血の歌 の商品レビュー
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謎の歌手の正体についてという話が多いが、どちらかというとなかにし礼の兄についての話が中心。ただ、その兄が父親ということ=謎の歌手の背景とかが浮き彫りになってくる。その歌手の歌を聞くたびに、この歌詞は何を歌っているのだろうと思っていたが、生い立ちを知ってようやくわかった気がする。戦争で死ねなかった姿、よそで女ばかり作って家族を堂々と放り出す姿、弟を担保に借金を繰り返す姿、それらが全て歌詞に反映されていた。冒頭の「私、パパのこと嫌いよ」と言い放った娘の言葉が、謎の歌手の全てであり、原点だったのではないだろうか。なかにし礼は、それをうまく描き出した。
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ドラマ高校教師が放送していた時は、私はちょうど高校生でした。森田童子のオープニング曲がなんて暗くて切ないメロディなのか思春期の私を驚愕させた。 血の歌は、父親の存在その物なんだ。森田童子のメッセージでもあり、かつ中西家その物なのか、、、。 今度は『兄弟』を拝誦させて頂きたい。 習...
ドラマ高校教師が放送していた時は、私はちょうど高校生でした。森田童子のオープニング曲がなんて暗くて切ないメロディなのか思春期の私を驚愕させた。 血の歌は、父親の存在その物なんだ。森田童子のメッセージでもあり、かつ中西家その物なのか、、、。 今度は『兄弟』を拝誦させて頂きたい。 習作ではあるが本当の遺言ともとれる本作を再び読み返してみたい。
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昭和の大作曲家、なかにし礼の姪は森田童子だった。 しかし、この小説が世に出た時には、2人とも故人となっていた。 巳年に生まれたから「美納子」 「昭和28年1月15日夜9時。極寒の青森市であった。 この子が20歳を過ぎ、突然、森谷王子となって、自作の歌を歌い始めたのだ」 「兄弟...
昭和の大作曲家、なかにし礼の姪は森田童子だった。 しかし、この小説が世に出た時には、2人とも故人となっていた。 巳年に生まれたから「美納子」 「昭和28年1月15日夜9時。極寒の青森市であった。 この子が20歳を過ぎ、突然、森谷王子となって、自作の歌を歌い始めたのだ」 「兄弟」で登場する兄の中西正一は、娘の正体は決して明かさない。それは神秘性を守るためではなく、情婦から金を借りるためだという。 デビューは昭和49年秋の終わり頃、なかにしが正一をレストランに呼び出し、森田の身元を隠すことに協力を求める。「なかにし礼の姪ってことを当分伏せておきたいの。なかにし礼は売れ過ぎちゃって、どこか体制的な匂いがするじゃない。ちょっと反体制的というか、非体制的な姿勢で、森谷王子をやってみたいのよ」「叔父さんの七光りで世に出たくないっていう美納子の希望もあるけど、そういう俗っぽいところじゃなくて、もっとアングラでマイナーなところから出発させたいんだ」 もちろん小説なので、どこまで実話か分からないが、そう思わせるリアリティはある。「僕たちの失敗」については「普段からあまり顔色を変えない美納子の切れ長の眼をを思い浮かべた。あの眼で何かを見ていたのだ。堕ちていくばかりの父親と、それに振り回される家族がいた」と、中西の戦争体験、それを父の背中越しに見ていたと大胆な解釈をする。 しかし、この作品は発表するつもりだったのだろうか。息子の康夫氏は「兄弟」の習作として書かれたというが、「父は原稿の原本を取っておくこともしません。その父がなぜこの作品だけをすぐに見つかるようなところに置いておいたのか」と疑問を呈している。 森田は2018年4月24日に亡くなっている。なかにし礼より2年以上前だ。なかにしは葬儀に行ったのか、どういう思いで森田を見送ったのか。興味は尽きない。
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切なく読んだ。リアルタイムで森田童子にはまりLPをそろえ森田童子全曲集で歌詞も確認した。地方にいたのでコンサートには行けなかった。 中西れいの兄(森田童子の父)目線で描かれている。自分宛ての歌詞として読み応えている。父が自分の失敗と読み取っているが、同世代のものとしては75年以降...
切なく読んだ。リアルタイムで森田童子にはまりLPをそろえ森田童子全曲集で歌詞も確認した。地方にいたのでコンサートには行けなかった。 中西れいの兄(森田童子の父)目線で描かれている。自分宛ての歌詞として読み応えている。父が自分の失敗と読み取っているが、同世代のものとしては75年以降の青春群像の一コマと思う。 久しぶりにLPを出してみるか?
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血の歌 著者:なかにし礼 発行:2021年12月25日 毎日新聞出版 初出:サンデー毎日2021年12月26日号、2022年1月2・9日合併号 謎の歌手、森谷王子(もりやおうじ)は私の娘なのです。私の二番目の娘、美納子なのです。 そう言いたい衝動にしばしば駆られるが、中西正一はこらえる。 (中略) 王子の歌う「ぼくの失敗」という歌が、テレビの金曜ドラマ「教師の恋」の主題歌に採用され、番組の高視聴率とともに、王子の歌も爆発的に売れはじめた。 「森谷王子」を「森田童子」に置き換えるとすぐ分かる。 「ぼくの失敗」は「ぼくたちの失敗」であり、「教師の恋」は「高校教師」であることが。 謎のシンガーソングライター森田童子の父親は、中西正一。中西正一は作詞家・作家のなかにし礼の兄。つまり、森田童子はなかにし礼の姪だった。――昨年12月にこの本が出版され、この事実が判明したことにより、多くの人々が衝撃を受けた。中森明夫や伊藤彰彦といったカルチャー系の有名ライターもその衝撃を筆に残している。ただ、検索してみると、2018年の時点で一部の人からはそう推測されていて、当時のツイッターやミクシーでの書き込みが見つかる。 あとがきを礼の子息(中西康夫氏)が書いているが、2021年夏に著者の妻が遺品を整理していると机の引き出しから原稿が見つかり、原稿の原本をとっておくことさえしなかった礼がわざわざ人目につくところに残していた点を考え、出版を思いついたという。康夫氏は、執筆年次を1995年、代表作「兄弟」の習作として書かれたものと推定している。 実の兄・正一をモデルにした小説「兄弟」は、ビートたけし主演でテレビドラマ化もされ、正一の常軌を逸した行動によって、礼も金銭的な負担や汚名を着せられるという大きな迷惑を被った過去が世間に知れ渡るところとなった。 立教大学に通い、映画や文学に精通し、ダンスが得意、男同士の遊びも人後に落ちない、まさにスマートで理想的な青春時代を送っていた兄・正一。映画監督を目指していたが、時代に呑まれるように陸軍特別操縦見習士官の道に進んだ。単独飛行の最後の訓練のとき、機械の不調を訴えるも換えてもらえずそのまま離陸。不時着して飛行機から投げ出されるも、一命は取り留める。しかし、「天皇陛下から賜った」大事な飛行機を燃やしてしまい、しかも助かったと批難の目を向けられてから、人生の歯車がうまくかみ合わなくなる。戦後は、博打のような事業展開に何度も失敗して借金生活。 そんな中で、次女がシンガーソングライターとしてデビューすることに。なかにし礼と女性音楽プロデューサーが、本人(森田童子)の出自や身分を隠すことにした。おじさんの七光りで世に出たくないという本人の希望に加え、反体制、非体制、アングラでマイナーなところから出発させたいというプロデューサーの思惑もあった。そして、礼とプロデューサーは、正一に娘のことはしばらく忘れてくれ、蒸発したと思ってくれ、とお願いをする。 正一は、次女(森田童子)が小さな頃、祭りに連れて行き、箸の先についたメロン色のアイスクリームを買い与えた。手は引いていなかった。娘は転んだ。箸の先が口にささり、メロン色が血の色になった。それでも娘はアイスクリームをなめ続けた。 そのことを小説では父親・正一は最後まで忘れず、こだわり続ける。あの時、オレが手を引いていれば・・・ きっと、娘の歌は「血の歌」に聞こえたのではないか。小説の締めくくりには、そう思わせる。
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かの衝撃作『兄弟』のスピンオフか続編のようなものかなと思いきや、『兄弟』の習作として書かれた遺稿なのですね。これは意外でした。だからなるほど、主人公は“王子“というより正一なわけか…。先日SNSで知り早速読みました。他のレビューサイトでは、薄いとか高いというコメントを見かけますが...
かの衝撃作『兄弟』のスピンオフか続編のようなものかなと思いきや、『兄弟』の習作として書かれた遺稿なのですね。これは意外でした。だからなるほど、主人公は“王子“というより正一なわけか…。先日SNSで知り早速読みました。他のレビューサイトでは、薄いとか高いというコメントを見かけますが、抱き合わせる小説があるわけでなし…仕方ないかなと。世に出してくれてありがたいです。星1つ減は、著者が出版を望んでいたのかわからない(「あとがき」を読むに、恐らく望んでたと思うけど)からだけです。頁数は少なくても中身は濃いです。ドラマは3回観た私。どうしても礼三と正一は、私の頭の中でトヨエツとたけしに置き換わってしまいます。この2人はハマり役でした。今度はどなたかに“王子”を主人公にして、書いて欲しいなぁなんて思ったりしました。
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なかにし礼自身に発表する気があったかどうかはわからないが、やはり習作として終わらせるべきでない、短編として力のある一作だと思う。兄、姪(森田童子)、母親、それぞれを描く距離感、濃さの使い分けが絶妙で、物を書く才能とはこういうことかと感心した。「兄弟」も読んでみよう。
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なかにし礼の亡くなってから見つかった作品。激動としか思えない人生を生きた人。 兄の放埒な生き方に、振り回されて、でもこの作品は、その兄の視点から、娘との関係を書いてある。どことなく、悲しい、寂しい作品。
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何というタイミングだろう今月からドラマ『高校教師』の再放送が始まったこともリンクしてライヴ感が加わり、短編ながらも強く深く引き込まれた。読みながらアタマで鳴っていた「ぼくたちの失敗」の聴こえ方が変わる。
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