わたしのいないテーブルで デフ・ヴォイス の商品レビュー
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前作の短編集では手話の方言(アイランドサイン)が取り上げられたが、本作ではそれよりさらにローカルな限定的言語といえるスクールサインが重要な鍵となり、また聴者である家族が意図せずにろう者をディナーテーブル症候群に追い込むという悲劇的状況が語られ、解明できないと思われた謎がついに明らかになるという、聴覚障害者を取り巻く世界を描いてきたこのシリーズで初めて本格ミステリ小説として成立したと言える作品になっている。 とはいえども、障害者が抱える困難をカエルが訴える3・3宣言に引き寄せられた主人公がおもわず嗚咽するくだりこそがクライマックスではある。
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2/100 あッという間に読み終えました。 聾者と健聴者の間にはやはり大きな「壁」があるのか…? それが家族の中にも… 「ディナーテーブル症候群」 「手話」は聾者にとって自尊心を持たせてくれる「かけがいのないもの」 自分を殺して自分の気持ちを出す事が出来ない それすら気付くことの...
2/100 あッという間に読み終えました。 聾者と健聴者の間にはやはり大きな「壁」があるのか…? それが家族の中にも… 「ディナーテーブル症候群」 「手話」は聾者にとって自尊心を持たせてくれる「かけがいのないもの」 自分を殺して自分の気持ちを出す事が出来ない それすら気付くことの無い人生! 作者には是非続きを書いて貰いたい!
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健聴者の母を刺してしまったろう者である娘の弁護士を手伝う事になった荒井。親子でありながら意思の疎通が困難な2人にどんな行き違いが起こったのか…今回は『コロナ渦』『ディナーテーブル症候群』を自然に絡めており、シリーズのキモは健在。手話通訳者がマスクをできない理由はテレビで見て知って...
健聴者の母を刺してしまったろう者である娘の弁護士を手伝う事になった荒井。親子でありながら意思の疎通が困難な2人にどんな行き違いが起こったのか…今回は『コロナ渦』『ディナーテーブル症候群』を自然に絡めており、シリーズのキモは健在。手話通訳者がマスクをできない理由はテレビで見て知っていたが、今回も知らない事が盛り沢山だった。特に、健聴者ばかりの家庭で取り残されるろう者の孤独が沁みる。ラストでみゆきの言葉に肯けなかった荒井に心残り。やっぱり読み終わるたびに次も読みたくなる。
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デフ・ヴォイスという言葉を初めて知りました。 シリーズ化されているようで、他のものも是非読んでみたいです。
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ミステリというよりも、ろう者の生き方に焦点が当てられている。 偏らず、それぞれの当事者に寄り添いながら書かれていて、好感がもてる。障がい者に対する差別意識とか健常者の驕りに気づかされる。
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デフ・ヴォイスシリーズ。ろう者である娘が母を刺した傷害事件。母娘の間に何が起こったのか、ろう者の抱える苦悩を描いたミステリ。 ろう者などを始め障害を持つ人たちに対する差別意識は持っていないつもりですが。それでもどう接すればいいのかがわからないので避けてしまう、ということはあるかも...
デフ・ヴォイスシリーズ。ろう者である娘が母を刺した傷害事件。母娘の間に何が起こったのか、ろう者の抱える苦悩を描いたミステリ。 ろう者などを始め障害を持つ人たちに対する差別意識は持っていないつもりですが。それでもどう接すればいいのかがわからないので避けてしまう、ということはあるかも。無知・無理解ということはあると思います。そういう人は多いんじゃないのかな。実際このシリーズを読むまで、手話というのは普通の言葉を手の動きに変換しただけのものだと思っていましたし。それと同じように、「テーブルディナー症候群」というのも全く知りませんでした。考えてみれば、たしかにこの状況はつらいのかも。 普通に話せて、それでも家族だからといって何もかも分かり合えるものでもないけれど。最初から話すことすら放棄してしまってすれ違う、というこの事態はあまりに悲しいことです。そうならないためにどうすればいいのか。これは社会の課題としてまだまだ克服しなければいけないことなんだろうなあ。
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このシリーズももう四作目なのですね。 毎回『気づき』をもらえます。 お恥ずかしながら『ディナーテーブル症候群』というものをはじめて知り、ふむふむなるほどとたいへん勉強になりました。 まだまだわたしには知らないことがあって、何気ないふるまいや言葉で誰かを傷つけているかもしれな...
このシリーズももう四作目なのですね。 毎回『気づき』をもらえます。 お恥ずかしながら『ディナーテーブル症候群』というものをはじめて知り、ふむふむなるほどとたいへん勉強になりました。 まだまだわたしには知らないことがあって、何気ないふるまいや言葉で誰かを傷つけているかもしれない。 そしてCOVID-19が蔓延るこの世界で、生きづらさを抱えている人がいることを、わからないなら想像することを忘れてはいけないのだなしみじみ。 知らなかったことならまずは知ることから。 わからないなら、想像することから。 できないことがなにもないなんて思いたくないよね。
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あぁ、このシリーズにもコロナ禍が… お話に夢中になりながら「あの時は…」と色んな事を思い出しました。
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法廷手話通訳士を主人公にするデフ・ヴォイスシリーズ第四弾。 今回は女性ろう者が些細な口論の末に実母をナイフで刺した事件で、主人公は法廷手話通訳士ではなく弁護団の一員として働きます。 丸山さんの特長は、健常者/障碍者間でニュートラルに問題に深く掘り込んでいける所。ところが今回は途中...
法廷手話通訳士を主人公にするデフ・ヴォイスシリーズ第四弾。 今回は女性ろう者が些細な口論の末に実母をナイフで刺した事件で、主人公は法廷手話通訳士ではなく弁護団の一員として働きます。 丸山さんの特長は、健常者/障碍者間でニュートラルに問題に深く掘り込んでいける所。ところが今回は途中まで(特にコロナ下の給食時間に手話を活用する記事にまつわるSNS上の反応など)やや障碍者寄りかと思いました。しかしどうやら単なる説明不足で、読み終えてみればやはりニュートラルでした。 ただ、物語としてはメインの事件についての記述は全体の1/4~1/3くらいで、ほとんどは主人公の家族・知り合いを介して障碍者、特にろう者問題についての話で、余りにそちらに偏り過ぎ、重くなりすぎた気がします。 とはいえ、いつものように色々と考えさせられる「良い本」なのです。特に途中に出て来るろう者のトキ子お婆さんも「人として生きて行くのに一番必要なものは何だと思う?」という自らの問いに対する「自尊心だと思う」という答えに胸を打たれます。 この本を読んでいると、ちょっと日本手話絶対主義、口話完全否定に見えるのです。 日本手話は文法も語彙も日本語とは違う別言語という事。従って日本手話しか使えないという事は、日本の中で外国語しか話せないことになります。幼児期は日本手話で言葉を覚えるにしても、日本国内に住むからには日本語も使えないと対人関係だけでなく本やネット上の情報にもアクセス出来ないのでバイリンガルを目指さざるを得ないと思うのです。それはろう者だけの問題では無く日本在住外国人の子供でも同じです。その場合、日本語の習得はその人の聴こえ方や特性に合わせて日本語手話であったり口話もありだと思うのです。
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コーダ(聴こえない両親から生まれた聴こえる子)の手話通訳士荒井が主人公の『デフ・ヴォイス』シリーズ第四弾。 2020年、コロナ禍において、ろう者たちが直面した苦労や苦悩、そして「ディナーテーブル症候群」をテーマにした長編。 耳が聴こえること、口で言葉をしゃべること。普段何気なく行っている「当たり前」だと思っていることが対人関係においてどれほど「楽なこと」かと、改めて思う。 耳の聴こえない人は小さい時にみんな手話を習うものだと思い込んでいた。その「手話」に関しても、どれだけ自分が無知であったかということも。 家族団らん、一日にあったことを楽しくしゃべりながらの食事。耳が聴こえない人にとってそれがどれほどの苦労を必要とするか。 夕食の支度途中で、耳の聴こえる母親を聴こえない娘が包丁で刺した。なぜ、何があったのか。手話通訳士として荒井がそこにあった「なにか」を解きほぐしていく。 分かり合うこと、相手の気持ちを慮ること。そこに必要なのは何か。深く、考えさせられた。
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