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父・福田恆存 の商品レビュー

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2023/07/26

 著者は、福田恆存のご子息。父と同じく英文学そして演劇の道に進んだ。本書は、評論家、演出家であった父恆存の姿を、家族として、また同じ仕事を共にする立場から追想したもの。  第1部は、昭和28年ロックフェラー財団の給費生として欧米視察に出ていた恆存からの手紙に始まり、父からもらっ...

 著者は、福田恆存のご子息。父と同じく英文学そして演劇の道に進んだ。本書は、評論家、演出家であった父恆存の姿を、家族として、また同じ仕事を共にする立場から追想したもの。  第1部は、昭和28年ロックフェラー財団の給費生として欧米視察に出ていた恆存からの手紙に始まり、父からもらった数少ない手紙の思い出が描かれる。  第2部は、恆存、中村光夫、吉田健一の3人で始まり、のち吉川逸治、神西清、大岡昇平、三島由紀夫が加わった、鉢木會という同好会的団体に集ったメンバーとやり取りされた手紙が紹介される。もちろん各人との付き合いには親疎があり、あるときは疎遠になったりといろいろある訳だが、手紙の記載について、その時代的背景を含め、著者は分かる限り詳しく説明をしてくれる。  第3部は、特に脳梗塞を患って以降の父の衰え、劇団経営や演出の不具合といった状況に対して、息子として、また同業者である劇団関係者の立場からの悩みや葛藤が詳しく描かれていく。正直、ここまで書くかといった感じで、福田恆存の愛読者の一人として、読んでいて辛くなってきた。著者の苦しみ、悩みといったものもさぞかしだっただろうと思う。    文藝春秋版の「福田恆存全集」の著者覚書が、その筆力の衰えにより苦しみ抜いて書かれたものであることを今回初めて知ったし、文学座の分裂後の、財団法人現代演劇協會と劇団雲及び「欅」の結成、そして雲の分裂を経て「昴」へ、という経緯について、本書でその実情の一端を知ることができた。  衰えた父がその名を汚さぬよう、子ども自身の口で、劇団経営から退くことの引導を渡さざるを得なかった辛さ。そうした葛藤を経ての、二人の病床での最後の言葉のやり取りには何とも言えぬ思いがする。  本書で福田恆存の人間像のある面に触れることができたが、改めて福田恆存の著作、評論を読んでみたくなった。

Posted byブクログ

2021/06/25

【戦後を代表する評論家・福田恆存、その最後の日々――】「鉢木会」の大岡昇平、吉田健一、三島由紀夫らとの衝突と交誼。親子の葛藤、老いと晩年。次男である著者が追想する人間・福田恆存。

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