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自転車泥棒 の商品レビュー

4.2

21件のお客様レビュー

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2024/02/17

台湾の小説。二十年前に失踪した父親。彼が乗っていた自転車が、息子である「ぼく」のもとに戻ってきた。「ぼく」は、その自転車が戻ってくるまでの物語を集めはじめる。その旅は、ビンテージの自転車の、足りないパーツを集めるようなものだ。いくら修理し続けても、完璧な状態にはならない。この小説...

台湾の小説。二十年前に失踪した父親。彼が乗っていた自転車が、息子である「ぼく」のもとに戻ってきた。「ぼく」は、その自転車が戻ってくるまでの物語を集めはじめる。その旅は、ビンテージの自転車の、足りないパーツを集めるようなものだ。いくら修理し続けても、完璧な状態にはならない。この小説は大量の断片によって語られる。自転車のパーツ、父の自転車の所有者たち、彼らの物語。そして主人公の人生。こうした断片によって構成される、台湾の近現代史。読んでいて、ポール・ボウルズの「シェルタリング・スカイ」を読んだときの感覚に似たものを覚えた。北アフリカの砂漠や迷宮をさまよい、人生の意味を探し、そして人生に翻弄される作品だった。本作はさまよって、翻弄されるわけではない。それでも「シェルタリング・スカイ」同様の、「この小説はなんなのだろう」というわからなさがあった。駄作、という意味ではない。むしろ、小説や映画といった作品すべてにわかりやすさを求める時代において、本作のような「わからなさ」は貴重だ。「これはいったいなにを言っているのだろう」と考えることが、人を成長させる。今回、そういう機会にめぐりあえてよかった。小説はこういう出会いがおもしろい。

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2024/01/24

失踪した父と共に消えた自転車はどこへいったのか?そんな棘のように消えない記憶を抱え、古い自転車コレクターとなった作者。そこから始まる台湾自転車史から家族と台湾の歴史の壮大な物語。 父の自転車が作者の手に戻るまでに経てきた持ち主たち、その過程で知り合う台湾先住民族の青年カメラマンの...

失踪した父と共に消えた自転車はどこへいったのか?そんな棘のように消えない記憶を抱え、古い自転車コレクターとなった作者。そこから始まる台湾自転車史から家族と台湾の歴史の壮大な物語。 父の自転車が作者の手に戻るまでに経てきた持ち主たち、その過程で知り合う台湾先住民族の青年カメラマンのもう一台の自転車、さらにそのカメラマンの父の自転車と第二次世界大戦における銀輪部隊…と自転車を軸として展開される物語りが素晴らしい。 「古いものを愛するのは時間を愛すること」、たった一台の自転車からでも人は過去を見出すことができる。

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2023/10/20

無くなった自転車を探す旅が、時空を超えて様々な語り口で紡がれていく。 幻想とノスタルジーが心地よく、見たことの無い台湾の風景が浮かんできた。 たまに何を意味しているのかわからない部分もあったが、それも含めて美しい小説だった。

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2023/10/04

(私が読んだ)呉明益二作目。 主人公の父の失踪。そして、消えた自転車。 「それらは、どこへ行ったのか?」 その答えを探る中におけるあらゆる人々や歴史、その記憶や悲哀との邂逅の物語。 作中では自転車やゾウといったキーアイテムがあり、それらが人々を出会わせ、自分の人生や歴史につ...

(私が読んだ)呉明益二作目。 主人公の父の失踪。そして、消えた自転車。 「それらは、どこへ行ったのか?」 その答えを探る中におけるあらゆる人々や歴史、その記憶や悲哀との邂逅の物語。 作中では自転車やゾウといったキーアイテムがあり、それらが人々を出会わせ、自分の人生や歴史について知ることのきっかけを生成していく。 私たちは人間だけでなく、あらゆる事物と共に生きている事を思い出した。 例えば外出に欠かせない靴ひとつ取っても、掘り下げる事で今まで見えてなかった人生について知るきっかけにもなり得るだろう。 いくらでも多角的に切り取ることの出来る人生の複雑さは、ある種狂気じみているなぁと感じた。 脱線したが、本作の人生への切り取り方の多様さには感服するばかりだし、なんといっても終わり方があまりにも秀逸すぎる。 非常に素晴らしい物語でした。

Posted byブクログ

2023/07/03

 台湾人作家の小説には、ある種ノスタルジーを感じる。  自分自身が体験していないのに、懐かしさを感じてしまう。  甘耀明「鬼殺し」にも感じた、日本統治時代の台湾に、かつての日本を感じる。  それは日本人作家が描く明治期の日本よりも日本らしく感じる。    一台のアンティーク自転車...

 台湾人作家の小説には、ある種ノスタルジーを感じる。  自分自身が体験していないのに、懐かしさを感じてしまう。  甘耀明「鬼殺し」にも感じた、日本統治時代の台湾に、かつての日本を感じる。  それは日本人作家が描く明治期の日本よりも日本らしく感じる。    一台のアンティーク自転車をめぐって、本省人、外省人、日本人、台湾原住民にそれぞれの物語があり、そして太平洋戦争時の銀輪部隊、インパール作戦中のゾウの数奇な運命、が語られていく。  熱を出すと父親は自転車に僕を乗せて小児科医まで走った。  当時は高級品だった自転車はよく盗まれ、我が家の自転車も何台か盗まれた。  幼い頃に最後に見た父の記憶は、自転車に乗って出かけていく姿だった。  そして父親は突然失踪した。  年月が経ち青年期の僕は、入った喫茶店にアンティークとして飾られていた自転車は、間違いなくあの日に父親が乗っていた自転車だった。  どうしてこの自転車がここにあるのか。  その来歴を調べるうちに、一台の自転車がかかわった人たちの話が語られる。  台湾という小さな島に、立場も別々のグループがあり、そういった多様性の成り立ちが日本とはまるで異なっている。  台北の古い街並みに、かつての日本をそこに見る。

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2023/02/13

小説家をしている「ぼく」は、父と一緒に失踪した「幸福」印の自転車を探す。自転車コレクターである「ナツさん」のところで、ついに見つけたその自転車は、父の手を離れたのち、多くの人の手を渡って、「ぼく」のところへと戻ってきた。 物語は、父の「幸福」印の自転車が巡ってきた人たちの物語をま...

小説家をしている「ぼく」は、父と一緒に失踪した「幸福」印の自転車を探す。自転車コレクターである「ナツさん」のところで、ついに見つけたその自転車は、父の手を離れたのち、多くの人の手を渡って、「ぼく」のところへと戻ってきた。 物語は、父の「幸福」印の自転車が巡ってきた人たちの物語をまとめたものである。彼らは、自転車の来歴を知ろうとする「ぼく」に、従軍時代に出会った老人やチョウ捕りの思い出、第二次対戦中の銀輪部隊やビルマの森での戦争の記憶を語る。

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2023/01/07

2021のベストにするか迷ったくらい。 台湾の博物史や蝶の歴史、戦争,銀輪部隊のことが入り混じって僕の父さんの自転車と絡んでくる。 再読したい。

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2022/08/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ぼくの父は、兄の高校の合格発表の時、ぼくを小児科に連れて行った時と自転車を無くし、最後は幸福印の自転車と共に失踪した。古い自転車を集め、部品を集めて修理するぼくは、失踪した父の自転車と再会する。その持ち主にたどり着くまでの人々の歴史、その人々と自転車との歴史は、チョウを工芸品にして生きる人々と、ビルマやマレーシアでの太平洋戦争でジャングルの中を彷徨う人々と、戦争に巻き込まれるゾウや動物たちと動物を愛する人々と、話がつながっていく。 話が広がりすぎて、誰が誰と繋がっているのか追うのが大変だったので、人物関係を整理しながら読み直したい。ものすごく広がった物語が関連しあって収束していく、物語の回収の仕方がすごい。 キーワードは「時間」だと思う。古い自転車を塗り直し新しいものに変えてしまうのは、その自転車の時間の継承を断ち切るものだ、とナツさんは言う。廃品やゴミのようなものを回収する古道具のコレクターのアブーも、はるか昔にバスアが埋めた自転車を抱き込んで大樹となったガジュマルも、時間の積み重ねを大事にしている。ガジュマルのまわりには人の魂が寄ってくると沖縄で聞いた気がするが、一つのものに込められた人の魂、歴史、思いを、掬い上げる小説、と言う気がした。「哀悼さえ許されぬ時代」に。ゆっくり読み返したい。

Posted byブクログ

2022/08/24

ただの自転車探す話かと思ったら だんだん話展開していって びっくり! 最後、元々何の話だったんだっけ?ってなる

Posted byブクログ

2022/04/02

いろいろな物語が独立しているようで、交錯している。「自転車」の物語で、戦争、動物園、原住民…いろいろな側面を見せてくれる。悲惨な話もなぜかファンタジーに見えたり、かといって軽くない、心の底に刻まれる作品。

Posted byブクログ