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沖縄とセクシュアリティの社会学 の商品レビュー

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2022/06/26

慰安婦問題や米軍の性暴力、売買春の問題に関心を持ってきたフェミニストならば、沖縄におけるこれらの問題を考えるうえで、フェミニズムだけでなくポストコロニアリズムの視点が不可欠だという著者の指摘に同意する人が多いだろう。だが、ポストコロニアル・フェミニズム分析を実践するとは、どういう...

慰安婦問題や米軍の性暴力、売買春の問題に関心を持ってきたフェミニストならば、沖縄におけるこれらの問題を考えるうえで、フェミニズムだけでなくポストコロニアリズムの視点が不可欠だという著者の指摘に同意する人が多いだろう。だが、ポストコロニアル・フェミニズム分析を実践するとは、どういうことなのか。 博士論文を元にした初の著書にありがちだが、特に導入部分の硬苦しさはきつい。しかし、平和祈念資料館展示改ざん事件や、歓楽街浄化運動、性暴力に関する社説などを分析し、何が語られていないのかを明らかにしてみせる手つきは緻密でたしかだ。 特に、日本のポストコロニアル・フェミニズムにおいて今日でも画期的と評される2000年女性国際戦犯法廷への批判は非常に重要だ。もっとも批判的なフェミニストたちの中にさえ抱え込まれていた盲点に気づかされるのは厳しいことだ。しかし、これまでの試みがいかに不十分だったのかを明らかにし、まだここから先に進むべき道を明らかにして見せる本書は、大いなる希望でもある。

Posted byブクログ

2023/05/08

【沖縄と性はどう描かれてきたか?】 ポストコロニアリズムとフェミニズムを社会学的な実証研究によってむすび、新たな地図を描こうとする意欲作。ポストコロニアル・フェミニズムの観点に立ちながら、沖縄戦や戦後の性暴力、売買春に関わる言説を再検討している。 第一部では理論的整理と問題設定、...

【沖縄と性はどう描かれてきたか?】 ポストコロニアリズムとフェミニズムを社会学的な実証研究によってむすび、新たな地図を描こうとする意欲作。ポストコロニアル・フェミニズムの観点に立ちながら、沖縄戦や戦後の性暴力、売買春に関わる言説を再検討している。 第一部では理論的整理と問題設定、第二部では女性国際戦犯法廷、自治体史誌、沖縄平和祈念資料館改ざん事件など、沖縄の歴史におけるセクシュアリティの扱われ方を丹念に追い、第三部では在沖米軍基地と性暴力事件の表象、歓楽街の環境浄化運動の分析をとおし、時間を現代に引き寄せながら考察を深めていく。 通底するのは、植民地主義と性差別主義が沖縄という植民地において分かちがたくむすびつき、発露し、売春女性や性暴力被害女性たちの排除と利用を繰り返してきた事実に対する著者の静かな怒りである。 固定化された思考の枠組みからなかなか抜け出すことができない私たちにとって刺激的な一冊となっている。(本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会/さとちん)

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