象の皮膚 の商品レビュー
『荒地の家族』で興味をもってこちらも。 アトピー性皮膚炎に苦しみ続ける女性。 書店員というモチーフはやはりこの著者ならでは。 持病に苦しみながらも、数々のトラウマを抱えながらも健気に生きる主人公と、それに対しあくまで無理解、抑圧的に接し続ける家族の姿に最後までつらさがあった。 な...
『荒地の家族』で興味をもってこちらも。 アトピー性皮膚炎に苦しみ続ける女性。 書店員というモチーフはやはりこの著者ならでは。 持病に苦しみながらも、数々のトラウマを抱えながらも健気に生きる主人公と、それに対しあくまで無理解、抑圧的に接し続ける家族の姿に最後までつらさがあった。 なぜああまで冷酷なのか。 小説に「答え合わせ」は必ずしも必要ではないと思うけど、これは腑に落ちなさ過ぎた。
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アトピーに苦しむ女性の日常を描いている。学校時代から書店員として働く現在まで、教師や友人たちにも、家庭の中でさえも理解されない孤独と諦め。苦しみを理解しない人々の時には愚かとも言える日常は、彼女の目を通して見ると理不尽というより、非日常な感じさえする。 苦しみや悲しみというのは、...
アトピーに苦しむ女性の日常を描いている。学校時代から書店員として働く現在まで、教師や友人たちにも、家庭の中でさえも理解されない孤独と諦め。苦しみを理解しない人々の時には愚かとも言える日常は、彼女の目を通して見ると理不尽というより、非日常な感じさえする。 苦しみや悲しみというのは、自分で経験しない限り、どんなに想像力を働かせてもその共感には限界があるし、だからこそ安易な同情や助力では何も解決しないし、その人の力にもなれないと常々思っている。そういうことを、アトピーの人の苦しみ、という側面からえぐってくれている作品だと思う。 (評価は個人的な好みとしての一つ星。小説としてはきっともっと評価する人もたくさんいると思う。)
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リアリティ溢れる筆致。自分とは全く違う境遇、性別、体質なのに、ページを捲る手を止められなかった。個人的には芥川賞受賞作よりこっちの方が好き。だから読書は止められない。
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共感した いやあ、おもしろかった。むさぼるやうに読んだ。適度な長さの淡々とした筆致でユーモラスに、そしてリアリティを含めて書けてゐるのは、才能ありである。人物の顔かたちの捉へ方が井上ひさしふうで、しかし文体は洒脱。 人間関係の雰囲気がひしひしと伝はってきた。学校の空気感、家族...
共感した いやあ、おもしろかった。むさぼるやうに読んだ。適度な長さの淡々とした筆致でユーモラスに、そしてリアリティを含めて書けてゐるのは、才能ありである。人物の顔かたちの捉へ方が井上ひさしふうで、しかし文体は洒脱。 人間関係の雰囲気がひしひしと伝はってきた。学校の空気感、家族の軋轢に生々しさを感じながらいちいち共感して、私の感じたことをそのままおもしろい小説にしたやうな感覚だった。これは震災文学といふよりも、現実の人間関係と心情の機微を書いたリアリズムとして巧みだと思った。 小谷野敦がアマゾンの「大物の予感」と題したレヴューで、《この作家は辻原登みたいな大物になる気がする。》と評してゐる。そのとほりだと思った。今月の文學界を読んだら著者がエッセーで、デビューからこの小説を書き上げるのに3年を要したと書いてゐた。このたびの佐藤厚志の芥川賞の受賞は、久方ぶりの収穫だったと思ふ。
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今回受賞された佐藤厚志さんの作品を読んでみた。 アトピーを抱える主人公の話で、大変だなあと思うものの淡々と進み終わってしまった感じ。 凛さんの成長や、何か変化が見られるのかと思ったけど、感じられなかった。。うーーむ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
主人公の凛は、アトピー体質な肌に対し長年家族や同級生から心無い言葉や視線を浴びせられたことがトラウマとなり、他人を信用できず自分の思いや考えを秘めてしまっているのではと感じた。彼女の過去のエピソードはとても残酷だが、誰しもが持っている人に見せられない心の内が描かれているようで親近感を覚える部分もある。 過去と対比して現在の主人公を取り巻く人物は十人十色で、凛が気にするほどアトピーを蔑視していない人も多いように感じたが、頑なに心を開ききれない彼女の言動からは、本人が抱えるトラウマは側から見るよりはるかに当事者を支配しているのかもしれないと感じ取れた。 ラストの公園のシーンでは、直接的な描写ではないがその事実に凛自身が感覚的に気づいた(というよりは気づきそうになり慌てて一度、その思考から離れようとしたのか…)のではと考えた。裸になって過ごした時間のあと、凛自身の中で何かが少し楽になっていたらと思う。 自分に置き換えて考えた時に、悶々と悩んだり、自分のことなんて誰も理解してくれないんだと孤独感を感じたりすることもあるが、実はそこまで重大なことではなく、一旦考えることを放棄して楽になることを試みてみるも大事なことなのかなと思った。
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地元仙台を舞台に描かれていることは楽しめた。 一方で、凛を取り巻くストーリーの方向性が分かりにくく、どこを目指してストーリーを展開していきたいのか、著者が本著を通じて何を伝えたいのかが曖昧だった気がする。 アトピーの痒さが生々しかった。
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生まれつきの重度のアトピー性皮膚炎で幼い頃から家族にも同級生にも教師にも疎まれ、そんな周りの人のことも疎んでいる主人公の五十嵐凛。 大人になって、書店で契約社員として働き、日々同僚や上司との人間関係や困った客を相手に過ごしている。その最中に東日本大地震が起きる。店の片付けをする中...
生まれつきの重度のアトピー性皮膚炎で幼い頃から家族にも同級生にも教師にも疎まれ、そんな周りの人のことも疎んでいる主人公の五十嵐凛。 大人になって、書店で契約社員として働き、日々同僚や上司との人間関係や困った客を相手に過ごしている。その最中に東日本大地震が起きる。店の片付けをする中で、あるいは営業を再開する中で垣間見える人間の本性。 まだライフラインも復旧しない中で営業を再開した書店に押しよせ、「なぜ新刊が手に入らないんだ!」と怒号を浴びせる客、「なぜこんな時に営業を再開するんだ!」というクレーム、チャリティーで訪れる歌手の対応に苦しむ書店員たちの姿に悲しみや諦め、憤りを感じるけれどこれがリアルなのだろう、という気にさせられる。 非正規で働き余裕のない生活、家族からも受け入れられない孤独感、アトピーで痒い身体を掻きたい、でも掻けない、という苦しみ、震災後、薬も食料も思うように手に入らないという辛さ、という主人公の描写から、この作品は震災後小説であり、光の当たりにくい社会の一片を切り取った作品だと感じた。
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結局、最初から最後まで あまり目立たず 迷惑をかけないよう 人と深く関わろうとしないから いろんなエピソードがうすい。 なんだか気の毒… で終わってしまっている。 変わっていく主人公も見たかった。
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重度のアトピーで学校ではいじめ、家では疎まれて生きてきた女性が女店員として仙台で生きる物語。 痒みに悩まされ夜も眠れなかったり、何の良い思い出もない学校生活を過ごしたりなど、壮絶な人生を歩みながらも何とか生きている精神力の強さに脱帽した。 しかし少し過去の話とはいえ、当たり前にい...
重度のアトピーで学校ではいじめ、家では疎まれて生きてきた女性が女店員として仙台で生きる物語。 痒みに悩まされ夜も眠れなかったり、何の良い思い出もない学校生活を過ごしたりなど、壮絶な人生を歩みながらも何とか生きている精神力の強さに脱帽した。 しかし少し過去の話とはいえ、当たり前にいじめや教師の体罰が横行していたり、震災直後にもかかわらず書店に多種多様なクレーマーが押し寄せたりと、仙台の人々を露悪的に描きすぎな気はした。(書店員をしている作者の実体験が多少は入っているのかも?) 一応白銀というオタク仲間の同僚がいたのが救いだが、もう少しスッキリするエピソードがあっても良かったと思う。
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