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あの胸が岬のように遠かった の商品レビュー

4.2

14件のお客様レビュー

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2024/07/16

友人から勧められた本ですが、短歌という素材になかなか気持ちが乗らず放っておきました。まあ、高齢の母親の唯一の楽しみが短歌なので次の帰省の話材にでもしようかと思い、やっと開いた次第です。でもその瞬間から引き込まれるように読破です。雨宿りで入ったカフェで一気読み。雨が上がって夜になっ...

友人から勧められた本ですが、短歌という素材になかなか気持ちが乗らず放っておきました。まあ、高齢の母親の唯一の楽しみが短歌なので次の帰省の話材にでもしようかと思い、やっと開いた次第です。でもその瞬間から引き込まれるように読破です。雨宿りで入ったカフェで一気読み。雨が上がって夜になっていました。歌人夫婦の青春の日々を妻の日記と著者の日記いうプライベート、さらにはお互いの作品として発表した短歌の数々、そして著者の思い出から構成される生々しい心の動きが剥き出しで露出されます。人の日記を読むことは禁断の行為のように感じてしまいますが著者自身が妻の死後に初めて読む動揺もこちら側にシンクロしてきて、かなり艶かしい気持ちになります。日記の記述対象がお互いであり、それが三者関係からの二者関係への移行というプロセスも含め、見ちゃいけないものを見ている気分になりました。ただ、お互いの心の振幅が、短歌というパブリックな表現に昇華されていることと、童貞と処女のピュアな絡み合いということ、あるいは現時点でもイノセントな著者の子供っぽさが、エロチックとは違う気持ちを喚起します。自分には、こういう恋愛に憧れていた時代があったことをなんとなく思い出し、それは団塊の世代が獲得した男女関係なのだとも思いました。この二人の恋には短歌という表現は絶対必要であり、そもそもの短歌の成り立ちに近いものではないのでしょうか?極プライベートを超シンボリックに定型化する短歌、その芸術への感応力は心の問題にどれだけデリケートか、という測定なのかも。自分、これから短歌、どれだけ楽しめるのかな…

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2024/06/06

ラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」のゲストで、著者をはじめて知る。 ノンフィクションゆえに、なかなかに生々しくもあるが、歌が挿入されていることで、平安絵巻のような装いを纏う。 全てを赤裸々に書く著者に圧倒されながらも、この2人の愛の深さにおののくのである。 手紙が無くなりつつあ...

ラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」のゲストで、著者をはじめて知る。 ノンフィクションゆえに、なかなかに生々しくもあるが、歌が挿入されていることで、平安絵巻のような装いを纏う。 全てを赤裸々に書く著者に圧倒されながらも、この2人の愛の深さにおののくのである。 手紙が無くなりつつあるこの時代、愛はどんな形になっていくのであろう

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2024/03/18

 ここまで、書けるんだ、あるいは、ここまで書くんだ、まあ、そういう驚きの連続でした。ボクたちが、テレながら、笑ってしまう「愛」ということを信じている人がここにいます。 「わたしは、ウソは書きません。あったことは全部書きます。そこに今の私がいます。」  と、自らの人生を、母の死、後...

 ここまで、書けるんだ、あるいは、ここまで書くんだ、まあ、そういう驚きの連続でした。ボクたちが、テレながら、笑ってしまう「愛」ということを信じている人がここにいます。 「わたしは、ウソは書きません。あったことは全部書きます。そこに今の私がいます。」  と、自らの人生を、母の死、後に妻となった女性との出会いからたどり直そうとなさっている様子には、青春回想記と云ってしまえばそれまでですが、やはり胸打たれるものがありますね。  そういうふうに生きている歌人がココに立っています。  ブログにもあれこれ書きました。よろしく!  https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202403070000/

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2023/11/11

買おうかとおもっていたが、図書館で貸し出していたので6月に申し込んだら11月初めに届いた。貸し出期間二週間なのでいそいで読もうとしたら、読み出したら止まらず一週間で読み終わった。永田先生夫妻の結婚までの恋愛記であり、大学闘争と短歌にのめり込んだ大学生活の青春記です。先生の出自の苦...

買おうかとおもっていたが、図書館で貸し出していたので6月に申し込んだら11月初めに届いた。貸し出期間二週間なのでいそいで読もうとしたら、読み出したら止まらず一週間で読み終わった。永田先生夫妻の結婚までの恋愛記であり、大学闘争と短歌にのめり込んだ大学生活の青春記です。先生の出自の苦悩など、赤裸々に語っている結婚までの半生を短歌を織り交ぜ語り書けてます。文庫本になったらすぐに買おうとおもいます。

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2023/07/29

凄い本ですね、奥様(河野裕子さん)の遺品整理過程で見つかった、奥様の青春時代の日記(そして自分の日記)、そして手紙の数々(奥様の、そして、自分の)。奥様の没後10年を経て、ようやく遺品の数々を読み始め、思わぬ形で悩める(奥さんも、そして永田さんも)青春の日々が蘇る、という展開。そ...

凄い本ですね、奥様(河野裕子さん)の遺品整理過程で見つかった、奥様の青春時代の日記(そして自分の日記)、そして手紙の数々(奥様の、そして、自分の)。奥様の没後10年を経て、ようやく遺品の数々を読み始め、思わぬ形で悩める(奥さんも、そして永田さんも)青春の日々が蘇る、という展開。そして折々に詠まれた、お二人の短歌(詠唱というのでしょうか)の数々。半世紀ほど前の昭和の時代の青春の物語、として読み進めてますが、なんとも凄い本です。★四つです。

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2023/09/08

共に歌人である永田と河野の若き日々を、二人の日記や歌集を元に、永田自身が著した。 自身の語りづらい出来事までも、正直に振り返っていることに驚く。永田氏は、こうやって河野裕子を失ったことを納得させていくのかもしれない。

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2023/01/03

妻の遺した日記に、夫の日記、回想、双方の手紙を挟みながら、二人の出会いから結婚に至るまでの出来事、心の動きが、その時詠まれた歌とともに綴られていきます。稀有な才能の二人の真摯な青春の実録であり、叙情性に満ちたサスペンスのようでもありました。何より河野裕子さんの著者を愛し抜こうとす...

妻の遺した日記に、夫の日記、回想、双方の手紙を挟みながら、二人の出会いから結婚に至るまでの出来事、心の動きが、その時詠まれた歌とともに綴られていきます。稀有な才能の二人の真摯な青春の実録であり、叙情性に満ちたサスペンスのようでもありました。何より河野裕子さんの著者を愛し抜こうとする気持ちに心を打たれました。

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2022/12/12

この本に基づくNHKだったかのドキュメンタリーを見て原作を読みたくなった。 河野裕子さんの歌が好きで、この歌人が生涯にわたり書き記した日記や歌を読んでみたい気持ちからだったが、ちょっと肩透かしを食らった印象。 永田氏が書いているから仕方ないんだろうけど、河野さんよりも永田氏の青...

この本に基づくNHKだったかのドキュメンタリーを見て原作を読みたくなった。 河野裕子さんの歌が好きで、この歌人が生涯にわたり書き記した日記や歌を読んでみたい気持ちからだったが、ちょっと肩透かしを食らった印象。 永田氏が書いているから仕方ないんだろうけど、河野さんよりも永田氏の青春の痛みを描いた本という印象。 2度の大学院受験失敗、自殺未遂、初体験で妊娠させた挙句、無責任にも女の方から中絶を言い出させたことなど永田氏への見方はキツくならざるを得ない。 しかしそんな男に生涯愛を与え続けて、「このようにしか私は生きられなかった」と言い切る河野さんが清々しい。 だけどその言葉を借りて永田氏が「そのようにしか私たちは生きられなかった」と言うのはちょっとズルい気がするな〜。 もっと河野さんの歌を読みたい。

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2022/12/12

最近いわゆるエッセイ?的なものを読んでないなぁと思い、以前NHKで見た永田さんドキュメンタリーをきっかけに積読してた本作をやっと読了。 一瞬を言葉で切り取る短歌の魅力に触れつつも、永田さんがこの文筆のプロセスで振り返り再度なぞり直した河野さんとの日々。 河野さんの「女は生と死...

最近いわゆるエッセイ?的なものを読んでないなぁと思い、以前NHKで見た永田さんドキュメンタリーをきっかけに積読してた本作をやっと読了。 一瞬を言葉で切り取る短歌の魅力に触れつつも、永田さんがこの文筆のプロセスで振り返り再度なぞり直した河野さんとの日々。 河野さんの「女は生と死を孕む」に落涙。 誰かと出会って好きになる。 誰かや何かの比較なんて何の意味もないと思えるくらい、自分の中から湧き出す衝動と感情。 その快楽と悦楽と幸福感と同じくらい、だからこそ自分でよかったのか、と惑う苦悩。 苦しい、でも幸せ。 幸せ、でも苦しい。 それを注げる対象のいる奇跡。 ああ、ほんと、生きるってコレだと思う。 昨日も今日も明日も、これからも彼を愛して共に歩んでいけることに感謝。

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2022/12/10

何がきっかけだったか、、同じ作者の「歌に私は泣くだらう」を何年か前に手にとった。筆者と妻、河野裕子との日々を綴ったものだった。歌人の夫婦、歌人というのは、こんなにも率直に歌を詠むのか。歌に全てさらけ出せるのか。と驚いて、感銘を受けた。その記憶があったので、この本の内容にも、興味を...

何がきっかけだったか、、同じ作者の「歌に私は泣くだらう」を何年か前に手にとった。筆者と妻、河野裕子との日々を綴ったものだった。歌人の夫婦、歌人というのは、こんなにも率直に歌を詠むのか。歌に全てさらけ出せるのか。と驚いて、感銘を受けた。その記憶があったので、この本の内容にも、興味を惹かれ、読ませていただきました。ご本人の生い立ちに始まり、お二人の馴れ初めから、結婚に至るまでを、やはり、極めて個人的なことも隠さず綴られてます。そして、至る所に散りばめられた、短歌が、心を打ちます。書かずにはいられない、詠わずにはいられない、内なる情熱にも、感銘せずにはいられなかった本でした。

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