたりを思い起こして、しみじみと読めた。 北山杉の界隈は行ったこと...
これぞ壺中天。 「読む京都」といった趣の作品。 優しく細やかに、そしてそれぞれに悩みながら生きる登場人物たちを縦糸に織り込んで、京都の行事や祭、名所名物を描いている。 いつか行った早朝の清水寺や桜の季節の南禅寺あたりを思い起こして、しみじみと読めた。 北山杉の界隈は行ったことがないけど、表現描写が美しい。 久々に癒やされる小説を読んだ気持ち。 本物の京都は、今やオーバーツーリズムで人に溢れすぎているから、もうこの小説のような風景は難しい。 そう思えば、壺のなかに封じられた昔の京都に出会える一作だと思える。
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育った環境が違うのだから、結局は別々で暮らす運命を辿る。果たして二人は幸せになるのだろうか、幸せの尺度はそれぞれ違うけど 不眠症に悩まされて薬漬けだったにも関わらず、ここまで繊細に書き上げる川端康成の精神力に驚きました
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三島由紀夫さんの尊敬する川端康成さんの本。 初めて川端さんの言葉に触れましたが…。 ほほー、んー、んー? と言った感じです。笑
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京都の呉服問屋の娘の千恵子は、祇園祭の夜、自分にそっくりの娘 苗子と出会う。幼馴染の真一やその兄の竜介、機織職人の秀雄などとの関わりなど絡ませながら、物語は進んでいきます。 京都の言葉が飛び交いますが、文章はすっきりして美しい。 千恵子と苗子が会う北山杉の凛とした姿がいいです。2...
京都の呉服問屋の娘の千恵子は、祇園祭の夜、自分にそっくりの娘 苗子と出会う。幼馴染の真一やその兄の竜介、機織職人の秀雄などとの関わりなど絡ませながら、物語は進んでいきます。 京都の言葉が飛び交いますが、文章はすっきりして美しい。 千恵子と苗子が会う北山杉の凛とした姿がいいです。2人の今までの違う人生を思わせながら、顔はそっくりだけど、人に流されやすい千恵子と自分の考えをしっかり持っている苗子との対比がいいです。 2023年12月2日読了。
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初めての川端康成。 冒頭のもみじの木の幹に一尺ほど離れて2つのくぼみがあり、それぞれのくぼみに毎春すみれが咲く。近いようで交わることのないように見えるすみれが、千重子と苗子を表しているのだろう。 そのあとに描写される亀壺のなかで一生を終える鈴虫たち。この亀壺も盆地の京都という本作...
初めての川端康成。 冒頭のもみじの木の幹に一尺ほど離れて2つのくぼみがあり、それぞれのくぼみに毎春すみれが咲く。近いようで交わることのないように見えるすみれが、千重子と苗子を表しているのだろう。 そのあとに描写される亀壺のなかで一生を終える鈴虫たち。この亀壺も盆地の京都という本作の舞台を指しているのだろうなと思った。 『古都』というタイトルの通り、京都の有名な寺社やお店、年中行事がふんだんに作中で描かれる。京都の地理に詳しくない人でも楽しめると思うが、詳しい人はより楽しめるはず。伝統的な建物の中に、今も残る北山の植物園が京都にとって新しい場所として出てきてスパイスを効かせているような感じだった。 千重子と苗子の性格や人柄の違いが明瞭に書き分けられていて、その対照的な人物像が印象的だった。
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