犠牲者の犠牲者 の商品レビュー
スウェーデン発のミステリー作品。北欧らしさを過度に濃縮した残虐描写は読み手を選びそうだ。読み進める内に「その女アレックス」や「そしてミランダを殺す」といった作品群がどうしても頭に浮かぶので、オリジナリティは然程感じられず、共犯者の正体も第二部の序盤で早々に察しが付く。グレーな結末...
スウェーデン発のミステリー作品。北欧らしさを過度に濃縮した残虐描写は読み手を選びそうだ。読み進める内に「その女アレックス」や「そしてミランダを殺す」といった作品群がどうしても頭に浮かぶので、オリジナリティは然程感じられず、共犯者の正体も第二部の序盤で早々に察しが付く。グレーな結末にも関わらず、本国で続編が刊行されているのも何だか<グレーンス警部>シリーズみたいだ。決して悪い作品ではないが、既視感があり過ぎて新鮮味が全く感じられなかったというのが率直な感想だったり。ちなみにこの不思議な邦題は原題通りだとか。
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犯行現場が凄まじい様相で、こんなやり方ある?というくらい。第一部はそんな感じで痛いような場面と警察の捜査場面が交錯してハラハラし通し。フラグ立ちまくってるので二部に入る前にだいたいわかっちゃいますね。さまざまな心理描写を経て三部へ。えー、と思う一方でやっぱりね、だからか、など不思...
犯行現場が凄まじい様相で、こんなやり方ある?というくらい。第一部はそんな感じで痛いような場面と警察の捜査場面が交錯してハラハラし通し。フラグ立ちまくってるので二部に入る前にだいたいわかっちゃいますね。さまざまな心理描写を経て三部へ。えー、と思う一方でやっぱりね、だからか、など不思議な気分に包まれました。作者デビュー作、ということもあって若干荒削り。そして、こんなラストでほんとに大丈夫?と不安になったりも。しかし約700ページの大作、惹きつける力量は十分。これからも注目したい作家さんです。
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想像を絶する暴力がある。 思いついた暴力のすべてをぶち込まれた被害者がいる。 しかし、同情は無用。 被害者は、犯罪者だったのだ。 いや、その言葉では生ぬるい。 腐れ外道といっていい。 だからいっそ、それいけもっとやれ! と、犯人を応援する気持ちが沸き起こる。 そんな妙な爽快感とと...
想像を絶する暴力がある。 思いついた暴力のすべてをぶち込まれた被害者がいる。 しかし、同情は無用。 被害者は、犯罪者だったのだ。 いや、その言葉では生ぬるい。 腐れ外道といっていい。 だからいっそ、それいけもっとやれ! と、犯人を応援する気持ちが沸き起こる。 そんな妙な爽快感とともに読んでいくミステリーなのだ。 事件にあたるのは、カール・エードソン、スウェーデン警察庁国家犯罪捜査部の警部だ。 これがまあ、普通の男なのである。 銃の扱いがうまいとか、コネをたくさん持っているとか、魔法のようなひらめきがあるとか、そういうことはなく、ただただ、事実を並べて捜査していくタイプだ。 部下は二人、ジョディ・セーデルベリと、シーモン・イェーンという。 どちらも熱心で、よく仕事にとりくむのだが、実はカールはシーモンを好きになれない。言動がどうも癇に障る。 ジョディのことは評価しているが、そのどちらをも顕わにしない。 署の他の人物についてもだ。 心筋梗塞や脳内出血をおこすのではないかと心配したり、高慢で尊大な態度に肩身の狭い思いをさせられたりしても、それを言葉にも態度にも出さない。 無口なのだ。 おかげで、思春期の娘とは要らぬ争いがおこり、 パートナーのカーリンとの間には、冷たい風が吹いている。 言わなきゃわからん! 伝わらん! 読みながら、歯がゆい思いをさせられるのだが、 想像するに、これが一般的な「北欧男子」なのだろう。 そんな彼に親近感を覚えるのだろうか、スウェーデンで人気となり、 カール・エードソン・シリーズとして、続刊が出版され、第3巻が執筆中である。 作者ボー・スヴェーンストレムの、これが作家デビュー作である。 それ以前は、作中にも登場した、センセーショナリズムが売りの夕刊紙、 《アフトンブラーデット》紙の記者として長く働いていた。 編集部の様子、記者による取材の仕方、現場の写真の撮り方、 警察にしぶとく食いついて、なんとしても言質をとろうとする様が、 現実味をおびて描かれる。 くわえて、さすがジャーナリストと言うべきか、この犯罪に対してこの刑罰は相応しいだろうか? 恩赦でこの罪人が解き放たれることに問題はないのか? 読者にそんな疑問を抱かせる書きぶりもなされる。 『稀にみる凄まじさです』(17頁) 無口な警部にそう言わせる事件の数々に、驚きの悲鳴をあげようではないか。
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