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彼岸花が咲く島 の商品レビュー

3.7

172件のお客様レビュー

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    29

  2. 4つ

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2022/11/28

通読するのに長い中断を挟んで,ずいぶんと時間がかかった。 言語,民族,ジェンダー,セックス,歴史みたいなテーマを鏤めて,まとめてしまうとアイデンティティーについての成長物語だろうか。 日本語ノンネイティブによる芥川賞受賞作として手に取ったが,それを意識しすぎた故か,読みにくさが先...

通読するのに長い中断を挟んで,ずいぶんと時間がかかった。 言語,民族,ジェンダー,セックス,歴史みたいなテーマを鏤めて,まとめてしまうとアイデンティティーについての成長物語だろうか。 日本語ノンネイティブによる芥川賞受賞作として手に取ったが,それを意識しすぎた故か,読みにくさが先だって,時間がかかった。その体験は,著者が日本語を習得する過程と重なっていると思われ,日本語ネイティブに自身の学習過程を追体験させることを意図しているのだとすれば,成功していると思う。 ストーリーテリングではなく,舞台設定で成立する小説だという気がする。

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2022/11/12

近未来? 遠未来? の南のほうの島を舞台にしたおはなし。けっこうこういうSF的な世界は苦手なはずなんだけど、このおはなしは読めた。しかもほんわかとした読み心地のいいおはなしだった。 游娜と宇実という少女たちの友情、それにからむ拓慈という少年のやり取りがほほえましい。男と女なんだけ...

近未来? 遠未来? の南のほうの島を舞台にしたおはなし。けっこうこういうSF的な世界は苦手なはずなんだけど、このおはなしは読めた。しかもほんわかとした読み心地のいいおはなしだった。 游娜と宇実という少女たちの友情、それにからむ拓慈という少年のやり取りがほほえましい。男と女なんだけど、いわゆる思春期的などろっとした性別を感じさせないつき合いの様子がいいと思う。 描かれている島の様子もよかった。実権は大ノロを頂いた「ノロ」と呼ばれる女たちが担っていること。島で生まれた子どもは島の子どもで血のつながりのない大人のもとで育つことなど。そしてその背景には、マニッシュな男たちが実験を握る世界への非難が描かれている。 読みながら、男、男といっしょくたにする現代日本社会にもある風潮って、それはそれでひどいもんだよね、と思っていたんだけど、最後に、女しかなれないノロになりたがっていたり島の歴史を知りたがっているけれど、男であるだけで島のしきたりでは知ることができない拓慈に対し、ノロになった游娜と宇実が歴史を教えてあげよう、男もノロになれるようにしよう、そして何か事が起こったらそれはそのとき考えようというところに至るのもいいなと思った。現実を舞台にした小説であれば、あますぎる最後かもしれないけど、架空感いっぱいのこういうおはなしではありだと思うし、そこに希望やすてきな未来らしきものが宿る。

Posted byブクログ

2022/11/07
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女性中心になった理由については概ね予想はできていたものの、 ”女語”という、女性にしか語り継がれない言語・歴史、というのは面白かった。 禁を犯して、他の女性より上手に女語を操れても、 男性だから、という理由で主要な職に就けず、また歴史も教えてもらえない、 というのは、同じ言葉を話していても結局は性別で差別されるのか、と思いもしたけど、別で言語が個人のアイデンティティに結びついているのかな、とも感じた。

Posted byブクログ

2022/11/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

前半は、島に流れ着いた少女と島に住んでいる少女・少年の三人の交流を中心に、島の風習や島の一員になっていく少女の成長が描かれており、爽やかな青春小説のようです。似ているけど異なる言語で会話する三人の会話が楽しいです。 後半は、島を守る存在であるノロに二人の少女がなり、島の歴史を知ります。その真相は結構な衝撃でした。 理想郷のような島の暮らしを想像すると、 人々が迷いなく心穏やかに生きるために 宗教や儀式がいかに重要かがわかります。 少しだけ、映画ミッドサマーを思い出してしまったのは私だけでしょうか。 まだまだ問題がたくさんありそうなのに ページはどんどんなくなっていき、 どう終着するのか気になりながら読み進めました。 物語のはじまりのような清々しい結末でした。 だれよりも島を純粋に愛している少女が、 三年後の未来を見通す姿は眩く美しく思えました。 余談ですが、本書は癌を患っていた父が一緒に行った書店で買った本でした。面白かったよ、読んでみな、と薦めてくれたのですが、私がなかなか読み始めない間に父は亡くなってしまいました。 感想を伝え合うことができないのが、悔やまれます。父がこの本を読んでどのように感じたのか、聞いてみたかったです。

Posted byブクログ

2022/11/03

歴史を作り、国を起こす者は主として男、女性は僕に置かれ子供を産む道具としての存在しかないのが過去。だがこの島はそんな国々から避難してきた戦争の無い、人種差別もしない平和を求めた島民しかいない、を構築。男の世界は時にロマンティックかもしれないが戦争で全てを破壊、疲弊させ、国を独占的...

歴史を作り、国を起こす者は主として男、女性は僕に置かれ子供を産む道具としての存在しかないのが過去。だがこの島はそんな国々から避難してきた戦争の無い、人種差別もしない平和を求めた島民しかいない、を構築。男の世界は時にロマンティックかもしれないが戦争で全てを破壊、疲弊させ、国を独占的することに満足する、そんな世界を変えるのはやはり女性のパワーになるかもしれない。

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2022/10/20

第165回芥川賞受賞作。 いろいろ状況を想像しながら、ひのもとことは、ニホン語、女語を楽しみながら、読み方を何度も前のページに戻り確認しながら、読み進めた。 印象に残る作品だった。

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2022/10/17

正確に書くと星3.8。 読み終わった後は夢を見ていたような、不思議な話だった。 フィクションだがあり得る設定で、最初は説明が全くと言っていいほどなく、読みにくさを感じたが途中から話としての面白さに引き込まれた。 本を読み慣れていない人にはきついかもしれない。 ページ数自体は188...

正確に書くと星3.8。 読み終わった後は夢を見ていたような、不思議な話だった。 フィクションだがあり得る設定で、最初は説明が全くと言っていいほどなく、読みにくさを感じたが途中から話としての面白さに引き込まれた。 本を読み慣れていない人にはきついかもしれない。 ページ数自体は188ページで比較的早く読み終えれた。

Posted byブクログ

2022/08/30

ストーリー自体は非常に面白かったが、呼んでいる途中でもしかしてフェミニズム小説ではないのか...??の感じる程に思想が強い部分があった。調べたら案の定フェミニズム作家であったので、評価は分かれると思う。

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2022/08/27

生きている世界には、まだ自分の知らないことがある 鈍感に生きていくか、もっと視野を広げていくか、どちらが幸せだろう

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2022/08/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

架空の島(与那国をイメージしているらしい)に流れ着いた宇実は記憶喪失で自分がどこから来たのか覚えていない。助けてくれたヨナの家で暮らすようになる。 その島では女が主権を握っている。ノロという権力を持ち尊敬される役職に就くことは女の特権だ。ノロにならなければ島の歴史も学べず女語を話してもいけない。 決められた掟に男である拓慈は反発している。 ノロとなったら掟を変えればいいと言っていたヨナと宇実は、歴史を知り真実を伝えるかどうか苦悩する。 大ノロが亡くなり新しい日々が始まる。同時にヨナと宇実も新しい島を作っていくことに希望を感じている。約束通り拓慈に歴史を教えようとしている。 何か起きた時はその時に考えよう、楽観的に思える思考を持つことで島に明るい兆しが見える。 幼い2人が抗えない運命の中で奮闘し成長を遂げていく、心温まる一冊。

Posted byブクログ