あの頃な の商品レビュー

マンボウやしろ(著者)

2022/04/05

コロナになって変わったことは色々あるも、
そのうちの大きなひとつは、
テレビを売り払いラジオを聴くようになったこと。
力を失ったとはいえテレビは、
まだまだ大きな影響力を持つメジャーなメディア。
それに対しラジオは、
マイナーメジャーといった位置づけだろうか。
多くの人が聴いているものの、
テレビほどの注目度や影響力はない。

それだからかテレビが、
スポンサーの意向やコンプライアンスに喘ぐ今も、
ラジオは比較的に緩く個人的な話題も多い。
瞬間的な面白さも多いけれど、
パーソナリティの人柄からにじみ出る、
これまでの経緯も含めた
じわじわくる面白さにあふれる。
パーソナリティやディレクター、
プロデューサーといった作り手側だけでなく、
リスナーの関与が大きいのも特徴。
番組に参加する、一緒に作り上げる喜びがある。

著者のマンボウやしろさんは、
ラジオパーソナリティとして活躍する人だ。
ショートショートの物語が、
コロナを通じて緩やかにつながる、
一見、不思議な雰囲気な物語。
物語だけでも面白いけれど、
彼のラジオ番組「スカイロケットカンパニー」
を聴いていると、さらに面白い。
ラジオ番組のひとつのコーナーを
聴いているような感じで読んでいる気分。
かと思えば、この物語こそ主で、
ラジオ番組の方が劇中劇のような。
入れ子入れ子で世界が引っ繰り返り、
どれが真実でどれが虚構だか錯覚させられる。
面白いなあ。物語だなあ。
好きだ。

2022/03/27

元芸人で現在はラジオパーソナリティや脚本家として活躍する著者がコロナ禍を舞台に書いた短編小説集。リアリティあるものからSF、果てはブラックユーモアまで多種多様なラインナップが揃っており、夕方のワイド番組を通して様々なリスナーの生活に寄り添ってきた経験が活きているのだろうと思わされる。やはりラジオの生放送を舞台にしたエピソードは切れ味が段違い。さすがにTOKYO FMのスタッフの質はあそこまで酷くはないだろうけどｗ

2022/03/20

誰かの「あの頃な」を聞いてるようで読みやすくて、あっという間に読み切りました。
面白かった〜。
フィクションなのに、誰かのリアルを本音を感じられた気がしました。
一番好きな章は15章の殴られーずハイです。
昔一人暮らししてた頃のこと、今コロナ禍であることを重ねて思い出して想像しました。
スカロケをたまに聞くようになっているので、ラジオが描かれている章は作り手の見えない部分を想像出来て面白かったです。
他の章もSFっぽかったり、恋愛小説だったり、会話のテンポが良かったりとそれぞれに良さがありました。
大切な人に「コロナを描いたこんな本があってね」と世間話したくなる一冊でした。

2022/03/21

TOKYO FMスカイロケットカンパニーのやしろ本部長による初の小説集で、コロナ禍をテーマとしたディストピア世界がたくさん盛り込まれたSFショート・ショート。
コロナ禍の日常は自分が経験することのほかにも沢山のものがあるわけで、それらの多様な側面を切り口にしたお話は、SF的なのに現実的でもあり薄ら寒くもある。