母親になって後悔してる の商品レビュー
これから母になる予定なので、読んで正解だったと思う。彼女たちの本当の後悔を完全に理解できたとは思えないけど。
Posted by
ものすごい本である。社会的通念が揺さぶられ、自分のアンコンシャスバイアスに気付かされる。著者はフェミニスト研究が専門の社会学者であるが、その分析と洞察の深さは、数々の社会学研究のみならず、フロイト理論、新自由主義、批判理論(権力と抑圧)などさまざまな観点からなされている。本物の研...
ものすごい本である。社会的通念が揺さぶられ、自分のアンコンシャスバイアスに気付かされる。著者はフェミニスト研究が専門の社会学者であるが、その分析と洞察の深さは、数々の社会学研究のみならず、フロイト理論、新自由主義、批判理論(権力と抑圧)などさまざまな観点からなされている。本物の研究者の気概をみた。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
後悔という言葉の定義をしっかりと説明するところから始まる。この言葉を選んだことに著者のこだわりがあるようだ。 母になってしんどく苦しいけどそれでも良かったと思う人は結構いるのだろうが(本書でいうアンビバレンス)、今過去に戻って選択できるなら産まないというのはなかなか重い発言だなと感じた。 今妊娠中で自ら出産を望んだ。仕事のチャンスが減るとか自分の時間がなくなるという不安や焦り、諦めは既に感じ始めていて、もちろんそこには共感するんだけど、果たして後悔までするかと考えると、自分はそうではないなと今のところ思っている。失うものもあるだろうけど、得られるものの方が大きいんじゃないかと思えるから。 後悔する背景には、やはり母親だけにのしかかる負担や責任があるからだろうか。 女性が社会進出したことで、育児とキャリアを両立してこそ一人前って風潮も結構きつい気がする。かつての専業主婦、寿退社が当たり前だった時代から考えると、それはそれで働きたかったのに働けなかったっていう苦しみもあったと思うけど、両立しなきゃだめみたいな雰囲気も母親をしんどくさせていないか、とも思う。 子供がいなければ歩めていたであろう別の人生というのは、確かに一旦子育てが始まってしまえばもう訪れない。子が離れようとも母の責任がなくなるわけではない。父親がそのような存在になかなかなり得ないことも、母を辛くさせてると思う。
Posted by
まず2022年3月に発売された本書が同年12月の時点ですでに9版になっている事に目を見張った。それだけ注目され、待ち望まれていた本だったのだと思う。 人生にはクリアすべき発達段階が設定されていて、それを順調にこなして行くのが自然な事とされており、女として生まれたら適切な時期に母...
まず2022年3月に発売された本書が同年12月の時点ですでに9版になっている事に目を見張った。それだけ注目され、待ち望まれていた本だったのだと思う。 人生にはクリアすべき発達段階が設定されていて、それを順調にこなして行くのが自然な事とされており、女として生まれたら適切な時期に母親になるのも決められている。まさにこれ。これをずっと感じながら生きてきた。 それはキラキラした夢ではなく、社会からの要請としてずっとのしかかっているもので、たぶんみんな機会さえあれば何も考えずに母親になるのが当たり前だと信じているし、常に心のどこかに確かに存在してる。 これに加え母になれなかった女達が人生に失敗した人間のように扱われているのも見る。だから無事クリアできた女たちはどこか誇らしげに見える。その姿は入学試験に無事合格した受験生と似てて、女の子たちはこの入試をクリアしないうちは社会に入れてもらえないのを学んで成長する。 その一方で、個人としては出産の激痛とそれ以降の責任に恐れおののいてもいる。男性のようには気軽に子供を欲しがれない。出産時は麻酔なしで生殖器を切られても気にならないくらい激痛だなんて、想像するだけで血の気が引いてくる。なのに、それすら世間では深く考えずに走り抜ければ平気なのだというスタンスで扱われている。 それが、実際は考えすぎでも妄想でもなく、本物だったのだなと本書を読んでようやく確信できた。自分にとってこれは大きな収穫だった。自分の感じ方が間違いや妄想ではないと確信するのは、自分を尊重することだから。 でも、この確信および自己を尊重する事こそが社会にとっては都合の悪いものだからこそ、母親の後悔は強く隠されている。自己を尊重していたらなれないから。完璧な母親は言ってみれば社会の奴隷だ。その側面だけが隠されてきた。 しかも、母親という役割をになった以上は「完璧な母」しか許されないというのもメディアやフィクションで恐ろしいくらい教え込まれる。叩き込まれると言った方がいい。本書があぶりだすこの透明で強大な囲い込みにもあらためて愕然とした。 読みながら、この社会はどれだけ「母親」に甘えているんだろうと思った。もしかして、公共交通機関で度々起きる母親への暴言暴行、あるいはSNSでの敵意なんかも、これと地続きなのではないかと思う。子供を産んだ瞬間から世間全般の「母親」として赤の他人からも甘えられるなんてなんて冗談じゃないし、とんでもないことだ。 自分自身についてだけでなく、自分の母や世の中で母親をやってる人たちに対する見方もガラリと変わった。それくらい確信的な本だと思う。 これほど真正面からタブーに切り込む本はないなと感心する。最初から最後まで深く共感する言葉が散りばめられていた。よくぞ言葉にしてくださったという感謝の気持ちでいっぱいだ。
Posted by
母親になる前に読んでおきたくて読みました。 共感する部分が多くあり、面白かったです。 子どものことは愛しているが、母親でいることが苦しいという相反する思いを持っている女性がいることが分かりました。 後悔の苦しい気持ちを共有することが、気持ちを楽にするために大切なことのようです。 ...
母親になる前に読んでおきたくて読みました。 共感する部分が多くあり、面白かったです。 子どものことは愛しているが、母親でいることが苦しいという相反する思いを持っている女性がいることが分かりました。 後悔の苦しい気持ちを共有することが、気持ちを楽にするために大切なことのようです。 母親になって後悔していることを、子どもには伝えるべきではないと私は考えています。しかしその苦しさを認める社会になっていった方が、生きやすい社会になると思いました。 父親になって後悔してるという本はないのかな…と気になりました。
Posted by
翻訳が良くないと感じた。原文に引っ張られすぎて日本語として理解できない部分があり、結果として斜め読みしてしまった。それでも書かれた意図が読み取れたと思えるのはテーマが素晴らしく、取材された人たちの肉声があったからかも。出産すれば誰でも母という立場に満足するのが、女性、だという考え...
翻訳が良くないと感じた。原文に引っ張られすぎて日本語として理解できない部分があり、結果として斜め読みしてしまった。それでも書かれた意図が読み取れたと思えるのはテーマが素晴らしく、取材された人たちの肉声があったからかも。出産すれば誰でも母という立場に満足するのが、女性、だという考えが当たり前ではないと初めて知った。興味深い。そして、後悔していると言えた母たちの勇気に感謝 これからは母という立場を捨てた人たちを今までと違った目で見られると思う。
Posted by
久々のガツンと固定概念が覆されたというか、 確かに当たり前のように思い込み過ぎて気づかなかった最たるものであった 母 という存在。 めちゃくちゃ色々なことが再考させられる一冊、読んで良かった。
Posted by
不妊治療の末に子供が出来なかったことに対する留飲を下げようと思って本書を読んだ。 母になった後悔を知れば、母にならなくて良かったと自分を納得させることが出来るかもしれないと思ったからだ。 けれど、その後悔とは私が思っていたものとはいくらか違った。 育児のためにキャリアを犠牲にした...
不妊治療の末に子供が出来なかったことに対する留飲を下げようと思って本書を読んだ。 母になった後悔を知れば、母にならなくて良かったと自分を納得させることが出来るかもしれないと思ったからだ。 けれど、その後悔とは私が思っていたものとはいくらか違った。 育児のためにキャリアを犠牲にしたことを後悔していると思っていたのだが、それだけではなく「母親」という役割そのものを嫌悪しているパターンもあった。 もし仮に、育児を誰かに頼んだりできる環境にあっても子供のいない人生を選択するのだという。 その感覚は、子供を持っていない私にはよくわからないけれど、そのような感覚を持った人がいるということは心に留めておくべきだ。 そして、本書読んで一番印象的だったのが、タイトルにあるように「後悔」というものについて。 人間生きていれば様々な後悔があると思う。 そして、その後悔を口にしても非難されることはないだろう。一つを除いて。 その一つというのが、母親になったことの後悔だ。 私自身、母親になったことを後悔していると聞いたら、他の後悔の話のようにサラッと聞き流せないと思う。 そして、その発言をした人を軽蔑するかもしれない。 何故、母親になったことの後悔だけ、そのような厳しい目で見られるのだろうか。 一つに、それは後悔している母親が産んだ子供に対する存在の否定と考えるからだ。 (これは本書で何度も出てくるが、子供のことは愛していて、彼らの存在は否定しない。アンビバレンスだが子供の存在と母親であることは別問題なのだという) もう一つは、母親になることは幸せの証だという考えだ。女性に生まれたからには母親になることが一番大切で、幸せなことという価値観だ。 これは単なる思い込みであり、単なる母親の理想象である。 私自身、この思い込みをしていた。 母親は、皆幸せで子供を愛し、ノンマザーには体験できないような満足感を得ていると思っていた。 その思い込みに気付かされ、頭をガツンと殴られたようなショックを受けた。 偏見や思い込みに気付いたときはいつもそうだけれど。 また、後悔しているのに複数の子供がいることに疑問があった。それについては本書の後半でそれぞれに理由があることが分かった。 1人出来たら、もうノンマザーに戻ることは出来ない。 それならば1人だって何人だって同じだと半ば自棄になって、幸福な大家族を作ると決めた人もいた(これもまたアンビバレンスだが)。 他には、2人産めば後悔している状況が変わるかもと2人目を産んだ人もいた。 彼らは彼らなりにもがいているのかもしれない。 そして、その思いを大っぴらにできないということはダブルの悲劇である。 属する社会によってその度合いは違うだろうけれど、「母親になって後悔している」という事実は容易く受け入れられるとは思わない。 けれど、それらは受け入れる社会の方に問題があるのであって、決して母親たちではない。 社会の側が理解を示して、少しでも彼らの後悔が軽減されることを願う。 そして、新しい気付きを得られてとても勉強になった。
Posted by
「母親になって後悔してる」オルナ・ドーナト著・鹿田昌美訳、新潮社、2022.03.25 318p ¥2,200 C0098 (2022.12.27読了)(2022.12.16借入)(2022.04.20/2刷) 現代日本では、母親になって後悔する前に、結婚しない、子どもは生まない...
「母親になって後悔してる」オルナ・ドーナト著・鹿田昌美訳、新潮社、2022.03.25 318p ¥2,200 C0098 (2022.12.27読了)(2022.12.16借入)(2022.04.20/2刷) 現代日本では、母親になって後悔する前に、結婚しない、子どもは生まない。結婚するけど、子どもはいらない。という人たちが沢山いるのではないでしょうか。 そういう人たちにとってこの本は、やっぱりそうだったんですね、と自分たちの選択を肯定してくれる本として、読めるのかと思います。 題名は、「母親になって後悔してる」であって、「子どもを産んで後悔している」ではありません。実に微妙な題名です。「母になったことは後悔していても、子どもたちについては後悔していません。得られた子供たちは愛しています。」ということです。 後悔している理由は様々です。責任の重さ、いろんな面での自由の束縛、といったところが主なところでしょうか。なぜ母親だけが、子どもの色んな事にかかわるのが当たり前とみなされなければならないのか? なぜ父親では不足なのか? といったところもあるかと思います。 国家や、家族よりは、個が大事な世の中の必然的な帰結なのだろうと思います。 【目次】 はじめに 1章 母になる道筋 2章 要求の多い母親業 3章 母になった後悔 4章 許されない感情を持って生きる 5章 でも、子どもたちはどうなる? 6章 主体としての母 エピローグ 謝辞 訳者あとがき 原注 ☆関連図書(既読) 「ははがうまれる」宮地尚子著、福音館書店、2016.02.15 「女の一生」伊藤比呂美著、岩波新書、2014.09.26 (アマゾンより) 子どもを愛している。それでも母でない人生を想う。 社会に背負わされる重荷に苦しむ23人の切実な思い。世界中で共感を集めた注目の書! 内容紹介(出版社より) 子どものことは愛している。それでもーー。世界中で大反響を呼んだ一冊。もし時間を巻き戻せたら、あなたは再び母になることを選びますか? この質問に「ノー」と答えた23人の女性にインタビューし、女性が母親になることで経験する多様な感情を明らかにする。女性は母親になるべきであり、母親は幸せなものであるという社会常識の中で見過ごされてきた切実な想いに丁寧に寄り添った画期的な書。
Posted by
女性の選択肢は母になるかキャリアを持つかの2つしかないと考えることで、母になりたくない理由はキャリアの追求以外にないと仮定することは、女性のアイデンティティの多様性を消し去ってしまう(277頁)母の役割は、客体(子ども劇で演じられる母のように)としてではなく、主体、関係として語ら...
女性の選択肢は母になるかキャリアを持つかの2つしかないと考えることで、母になりたくない理由はキャリアの追求以外にないと仮定することは、女性のアイデンティティの多様性を消し去ってしまう(277頁)母の役割は、客体(子ども劇で演じられる母のように)としてではなく、主体、関係として語られることで、複雑で多様な女性の人生が織り込まれるとのこと。母が役割、義務で語られると、理想的な従業員(母)による製品(成長した子ども)が理想的なシナリオになるとも書かれており、成果主義で母が評価されては追い詰められるばかりでSF小説のストーリーに似てくるように思えます。
Posted by