アメリカン・ベースボール革命 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『マネー・ボール』には育成が抜けていた。育成にはデータがほとんどなく感覚ばかり。その育成に革命が起きた。データ・テクノロジーがどうMLBの育成を変えたのか。野球外から現れた選手育成の創造的破壊者、意欲ある選手の覚醒。野球の常識が変わった。 以下、ネタバレ。オススメ箇所。 「すべてのブレイクスルーは正しい問いから生まれる。なぜ育成にはデータがほとんどなく感覚ばかりが重視されているのか?」「どうしたらデータや、データから学んだことを使って投球やスイングを完璧に近づけることができるかを問うことへ変わってきた」
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横浜に来たトレバー・バウアーに興味を持ったので読んだ。彼が野球とテクノロジーの先端を走って本当だったらプロアスリートになれない体格でもメジャーリーグで結果を残せるようになっていく過程がよくわかる。そして、それに刺激されるかのようにメジャーリーグの球団がスカウトよりも育成にシフトし...
横浜に来たトレバー・バウアーに興味を持ったので読んだ。彼が野球とテクノロジーの先端を走って本当だったらプロアスリートになれない体格でもメジャーリーグで結果を残せるようになっていく過程がよくわかる。そして、それに刺激されるかのようにメジャーリーグの球団がスカウトよりも育成にシフトしていくのが面白い。もちろんそこには金を効率的に使ってチームを強くしてもっと稼ぎたい。という資本家層の考えもあれば、テクノロジーやデータを使った育成をされることで成績を上げて給料を上げていきたいプレイヤーの気持ちとも重なるのでWin-Winにもなる。なので今求められているコーチは単に昔のやり方を繰り返すコーチではなくて新しい知識を与えられる人になってきている。そこには必ずしも野球経験は必要なくなっている。 野球というかプロフェッショナルなスポーツってそういうところで戦ってるんだと感心する。一方そんなテクノロジーとデータでの育成で成功したアストロズがテクノロジーを使ったサイン盗みに手を染めるところはある意味人間らしい。 この本にはバウアーのMLBからのある意味での追放は書かれていないけど、バウアーを先駆者として賞賛しつつもその人間性には疑問を提示しているところはバランスが取れているというかなんというか。とは言えバウアーが先駆者で野球選手の限界を広げたことは間違いないのだろう。
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アメリカに暮らしていた時分に、それまでだいぶ遠ざかっていた野球観戦を専らテレビなのだがふたたび始めた。じっくり見てしまうと時間を食うのは困るのだが、やっぱり面白い。しかし野球、とくにメジャーのそれがダイナミックに変わっていることよ。守備は極端なシフトを敷き、150kmを軽々と超え...
アメリカに暮らしていた時分に、それまでだいぶ遠ざかっていた野球観戦を専らテレビなのだがふたたび始めた。じっくり見てしまうと時間を食うのは困るのだが、やっぱり面白い。しかし野球、とくにメジャーのそれがダイナミックに変わっていることよ。守備は極端なシフトを敷き、150kmを軽々と超えてくるピッチャーも変化球を多投し、速球は高めへ、先発は100球も投げればブルペンへバトンタッチ、バッターはアッパースイング、最強打者は2番とかを打っている。『マネー・ボール』は読んでいたが、その後もテクノロジーとデータの利用が競技を変え続けている。 この本は特に選手育成にスポットライトを当てて現代野球の変化を教えてくれる。中心人物のトレバー・バウアーが今ではDVのため足掛け3年近くの謹慎中(Twitterをのぞくと元気そうではある)なのだが、それを知りつつ読むのも一興。
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データテクノロジーを上手に活用出来たチームがメジャーリーグベースボールでは、勝利の確率を増やすことが出来る。まさに、現在、ビジネスの世界でバズワードとなっている、DX(デジタルトランスフォーメーション)の野球版についての物語。 メジャーにおけるDXの活用を扱ったものとしては、先日...
データテクノロジーを上手に活用出来たチームがメジャーリーグベースボールでは、勝利の確率を増やすことが出来る。まさに、現在、ビジネスの世界でバズワードとなっている、DX(デジタルトランスフォーメーション)の野球版についての物語。 メジャーにおけるDXの活用を扱ったものとしては、先日、「ビッグデータベースボール」を読んだ。そこで扱われていたのは、主として2013年シーズンのピッツバーグ・パイレーツであった。本書では、2019年のシーズンまでの状況が扱われている。その間に、メジャーでのDXの活用は、大きな進歩を見せたことが分かる。 「ビッグデータベースボール」では、データの活用方法は、本書での活用度合いと比較すると、まだ限定的であった。そこで扱われているのは、例えば、ある打者の打球の飛ぶ位置に基づいて、守備の際に大胆なシフトを敷いたりというデータの活用のされ方である。あるいは、ストライクゾーンぎりぎりのボールを、ストライクに判定してもらえるか、あるいは、ボールと判定されるかには、キャッチャーの捕球技術(フレーミングと言う)が大きく影響すること、また、シーズンを通してみると、それによって、失点の数が大きく変わることをデータ解析により見出し、フレーミングの上手なキャッチャーの獲得のプライオリティを上げた、というような活用の仕方であった。それでも、かなり感心しながら読んだのであるが、本書では、更に進んだデータ活用の実態が描かれている。 本書、「アメリカン・ベースボール革命」で描かれているのは、データテクノロジーが、選手の育成、野球選手としての実力向上に活用されている、その内容である。現在では、すべてのゲームのすべての場面はカメラに記録され、分析がなされている。その分析結果の一つとして、打球に関するものがある。打球速度が毎時98マイル以上で、打球角度が30度前後の打球はヒットになる確率が80%に及び、そのほとんどがホームランとなることが分かった。これによって、打者のスイングが変わった。ゴロや低いライナーを打つのではなく、打球を上げるためにアッパー気味のスイングで、打球角度を上げるのが良いということになる。これには、「フライボール革命」という名前もつけられている。例えば、大谷翔平のスイングを見れば、それがどういうものか、よく分かると思う。 もちろん、ベースボールの「革命」はスイングばかりではなく、あらゆる側面に渡っている。革命の実態を、実際の選手や関係者の活動を追いかけることによって描いているのが本書である。単行本で500ページに迫る分厚いもので、読むのに骨は折れるが、とても面白い本だった。 日本ではどうなのか、ということについても、本書の解説の中で簡単に触れられている。DeNA、ソフトバンク、楽天といった球団は、革命の成果を積極的に取り入れようとしていることが紹介されている。ホークスの柳田のスイングを見れば、確かにフライボールそのものだという事が納得できる。 野球が好きな人にとって面白い本であるが、DXってどういうこと?ということを理解するためにも読める本だと思う。
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