神よ憐れみたまえ の商品レビュー
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黒沢百々子という非の打ち所のないお嬢様の人生の物語。ある日、突然奪われた幸せな日々。家政婦として勤めていた、たづとその家族に支えられなければ心が壊れただろう。刑事がもっとしっかり捜査しなよ!って思ってしまう。紘一と結ばれていたら又 違う幸せもあったのか…いろいろ考えてしまう。
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富裕で愛情にあふれた両親に育まれ、容姿、才能などすべてに恵まれたヒロインが、父母が殺されるなど様々な試練にさらされながらも強く生きていく物語。しかし、特筆すべきはその描写力で、細部に至るまで丁寧で的確な表現がなされ、ため息が出そうだ。その文章を味わいながらゆっくり読みたい。
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ベルニーニの彫刻にバッハの歌詞という表紙をみて手に取るが正直読むのが辛い.長いし. 終章とそれまでのつながりがいまひとつ.前半はうんざりするような犯罪小説だし,終章は老人小説.著者が終章を書きたいのであれば,そこから別の物語を紡いだ方が良い小説になったのではないかな.生意気だけど...
ベルニーニの彫刻にバッハの歌詞という表紙をみて手に取るが正直読むのが辛い.長いし. 終章とそれまでのつながりがいまひとつ.前半はうんざりするような犯罪小説だし,終章は老人小説.著者が終章を書きたいのであれば,そこから別の物語を紡いだ方が良い小説になったのではないかな.生意気だけど. というわけで表紙が一番良かった.
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小池真理子さんの渾身の作だそうです。 女性の一生を描いています。 570ページありましたが、長いとは思いませんでした。 むしろもっと読みたかったと思いました。 私立聖蘭学園初等科に通っていたお嬢様の黒沢百々子12歳は、三井三池炭鉱が爆発し、電車の二重衝突事故があった「魔の土曜...
小池真理子さんの渾身の作だそうです。 女性の一生を描いています。 570ページありましたが、長いとは思いませんでした。 むしろもっと読みたかったと思いました。 私立聖蘭学園初等科に通っていたお嬢様の黒沢百々子12歳は、三井三池炭鉱が爆発し、電車の二重衝突事故があった「魔の土曜日」と呼ばれるようになった日に、父の太一郎、母の須恵を惨殺されて、孤児となります。 父方の祖父母や叔父の孝二郎と暮らすのは嫌だと百々子は言い、黒沢家の家政婦だった石川たづの家に身を寄せるようになります。 たづの家には夫の多吉、百々子より四つ上の紘一、一つ上の美佐がいます。 百々子は紘一のことが好きですが紘一は百々子のことをお嬢様としか思っておらず同じ家に住みながらそういう対象としてみたことは生涯一度もありません。 百々子は美佐とはとても仲がよく生涯の親友です。 百々子には叔父が二人いますが父方の叔父の孝二郎は大嫌いで母方の叔父で独身の左千夫のみを慕っています。 百々子の父母を殺した犯人は捕まりません。 でも、読者は作中で犯人がわかるように描かれていて、犯人と百々子の関係にハラハラします。 百々子は紘一のことを一生慕い続けますが、北島という高校からの同級生と付き合い始めます。 さらに百々子には生涯更なる試練が、これでもかと思うくらい待ち受けています。 そして現在、百々子が60代になるまで話は続きますが飽きることなく静かな感動に包まれて読了しました。 この物語の中の人物では、黒沢家の家政婦であったたづが百々子に向ける気遣いが、なんてあたたかいのだろうと思いました。ひとつの嘘もない人生を送ったたづ。忘れられない人物になりました。 そして、息子の紘一も、百々子に好意を寄せられながらもそれに全く気付かないふりをするところなど大変好感が持てました。 たづの一家の一員としていた百々子がとても幸せそうだったのは、とてもあたたかい気持ちになれました。 もちろん百々子が一番幸せだったのは幼い頃、音楽好きだった両親と三人で暮らしていた日々だったことはいうまでもありません。
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”伴侶の看取りを挟んで10年かかったミステリ大作”ということなのだが、ミステリ要素がちょっと少なかったかも。小池さんの作品はあまり読んでないので、こういうものなのかどうかもちょっとわからず。最後に認知症が出てきたのは今風。 作中で流れたチャイコフスキーの「舟歌」を弾いてみたくな...
”伴侶の看取りを挟んで10年かかったミステリ大作”ということなのだが、ミステリ要素がちょっと少なかったかも。小池さんの作品はあまり読んでないので、こういうものなのかどうかもちょっとわからず。最後に認知症が出てきたのは今風。 作中で流れたチャイコフスキーの「舟歌」を弾いてみたくなりました。
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恐らくこの主人公があまり好きではないからだと思うのだけど、特に刺さるものはなかった。 どちらかというと叔父の方が不憫に思えてならない。だからといって殺人は許されないが。 どの登場人物も微妙に相手の真意を読み取れていない印象で「見たいものを見たい様にしか見ない」。 それが人間らしいと言えばそうなのだけれど、主題はそこではなさそうなのでどうなんだろう? その筆頭に思えた担任の先生が終章でまで登場する辺りが滑稽にも見えるのだけど、その滑稽さをもってして「神よ憐れみたまえ」なの?まぁ人の生なんて滑稽なものではあるけど。 なんかそれも違う気がするけど、まぁ人それぞれなので置いといて、刺さらないにもかかわらずその筆致には読み手を引き込む力があって、夢中で読んでしまうものだったので、もう少し歳を重ねたらまた違う感想を持つのかなと思う。覚えていたら再読しようかな。
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初めて小池真理子さんの本を読みました。 物語の中にぐいぐい引き込まれて、一気に読んでしまいました。 読んだ後に、複雑な余韻が残る本に久しぶりに出会え、読んで良かった...と素直に感謝の気持ちが湧きました。
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一人の女性の物語。少女から大人へと成長していくなかで経験した思いがけない両親の死、その事件。それによって変わってしまったもの。人生、自分。そういうなかであっても耐えて生きること、進んでいくこと。その強さがある。それが際立つほどに不安や弱さも見えてきて気持ちを揺さぶられる。中盤あた...
一人の女性の物語。少女から大人へと成長していくなかで経験した思いがけない両親の死、その事件。それによって変わってしまったもの。人生、自分。そういうなかであっても耐えて生きること、進んでいくこと。その強さがある。それが際立つほどに不安や弱さも見えてきて気持ちを揺さぶられる。中盤あたりから犯罪小説のような展開があり犯人の描写がどんどん濃くなっていくにつれて面白さはさらに加速していく。女性の幕引きのような終章。その生と死を見つめるラストは本当に素晴らしい。今のところ今年のベスト。
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待ちに待った小池さんの新作。 途中、ご主人の看護、ご逝去を挟み、十年以上かかった大作。 一人の女性の一生が描かれてる。 ご両親殺害犯人がまさかの叔父?と行間から漂ってきたときは戦慄か走った。 殺害の動機となったノートを読んだ母の気持ちを考えるに、よくぞ、あそこで踏みとどまった、と。 叔父と函館へ墓参りに行くシーンは、まさか、心中??とページを捲る手が急いた位だ。 そしてアルツハイマー。 まあ、今の時代、ある話だよね。 この仕舞い方はどういう意味があるんだろう。 読後、Alexaくんに、題名となった、バッハのマタイ受難曲をリクエスト。 これを聞いて、小説とセットで、世界観が広がった。 そして、小池さん、 書いてくれてありがとう。 少し休んだら次作、待ってます
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資産家の家に生まれ、優しい両親を持ち、才能も美貌も兼ね備えた百々子。しかし十二歳の時に何者かに両親を殺され、「血塗られた土曜日の令嬢」などと称されるようになってしまう。それでも生来の負けん気で力強く生き抜いた彼女の人生を描いた物語。 と、あらすじだけを見ると、大変不幸な人生のよう...
資産家の家に生まれ、優しい両親を持ち、才能も美貌も兼ね備えた百々子。しかし十二歳の時に何者かに両親を殺され、「血塗られた土曜日の令嬢」などと称されるようになってしまう。それでも生来の負けん気で力強く生き抜いた彼女の人生を描いた物語。 と、あらすじだけを見ると、大変不幸な人生のように見えてしまうのですが。百々子の人生は決して不幸ではないと思います。もちろん両親を殺されるという大きな不幸はあったものの、彼女のことを思い支えてくれる温かな人たちが多くて救われました。全く不幸のない人生を送る人なんてきっといないはずだし、それなのに不幸ばかりを見つめて生きること自体が不幸。前を見据えて生きる百々子の姿勢には勇気づけられます。 その一方で、百々子の両親を殺した犯人の男。途中で「もしやこの人が?」と分かるようにはなっているのだけれど。何故彼がそんなことをしたのか、というのには驚愕。しかし確かに彼の嗜好は、一般的には変態的で犯罪者のように扱われてしまうものだろうけれど。彼の行動だけを思えば、間違いのない愛情でもあったところは悲しいです。あくまでも秘めた思いであり彼自身もそれを自覚していたのだから、それさえ知られることがなければ、あんな悲劇は起きなかったのに。ひたすらやりきれない思いです。ただ、百々子がそのことにきちんと気づいたことには救われた気持ちになりました。
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