誰がために医師はいる の商品レビュー
アディクションとはそもそも何なのかを知らないで読みはじめたが、とても興味深い内容だった。 薬物依存症やアルコール依存症。精神科医の語る臨床の現場は、偏見や法のあり方について考えさせられる。そして薬物に対する「ダメ。ゼッタイ。」のキャッチコピーに対する考え方は、本書を読む前後で変...
アディクションとはそもそも何なのかを知らないで読みはじめたが、とても興味深い内容だった。 薬物依存症やアルコール依存症。精神科医の語る臨床の現場は、偏見や法のあり方について考えさせられる。そして薬物に対する「ダメ。ゼッタイ。」のキャッチコピーに対する考え方は、本書を読む前後で変わってくる。 コロナ禍で人との交流が希薄になっている今、人との関わりの大切さを知るには読むべき本だろう。 「困った人」は「困っている人」、心に留めておきたい言葉だ。
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大学時代に精神科の講義を受けたことがある。 その時、精神疾患の定義の曖昧さに驚いた。 しかも診断のポイントは社会的な摩擦があるかどうかという話だった。 恐ろしいと思った。 患者のための医療が行われているとは思えなかった。 患者を社会から排除したり、社会に都合の良いように矯正するた...
大学時代に精神科の講義を受けたことがある。 その時、精神疾患の定義の曖昧さに驚いた。 しかも診断のポイントは社会的な摩擦があるかどうかという話だった。 恐ろしいと思った。 患者のための医療が行われているとは思えなかった。 患者を社会から排除したり、社会に都合の良いように矯正するための医療としか思えず、数回講義を受けた後、単位を取るのを諦めた。 この本の著者、松本先生は、逆だ。 「困った人」は「困っている人」かもしれない、とおっしゃっている。 松本先生は私より年上なので、きっと、私が講義で聞いたような精神科治療を先輩医師から教えられたはずだ。 松本先生はそんな先輩医師の指導を居眠りしてやり過ごし、患者や元患者から必要な医療を見出して構築されたようだ。 あの、象牙の塔で! かっこいいったらありゃしない。
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アディクションや自殺の研究、啓発の第一人者でもある松本先生の自叙伝にして、とても参考になる1冊。「ダメ、ゼッタイ。」の道徳教育によって失われた薬物依存に対しての正しい理解と処罰感情を煽る世論に対する怒りの熱量が文章からもうかがえる。「医師はなぜ処方してしまうのか」では、精神科に限らず、”薬がもっとも低コストで、しかも時間がかからない”という外来の真理がズバッと描かれる。「お薬を調整しましょう」という特効薬への魔術的期待は小児医療でも然り。アルコールも覚醒剤も薬には変わらない。薬でもあるが、毒でもある。人間は薬を使う動物だという前提で、薬を悪者にすることなく、その使い方を注意すべきだという言葉は重い。 松本先生も書かれているように、「処方の美しさ」を実感するという体験は医師にとってとても重要なことだと思う。医師は薬の始め方は習うが、薬のやめ方には驚くほど無関心。「薬ではない治療、あるいは治療ですらない支援」への希求は長く医者をやっていれば必然なのだと実感した。パンクロッカーみたいな精神科医、いいよなあ。
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想像していた以上におもしろくて、一気に読んでしまいました。中でもセガラリーのお話やイタリア車のお話に愛を感じ、ぐっと引き込まれました。(そこかいっ!笑) あ、メインはアディクション臨床のお話です。 誰にでも、は勧められないけれど、アディクション臨床に興味があって、40代50代で...
想像していた以上におもしろくて、一気に読んでしまいました。中でもセガラリーのお話やイタリア車のお話に愛を感じ、ぐっと引き込まれました。(そこかいっ!笑) あ、メインはアディクション臨床のお話です。 誰にでも、は勧められないけれど、アディクション臨床に興味があって、40代50代で車が好きな方には読みやすい本なのではないかと思います。 個人的には自分がなぜこの領域に魅了され続けているのかを確認する時間にもなりました。 今年のお気に入り本の一冊になりそうです。
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