彼女は頭が悪いから の商品レビュー

姫野カオルコ(著者)

2021/04/29

タイトルのインパクトだけで購入。
男性からの性差別の中での女性の怒りの話かと思ったら、性差別だけでなく、物語は思いの外世間一般でもよくある学歴主義に、内なるコンプレックス、無自覚な暴力性、傲慢さからの根深く蔓延る闇があって、あとがきでの『いやな気持ちになる』というコメントがその通りだった。

加害者は常に、というわけでもないけれど、自らの悪行には鈍感で、むしろ自分が被害者だと思うのは間違いないんだ。

細かく、加害者と被害者の事件までの人生を書き込んで、その内側を覗き込んでも、だからと言って加害者を擁護できることもなく、作者が書き表した人間の愚かさに、そう『いやな気持ちになった』。

圧倒。

2021/04/26

大変に読み応えがあった。
勧善懲悪な話ではなく、
読んでいるうちに自分の内面を見つめ直す、
差別というものを深く考える機会を与えてくれた。

性差別、学歴差別、お育ち差別…

この親にしてこの子あり、
親の顔を見てみたい、……
そんな言葉が脳裏に自然と現れてきたり。

いわゆる偏差値の高い大学に通ったり、出た人たちが皆そうなのではないだろうが、
少なからずこういう考え方が彼らの中にあるのかもな、とか。
学歴から少し離れた所で、
あれは割り切った性的な行為だから別に大したことがないと主張し、どんなことがあろうと正当化する人達は今も昔も、やはりいるのだろうな、とか。

人の業をいろんな角度で描写している小説であった。

考える機会を与えてくれるのは読書の醍醐味だなあと思いました。

2021/04/24

ノンフィクションに分類したが、実際の事件から脚色があるから作り話ではある。
さて、事件云々は今更だからその件に関しての感想は置いといて、この作者、東大生に昔こっぴどく振られたのかなぁ？ってくらい文中に私怨丸出し過ぎて疲れた。
東大生のほぼほぼが基地○なのは今更だし、それによりつく女も今更。それを本編の冒頭で作者自身が書いているがいやらしく脚色つけるどころか作者の声を割り込み過ぎた。冷静に第三者として事件をフィクション風に物語にしていたら評価高い作品になっただろうにキモ過ぎた。週刊女性の特集を長編で読まされた感が半端ない作品だった。

2021/04/24

著者は、取材を基に、かなりリアリティを持って執筆したのだと思う。
読み応えのある一冊だった。
ただ、リアリティがあるこそ、哀しい話とも言える。
結局、女子大生は、心の傷を騙し騙し生きていくことになるのだろうし、加害者たちは、持って生まれた頭脳と財力で、この事件をものともせずに、充実した人生を送るのだろう。
所詮、「世の中ね顔かお金かなのよ」(回文)。
と「頭脳」なんだろうなぁ。。。

2021/04/20

これは凄い。先だって読んだ、自分にとって本作者初体験となった”ツイラク”については、それなりの感想だったから、本作もどうしようか迷ったりもしたけど、読んで正解。恐れ入りました。冷静な怒り、みたいなものが、そこかしこから表出していて、一瞬クールなタッチに思えるんだけど、イヤな感じがふつふつと伝わってくる。実際の事件に題材は取ったフィクションだけど、本作を通して事実が透けて見えてくる結構もお見事。

2021/04/18

強烈な内容でありながらも、レビューが少ないことに驚いている。
タブー的な内容なのでマスコミがあまり取り上げなかったのかも知れない。モデルとなった現実の事件については当事者以外は真相を知らないので、周囲が推測するしかないだろう。
ただ私も女子短大生だったことがあるのだが、男性から消耗品扱いされることは何度かあった。合コンでは必要以上にお酒を飲まされた。一歩間違えれば小説に出てくる被害女性なっていたかも知れない。
そして我々も東大信仰を捨てる時代が来たのだ。
東大だけが優秀なのではない。他大学生の方が人間性が高いのではないか？この本を読んでそう思った。

2021/04/15

２年ぐらい前に長女が高校の図書室で借りてきたのを読ませてもらった。
後味悪くやるせない物語で娘にも私にも強烈な印象を残したが、読んでよかったと二人して思った。文庫になったので手元に置くべく購入。
巻末に、文庫版あとがきと柴田錬三郎賞受賞時の選評（）がついている。

2021/03/18

【刊行時から話題沸騰、東大で一番読まれた本！】東大生集団猥褻事件で世間から非難されたのは被害者の美咲だった……。現代社会で誰もが抱える格差の病理に迫る社会派小説の新境地！