花盛りの椅子 の商品レビュー
古い家具にまつわる様々な過去が、一人の女性家具職人の目を通して語られる連作短編集。 廃棄されることになった古い家具の背景には、東日本大震災や阪神淡路大震災などの自然災害があり、霊的なものも現れて、薄暗く湿った雰囲気が漂っている。 作者は美大で映像を専門に学んだというだけあって、...
古い家具にまつわる様々な過去が、一人の女性家具職人の目を通して語られる連作短編集。 廃棄されることになった古い家具の背景には、東日本大震災や阪神淡路大震災などの自然災害があり、霊的なものも現れて、薄暗く湿った雰囲気が漂っている。 作者は美大で映像を専門に学んだというだけあって、情景の切り取り方がうまく、印象的な場面の光景は目に浮かんでくる。 その一方で、言葉の使い方や文章は気になるところが多い。会話文で「ですねー」「でしょー」など平仮名の語尾に長音の記号を多用したり、「?」「!」「…」の記号もしばしば出てくる。全体を通してSNSのような軽い表記はかなり違和感があり、最後までなじめなかった。
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「小説すばる」2月号だったかに書評、というか対談が載ってて、どうも設定に聞き覚えがあると思ったら、やはり2021/8号に最終回が載っててそれを読んでいたらしい。最終回だけぼんやりと覚えている状態で、一章から読み直すというのはなかなか得難い経験。 まあ、短編集に近いものなので一章ずつ読んでも違和感はないが、それでも主人公のバックストーリーや他の登場人物との関係性も最終話だけではわからないので、なるほど、と思いながら改めて楽しめた。 全体としては、本のタイトルの「花盛りの椅子」が一話でいきなり終わってしまってちょっと面食らったが、章立てのような短編集のような形だった。第一章は特に不思議なことはあまりなく、水害にあった家具を修繕する主人公たちが静かに日々を過ごしている風景を描く。 二章からちょっと雰囲気が変わってくる。主人公は誰にも明かさないが、どうも被災家具からメッセージのようなものを受け取ってしまっているらしい。幻覚だったり、言葉だったり… それをきっかけに行動を起こしたり、何かに巻き込まれたり… と言っても事件というほどでは全くなく、淡々と過ぎていく。 とても静かな、でもちょっと怖い話。 「万祝い襖」が特に良かった。 2011/3の震災から始まり、今をときめくコロナ、そして熊本地震など、被災家具をテーマにしているだけあって日常に災害が染み込んでいて、不意に家具から色々と出てきたり、放射線量という話題が出てきたりしてぐっとなってしまうときがある。2011どころか1959年の伊勢湾台風や1995の阪神淡路大震災も話題に出る。 特に被害を受けてない自分でこれなのだから、読む人によっては注意したほうが良いのかも。
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キャラクターが良く立ち上がっていて、鴻池さんもどんな女性か想像できるし、イケメンあり、癒しキャラの社長ありです。 ただ家具が蘇って、心温まる話で終わるわけでは無いけど、本当に日本のどこかでこういう話ありそうだなーって思えるお話です。
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震災などにより傷ついた家具をリメイクしている「森野古家具店」で働く「鴻池さん」。彼女自身、東日本大震災により家族が犠牲になっている。 家具を使用している人はもとより、家具自体にも歴史や思いが込められている。それがリメイクされ新たな人の手に託され、人生と同じように家具も巡り巡りなが...
震災などにより傷ついた家具をリメイクしている「森野古家具店」で働く「鴻池さん」。彼女自身、東日本大震災により家族が犠牲になっている。 家具を使用している人はもとより、家具自体にも歴史や思いが込められている。それがリメイクされ新たな人の手に託され、人生と同じように家具も巡り巡りながら生きているのだなと思った。 全体的に静に丁寧に話が進んでいくことから、家具にも癒すための時間が必要なのでしょうか。
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森野古家具店では、災害などで損傷した家具を回収し、家具職人がその中から作り直して販売している。そこで働く職人見習いの鴻池は、様々な人や家具と出会うことで、気持ちに変化が訪れる。 人と共に家具にも歴史ありということで、背景にある天災がもたらした人々の心情には心苦しかったです。 ...
森野古家具店では、災害などで損傷した家具を回収し、家具職人がその中から作り直して販売している。そこで働く職人見習いの鴻池は、様々な人や家具と出会うことで、気持ちに変化が訪れる。 人と共に家具にも歴史ありということで、背景にある天災がもたらした人々の心情には心苦しかったです。 東日本大震災や阪神大震災など、そこで生き残った家具達が職人の手によって再生されていくということで、考え深いなとも思いました。 「女による女のためのR−18文学賞」で受賞された清水さん。時々男女の描写で、エロい場面ではないのに艶かしい表現をされている所があったので、一瞬ドキっとしました。 全体的には、ゆったりとした時間が流れているように感じました。急がせず、一つの家具と向き合い、歴史を振り返りながら、新たなる旅路へと旅立つといった流れになっていきます。そこには「死と再生」といった深いテーマが込められているように感じました。 家具にとっての「死と再生」は、もしかしたら人にとって「悪夢」かもしれませんし、「生きた証」かもしれません。そう思うと、なんとも複雑な心境になりました。 その家具を見るだけで、その人が味わった思い出が蘇ります。なかなか高い買い物をした分だけ、捨てられませんし、状態によっては、人よりも長く生き続けます。 味わい深いといった解釈もできますし、曰く付きといった解釈もできます。 そういった家具達を職人がどのようにして、再生していくのか?そう考えると、職人の凄さを感じました。 ゆったりとした空間や時間で読みたい作品でした。
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