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都市残酷 の商品レビュー

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2022/08/20

予備知識なし、タイトルと装丁と作者の名前を見てどこの国の方かもわからないが惹かれて読んだ。 驚きであった。 ワリスノカンさんとは、台湾の、先住民族タイヤル族の方だった。そして彼らの歴史にいかに日本が色濃く関わっていたかということ。タイヤル族はじめ、台湾の先住民族はいかに中華圏、中...

予備知識なし、タイトルと装丁と作者の名前を見てどこの国の方かもわからないが惹かれて読んだ。 驚きであった。 ワリスノカンさんとは、台湾の、先住民族タイヤル族の方だった。そして彼らの歴史にいかに日本が色濃く関わっていたかということ。タイヤル族はじめ、台湾の先住民族はいかに中華圏、中国語圏の文化と全く違う文化生活を持っておられたか、緑深い山、川、谷に育まれ伝えられてきた文化、とりわけ本書の表現から立ち登り立ち上がる自然と一体となるような身体感覚、夢によって導かれたり見えないはずのものが心の目で見える普遍。 その身体感覚は汚濁に満ちた都会でも否応にも感じてしまうような強いなにか。 どうにもできない不条理、不幸、不公平が描かれそれも淡々と。涙も枯れてしまうような。 タクシーに同乗する妻や、無念の死者である老人が弾くピアノ、山に隠れて暮らす英雄、、、虹を渡る死者。虹を渡り死後の世界に行くアニミズム的な伝統から日本皇民化、中国化、そしてキリスト教へと変化し失われ死んでも虹を渡れなくなってしまうタイヤル。伝承が途切れる、途切れる事を強いられた残酷。 何度も登場するイワという女性。 母であり、姉であり、恋人であり、妻であり、祖父や父、猟師、山の民、夢を見て虹を渡る事の中断を余儀なくされた男たちと同様に、多くの、ほとんどの女たちも伝承と自然と共同体から断絶させられて一様の不幸、辛酸、苦労を強いられている。 日本統治時代、国民党の辛い時代、1999年の大地震などの禍とともにあるべき物語が終わりとなり、新しい残酷な物語が語られ、そこでもなお強く美しく逞しく哀しく弱くもあったタイヤル族たちの伝説や事実が語られる。 都市残酷をよんでいて、台湾映画恋恋風塵を思い出した。 先住民でなくても、山間部や村から都会に出た若者たちが否応なく味わう都市の残酷。 知ることが第一歩である。 このようなユニークで、深い哲学をもつタイヤル族のような先住民族の歴史文化生き方在り様を、、単なる観光資材として消費される今の世の中、失われたものはいかにして取り戻すことができるのか。

Posted byブクログ

2022/07/18

『私の小説は、実際のところ、一場面、一場面が夢』と台湾のタイヤル族の著者は【序 日本の読者の皆さんに】で書いている。 どの掌編、小編、短編も夢としては現実的、歴史的リアリティあふれている。 台湾の深く高い山に大陸から漢人がくる前から神とともに暮らしていた誇り高い猟人とその子孫たち...

『私の小説は、実際のところ、一場面、一場面が夢』と台湾のタイヤル族の著者は【序 日本の読者の皆さんに】で書いている。 どの掌編、小編、短編も夢としては現実的、歴史的リアリティあふれている。 台湾の深く高い山に大陸から漢人がくる前から神とともに暮らしていた誇り高い猟人とその子孫たちの姿。 都市化 近代化 観光地化のせいで平地や都市に住まざるをえなくなる人びと。 懐かしいきもちがなぜか湧いてくる作品集。

Posted byブクログ