1,800円以上の注文で送料無料

図説 鉄腕アトム 新装版 の商品レビュー

5

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/09/01

アトムが好きで好きでたまりませんでした。母の実家にいた大学生の叔父が光文社の月刊誌「少年」を買っていて、なのでおばあちゃんちに行くのが待ち遠しかった記憶があります。今、考えると叔父さんは自分のためでなく甥のために買っていてくれたのかな…いやいやでも幼稚園入園前には「少年」早すぎる...

アトムが好きで好きでたまりませんでした。母の実家にいた大学生の叔父が光文社の月刊誌「少年」を買っていて、なのでおばあちゃんちに行くのが待ち遠しかった記憶があります。今、考えると叔父さんは自分のためでなく甥のために買っていてくれたのかな…いやいやでも幼稚園入園前には「少年」早すぎるよなぁ…。自分のアトム原体験も強烈であり朧げであるように作者、手塚治虫の創作も行きつ戻りつの作業であったことがわかります。「二つの地球(新乞食王子)」という構想から「宇宙艇事件」「狂った地球」という経過をへて「アトム大使」へ。その脇役のアトムが主役になった「鉄腕アトム」になっていくプロセスが新鮮でした。「アトム大使」から「鉄腕アトム」はその後でも触れられているので知ってはいましたが、もっと詳細な手塚治虫の頭の中を開示してもらった気がしました。天満博士とお茶の水博士のモチーフも花丸博士とレッド公のキャラクターで始めっからセットで考えられていたのも驚きでした。手塚の考えたストーリーが次第に変化しながら日本マンガ、そしてアニメのターニングポイントとなるキャラクターとして作者のコントロールできない存在になっていくその創作プロセスはまるで時代と社会との共創なのではないか?と感じました。生命と無生物、優しさと暴力、善と悪、もしかしたら男の子と女の子、その境目に生まれた存在が我が愛しの鉄腕アトムだったのかもしれません。この作品はSFではなく人種差別に対する怒りだ、という手塚の言葉にこの作者のマンガに込めるヒューマニズムを感じました。今でも1966年の大晦日にアトムが太陽に吸い込まれていく最終回を見た時の喪失感は忘れることは出来ません。たまたま手にした本が幼き日の心の揺れを思い出させてくれました。

Posted byブクログ