象の皮膚 の商品レビュー
淡々とした語りでリアル。圧倒的な救いではなく、ほんの少しだけ何かを解放したような終わり方がいいと思った。ものすごくいい人もものすごく悪い人もいない。でも皆んなちょっとずつ狂っている感じ。きっと現実ってこんなもん。
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肌を見られたくない、でもこの苦しみを知って欲しい。五十嵐凜、非正規書店員6年目。アトピーの痒みにも変な客にも負けず、今日も私は心を自動販売機にして働く。そこに起こった東日本大震災。本を求める人々。彼女はそのとき、人間の本性を目撃する。現役書店員が描く、圧倒的リアリティ。 割と...
肌を見られたくない、でもこの苦しみを知って欲しい。五十嵐凜、非正規書店員6年目。アトピーの痒みにも変な客にも負けず、今日も私は心を自動販売機にして働く。そこに起こった東日本大震災。本を求める人々。彼女はそのとき、人間の本性を目撃する。現役書店員が描く、圧倒的リアリティ。 割と強めのアトピー持ちの五十嵐凛は、仙台の書店に勤める契約社員だ。出てくる客も握手会イベントにくる作家も同僚も家族も、出てくる奴らの大半が糞という設定。抑圧された人生を送ってきた凛が、真夜中の公園で自分を開放するシーンにはジンとくるものがあった。でもジーンズをコソコソと回収する姿を想像したときには笑えた。著者である佐藤厚志さんはジュンク堂の書店員だそう。だから話がリアルだ。
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わかってもらえないってつらい。 しかも、家族にさえも軽くあしらわれてしまうなんて。 皮膚の病気は、性格にも影響を与えると思っている。 アトピー持ちで、明るく社交的な子を見たことがない。どちらかというと、やっぱり肌を隠したくて、人に自分を見られたくなくて、自分を隠したくなるような...
わかってもらえないってつらい。 しかも、家族にさえも軽くあしらわれてしまうなんて。 皮膚の病気は、性格にも影響を与えると思っている。 アトピー持ちで、明るく社交的な子を見たことがない。どちらかというと、やっぱり肌を隠したくて、人に自分を見られたくなくて、自分を隠したくなるような性格になると思う。 好きな服を着れない。好きな髪型にできない。好きなように振る舞えない。 肌のきれいな子がただただ羨ましかった。 私も子どもの頃アトピーがひどくて、この本を手にとった。(大人になった今もあるが、子どもの頃ほどひどくはない) だけれど、期待していたものと違った。 子どもの頃のエピソードやかゆみの表現には共感したけれど 大人になってからは皮膚がどうこうではなく、書店員の仕事の大変さや、震災のときのごたごたが中心だった。登場するいろんな人にいらいらした。 限定のものに飛びつくというのは、誰もが持つ本性なのだろうか。自分はそれで大変な思いをしたのにもかかわらず、だ。 いろいろとりとめもなく書き連ねた印象。まとまりのない作品のように感じた。 最後の主人公の行動は唐突で謎だった。
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幼い頃から重度の皮膚炎に悩まされてきた凛。つらい学生生活を経て、現在は仙台の書店で非正規社員として働いている。そんな彼女の日常をリアルに描いた作品。最低の同僚やカスハラのオンパレードで、読んでいて楽しくはない。そこに震災まで襲いかかり、この子は生きていけるのだろうかと心配したが、...
幼い頃から重度の皮膚炎に悩まされてきた凛。つらい学生生活を経て、現在は仙台の書店で非正規社員として働いている。そんな彼女の日常をリアルに描いた作品。最低の同僚やカスハラのオンパレードで、読んでいて楽しくはない。そこに震災まで襲いかかり、この子は生きていけるのだろうかと心配したが、意外と図太いのでほっとした。人目から逃れるようにしていた彼女が、深夜の公園で思いがけない行動をするラストは意外性に満ち、一皮むけた今後を予感させてよかった。
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人にされて嫌だったことをしてしまうかもしれない。 人にされて嬉しかったことをできないかもしれない。 人の振り見て我が振り直せないかもしれない。 それでも、 めんどくさい人に負けず、 体の痒みにも負けず、 災害にも負けず、 どうにかこうにかもがいて生きてる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
面白いとは思えなかったが、考えさせられることはあった。 痒みの描写が上手すぎて、こう言ったら悪いのかもしれないけれど、どうしても気持ち悪かった。確かにアトピーは生命に関わる病気ではないが、人生に関わる病気であると思った。 アトピーひとつで、人の一生は、生き方は、こんなにも変わってしまうものなのか。アトピーさえ無ければ、凛さんにはどんな可能性が広がっていたのだろうと思うと、胸が痛い。 私自身、小学生の頃に軽度のアトピーだったことがあり、痒くて掻いてしまったために皮膚がただれて、それを友人に「掻くのが悪いんじゃん」と言われたことを思い出した。なかなか、自分に起きていない他人の事に思いやりを持つのは難しいことかもしれない。 人間、コンプレックスに思っていることは誰にでもあって、「ここがこうだったなら」「ここさえ良くなったらもう何も要らないのに」と思うことがあると思う。 私も容姿の悩みは尽きないし、他人からは分からなくても、私にとっては最重要事項で、病むほど気にしてしまう事もある。 ただし、自分が当たり前のように持っている健康な皮膚や、五体満足に関しては、幸せとも有難いとも、あまり感じる機会は無い。なぜ、持っているものには目を向けられないのかなぁ。 もう少し、自分の持っているものについて、目を向けてみようと思えた。 評価とは関係ないが、少し前に読んだ「推し、燃ゆ」となんだか似ている感じがした。 人生の不毛さ、それでも生きていかなければならない辛さとか。
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